【なぜCO2の見える化を?】脱炭素社会に向けて、消費者の行動変容を起こすためには。CCNCにおける、ユーグレナ社の取り組み

株式会社ユーグレナ サステナビリティ推進部の髙橋宏明さん

なぜ、消費者の意識変容を起こすのは難しいのか?

「脱炭素に“触れ、学び、取り組む”ことで生活者の意識を変える第一歩を」をコンセプトに、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを行う「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(以下、CCNC)」。買い物を通じて生活者のカーボンニュートラルな購買を促進するための実証実験、

「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト 触れて、学んで、取り組んで!誰でもできる減CO2行動で脱炭素!(以下ゲンコツプロジェクト)」を実施しています。

そんなCCNCの参画企業であるユーグレナ社。消費者の意識変容やCO2の見える化の取り組みについて、株式会社ユーグレナ サステナビリティ推進部の髙橋宏明さんに聞きました。

目次

  1. 消費者の行動変容が会社の成長に繋がる

  2. なぜ、消費者の意識変容を起こすのは難しいのか?

  3. CO2の見える化は、いきなり100点を目指さず、アウトプットを出すことで前に進める

1.消費者の行動変容が会社の成長に繋がる

――CCNCの参画の経緯を教えてください。

我々ユーグレナ社は、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」という企業フィロソフィーを掲げ、社会課題の縮小を目指し事業展開をしています。

上記の考え方の中で、事業そのものが社会課題の縮小につながることはもちろんですが、事業自体がサステナブルな形になっていることも重要です。

その1つとして、環境負荷の小さい商品があると思っています。ただ環境負荷の小さい商品を製造・販売するには、どうしてもコストがかかり、販売価格が高くなる傾向があります。だからこそ、価格が多少高くても環境負荷が小さい商品が売れるマーケット、いわゆるエシカルマーケットのようなものを構築する必要性を感じていました。

企業がどれだけサステナビリティを意識した商品を製造・販売しても、消費者の意識が変わり、購買行動につながらなければ、事業の成長、そして社会課題の縮小には至りません。だからこそ、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げる我々が事業を行っていくには、消費者の意識変容に取り組むべきだと考えています。

例えば、ユーグレナ社では2019年に、日本人に身近な寿司をテーマにすることで、一人ひとりが地球温暖化について考え、自分事として受け止めてもらうためのきっかけ作りとして「寿司が消える日」というキャンペーンを行いました。

地球温暖化によって、海洋生態系が破壊されていることを身近に且つ分かりやすく感じてもらうために、寿司屋から魚のネタがなくなることを想定して、寿司を食べてもらうキャンペーンでした。

CCNCは脱炭素商品を通して、消費者の意識変容から購買行動に繋げることをテーマに取り組みを行っており、当社の課題感と合致しています。

また、CCNCは商品を製造するメーカーとその商品を販売する流通企業が横断的に参画している団体です。1つの企業で消費者の意識変容に取り組むよりも、様々な企業と連携して取り組む方が、より大きなコレクティブインパクトにつながると思いました。

主にこの2つの理由から、CCNCへ参画することに決めました。

――CCNCのなかでユーグレナ社はどのような役割を果たしているのでしょうか?

CCNCに参画されているほかの企業と比べると、当社は規模が小さく、CO2の見える化をするにも予算の問題など課題があります。このことは弊社だけではなく、多くの同規模の企業が抱えている課題です。今後、CCNCへの参画企業が拡大する過程で、様々な企業が入ってくると思います。CO2の見える化や脱炭素への取り組みをするなかで、当社ならではの課題になっていることを前広に共有するようにしています。

2.なぜ、消費者の意識変容を起こすのは難しいのか?

――実際にCCNCの実証実験に参加して、その結果はいかがでしょうか?

 

各社状況は違うと思いますが、正直なところ、実証実験の結果が売り上げにつながったとは言えません。環境負荷が小さい、サステナブルな商品を売るためにはまだまだ課題があると感じています。ただ、消費者の意識変容は短期間で実現できるものではなく、時間がかかります。

ーー消費者の意識変容の難しさの原因はどこにあると思いますか?

あくまでも、個人的な意見ではありますが、日本特有の原因があるのではないかと思っています。海外に比べて、日本は価格が安くても、品質のいい製品がたくさん流通しています。「安かろう、悪かろう」があまりないんです。

その結果として、その商品の背景に何があるのか、原材料に何を使っているのか、価格が安い理由がどこにあるのかなどを、消費者自ら調べて購入する習慣がないのだと思います。商品の背景を調べずに購入しても、日本ではたいてい問題がないですから。

海外では安い商品で健康被害が出た例などが歴史上起きているため、消費者が自分で商品について調べ、チェックして購入する「文化」が根づいている。そこは大きな違いだと思います。

また、日本でも近年サステナビリティに関する教育が行われるようになっていますが、フィールドワークなどではなくまだまだ座学が中心です。気候変動によって、どのような被害が実際に出ているかを体験する機会がないため、なかなか自分ごととして捉えられないことも大きな要因になっているのではないでしょうか。

自分ごとにするには気候変動によって「自分の生活になにが起きるのか」「具体的にどのような人が、どのように困っているのか」を知る、見る、聞くことが重要なのではないかと思っています。

 

そういう意味では、CCNCの実証実験のような体験型の取り組みをコツコツと続けていくことが大切だと思います。その結果100人に1人でも自分ごと化してくれたら……、それが積み重なって、消費者の意識変容が起こっていくと信じています。

ーー売り上げ以外の部分で、実証実験の手ごたえを感じた部分はありましたか?

CCNCに当社が参画していることを伝えるプレスリリースを見て、数社の企業から「一緒にできることはないですか?」とお声がけをいただきました。実際に商談が継続している案件もあります。

CCNCに参画したことを通じて、新たな動きが生まれています。

ーーCCNCのように、いろいろな企業が集まって気候変動や環境問題に取り組む意義についてどのように思われますか?

1社1社が個別に消費者の意識変容に取り組むよりも、様々な企業でともに取り組む方が、消費者の目にも止まりやすいですし、話題にもなりやすいと思います。意識変容を購買行動に繋げるモメンタムを起こしやすいというのは意義があることだと感じています。

また、各社のこれまでの取り組み内容など知見を持ち寄り、新たな打ち手を考えられる点もより精度の高い打ち手に繋がるという意味で意義があると考えています。

3.CO2の見える化は、いきなり100点を目指さず、アウトプットを出すことで前に進める

――CO2の見える化に取り組んでいる理由を教えてください

 

当社のすべての事業がサステナビリティにつながっています。しかし、事業がサステナビリティにつながっているけれど、事業活動によりCO2を大量に排出している、人権侵害をしているといった状態では本末転倒です。サステナビリティにつながる事業をしているのであれば、大前提として、当社が事業を行う上でのサステナビリティが担保されていることが必要だと考えています。

CO2排出量の見える化に取り組むのも、その一環です。

――現状、CO2排出量の見える化に取り組んでいて、課題になっていることはありますか? またその課題解決のために工夫していることがあれば教えてください。

各社そうだと思いますが、サプライチェーン(Scope 3)のCO2排出量の算定においては課題が多いです。例えば、グループ会社間で使用しているデータシステムが異なり、それぞれの解釈などを各拠点の担当者といちいち確認していかないといけません。

また、Scope 3に関しては全15カテゴリーありますが、最初からすべてのカテゴリーを網羅することはできないため、算定するカテゴリーを絞り、できることから算定を初めています。正直、現段階では、Scope 3のカテゴリーを広げる勇気がまだありません(笑)。

いきなり100点、120点を目指すというよりは、70点、80点でいいのでアウトプットしてみようと各グループ会社の担当者とは話しています、

1年目で100点、120点のアウトプットを出すことは大変難しいと思います。まずはスピード感を持って70点のものを出し、翌年のアウトプットを80点、90点にしていこうと考え、PDCAを早くまわしているのは工夫している点です。

――CO2の見える化に関する、今後の展望を教えてください。

自社のCO2算定については、特にScope 3のデータの精緻化に注力していきます。

CFP算定については、少しずつですが進めていく予定です。

一方で、重要なことは、CCNC内でも課題として挙がっていますが、商品ごとの排出量を単に商品に表示してもその意味が消費者に伝わらなければ意味がないと考えています。どうしたら、CFPに取り組むことの意義やその商品の価値を伝えられるのか、を軸に取組を進めることが重要です。例えばお客様と一緒にCFP算定する取り組みなど、まさに体験型の取り組みを当社内でも検討していきたいです。

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