CO2排出量を削減!Scope3の算定方法や企業の取り組み事例を紹介

サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に役立つとされる、「Scope3」とはどのような概念なのでしょうか?この記事では、Scope3の概要とScope3を算定する目的や意義、メリットを紹介します。そして、企業が算定結果をどのように活用しているのかという事例も合わせて紹介していきます。

目次

  1. Scope3とは?どのようにCO2を算定するのか

  2. Scope3を算定する3つのメリット

  3. Scope3に関する企業事例

  4. まとめ:Scope3への理解を深め、CO2削減に取り組もう!

1. Scope3とは?

Scope3とは何を表す値なのでしょうか。ここでは、Scope3の概要を紹介していきます。

Scope3とは?

カーボンニュートラルを達成するためには、サプライチェーン全体での脱炭素に向けた取り組みが欠かせません。サプライチェーン全体でどれくらいのCO2を排出しているかを把握するための指標となるのがサプライチェーン排出量です。サプライチェーン排出量はScope1・2・3の合計から算定されます。

Scope1:事業者によるCO2の直接排出量。

Scope2:他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴う間接排出量。

Scope3:Scope1と2をのぞく、サプライヤーから排出された間接的なCO2排出量。

電力や燃料などの使用による自社の温室効果ガス排出量をScope1(直接排出量)、Scope2(間接排出量)といいます。これらのScope1,2排出量を対象とした報告制度の進展により、日本では、Scope1,2の算定が企業において浸透してきました。一方、2015年に発足したSBTにおいて、Scope3排出量も認定要件とされたことから、Scope3の算定も重要視されるようになりました。

たとえばScope3には以下のような活動があります。

  • 原材料の調達

  • 輸送・配送

  • 通勤

  • 製品の使用

  • 製品の廃棄

サプライチェーン排出量とは

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ』

Scope3を算定する4つのステップ

Scope3は以下の4つのステップで算定できます。

STEP1:算定目的を設定する。

STEP2:算定対象範囲を確認する。

STEP3:Scope3の活動を以下の表にあるカテゴリ1〜15に分類する。

各カテゴリへのScope3活動の分類結果

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p.5.10)

STEP4:カテゴリごとに計算した基本式を合計する。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p.7〜11)

Scope3のより詳しい算定方法に関しては、こちらの記事をご覧ください。

 ▷Scope3とは?算定方法について詳しくご紹介

2. Scope3を算定する3つのメリット

企業がScope3を算定するメリット

国内外において企業の脱炭素化への取り組みが加速する中、CSR活動の一貫としてサプライチェーン全体でのCO2排出量の算定を要請する企業が増えています。サプライチェーン排出量算定にはScope3排出量が必要です。企業の要請に応えることで信頼を獲得し、新規顧客獲得のチャンスを得ることができるのです。

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定を始める方へ』

Scope3を算定すると、サプライチェーン全体におけるCO2排出量を把握できますが、算定することでどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。ここではScope3を算定する3つのメリットをご紹介します。

(1)サプライチェーン全体におけるCO2削減意識の啓発

Scope3を算定することで、各分野においてどのくらいのCO2が排出されているかを把握できます。Scope3を算定後に、どのようにCO2排出量を削減していくか計画を立てることで、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みを促進させ、CO2排出量を削減させることができます。

(2)環境活動内容の情報開示

サプライチェーン全体でのCO2排出量は、CSR報告書や自社のホームページなどで公表することができます。企業の活動内容を公表することで、企業の環境保全への取り組みをアピールすることに繋がるのです。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p.1)

(4)SBT認定

SBTとは、パリ協定が求める水準と整合するように5〜15年先を目標年とし企業が設定する温室効果ガス排出量削減目標のことです。SBTの認定は国内外において注目を集めており、SBT認定をサプライヤーに求める大企業も増加しています。

Scope3はSBTで求められる指標の1つであることから、SBTの認定を検討している企業は算定する必要があります。

SBTに参加している国別企業数グラフ

出典:環境省『SBTに参加している国別企業数』(2022/1/25)(p.41)

出典:環境省『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム』

3. Scope3に関する企業事例

サプライチェーン全体におけるCO2排出量の削減を目指している企業は、どのような目的があってScope3を算定・開示しているのでしょうか。Scope3算定目的や算定後の活用方法など、企業の取り組み事例をご紹介します。

三井製糖株式会社

三井製糖株式会社は、以下の目的を掲げ、Scope3の算定を行っています。

  • 経年的に数値の比較を行い、今後どのようにサプライチェーン排出量を削減・低減していくかを計画する際の材料とする。

  • 今まで見えなかった数値の「見える化」を通して、従業員や関連会社の低減への協力を仰ぐ。

算定を通して、Scope3排出量がサプライチェーン全体の排出量の70%以上を占めることが明らかとなり、最も排出量が多い企業活動内容(原料の購入と輸送)も特定できました。算定結果は外部調査への回答やCSR報告書やホームページなどに記載されています。

出典:環境省『1三井製糖株式会社』

株式会社ローソン

ローソンは以下にあげる3つの目的を設定し、Scope3の算定を実施しています。

  • 企業の社会的責任としてサプライチェーン全体のCO2排出量を把握するため。

  • カーボン・オフセットの実施にあたり対象商品の排出量を算定するため。

  • ステークホルダーからの情報開示要請に応えるため。

算定結果はCO2削減余地のある分野の特定や環境報告書やホームページなどへの記載などに活用されます。

出典:環境省『株式会社ローソン』

株式会社大気社

株式会社大気社は、以下の2つの目的を持ち、Scope3算定を行っています。

  • 環境側面に関連する、定量的な評価を可能にする。

  • 温暖化対策への貢献に向けて、自社が取り組むべき事項を明確にする。

算定により、当社が提供する設備の運用段階における排出量が、サプライチェーン全体において最大であることが明らかとなりました。これにより、省エネルギー性能の高い設備を提供することに尽力するという目標の設定につながりました。算定結果はCO2削減にあたって優先事項の特定やステークホルダーへの情報開示などに活用されます。

出典:環境省『株式会社大気社』

4. まとめ:Scope3への理解を深め、CO2削減に取り組もう!

この記事では、環境保全に関心がある法人の皆さまが知っておくべきScope3に関する基本的な知識についてご紹介しました。サプライチェーン全体におけるCO2排出量が問われることが多くなった今、Scope3を算定し把握しておくことは持続可能な企業であるために欠かせません。

Scope3への理解を深め、サプライチェーン全体でのCO2削減に取り組んでいきましょう。

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