CDPとはどんな組織?気候変動とどう関わる?わかりやすく解説!

CDPとは気候変動に関するもっとも有名なNGOの一つです。CDPは人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つことを目的に,企業や自治体に対して環境に対する情報開示を促します.CDPが集めた情報は世界中の投資家や企業、政策決定者の意思決定に大きな影響を与えています。

また、CDPがつけるスコアは、投資家たちが企業に投資する基準の一つとして重視されるようになりました。今回は気候変動問題に大きな影響力を持つCDPについてわかりやすく解説します。

目次

  1. 気候変動情報を集めるCDPとは何か?

  2. CDPが作成する3つの質問書

  3. CDPによる企業の格付け

  4. CDPと日本政府の関わりは深まっていく!

  5. まとめ:CDPの気候変動レポートは中小企業経営にとっても必要不可欠!

1. 気候変動関連情報を集めるCDPとは何か?

(1)CDPとは何か

CDPとは、イギリスで設立された国際的な環境非営利団体(NGO)です。2000年に発足した当初は「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」が正式名称でした。現在は、炭素(カーボン)以外にも水セキュリティ、フォレストも対象になったことから、略称のCDPを正式名称としています。

発足当初から世界の企業に対し、二酸化炭素排出量や気候変動への取り組みに関する質問書を出すことで情報を収集。その情報を開示してきました。CDPの活動は気候変動に関心がある機関投資家らの支持を受け、年々拡大。日本でも2005年から活動しています。

CDPの活動目的は「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことです。

その目的達成に向けて、CDPは投資家や企業、自治体に働きかけ環境に与える影響に関する情報開示を促します。CDPが集めた情報は世界中の投資家や企業、政策決定者の意思決定に大きな影響を与えています。

出典:CDP『CDP概要と回答の進め方』2021年5月

(2)CDPに参加する著名投資家

CDPには著名な投資家が数多く参加しています。2020年現在の投資運用総額は106兆ドルを越えました。2021年には著名投資家の総数が590を超えるとされています。日本では三井住友、三菱UFJ、みずほ、りそななどが参加しています。

また、世界の9600社もの企業がCDPの送る質問書に回答。800以上の年や120を超える州や地域も環境インパクトを開示しています。

出典:CDP『CDP概要と回答の進め方』2021年5月

2. CDPが作成する3つの質問書

(1)気候変動質問書

気候変動質問書には、GHG排出量及び削減目標などについて情報の開示や、気候変動に伴う企業が直面している、または今後直面しうるリスクと機会の理解の促進という意義があります。

その上で、影響の大きいセクターについては個別の追加質問も加わります。これらの情報を集め開示することで、その企業が投資に値する気候変動対策しているかを示そうという狙いがあるのです。

主な質問項目は、企業のガバナンスやリスク・機会、事業戦略、目標と実績、CO2排出量の算定方法、カーボンプライシングなどです。

出典:CDP『2023年 CDP気候変動質問書 変更点』2023年3月

出典:CDP『CDP概要と回答の進め方』 p15

(2)水セキュリティ質問書

CDPは、水に関する質問を「水セキュリティ質問書」と名付けて、世界各国の企業に送付し解答を求めています。

CDPが水セキュリティレポートを作成する意義は、世界の水需要の増加と水資源の不足、水ビジネスの増加などの水リスクについて企業や投資家に意識させ、水管理への理解してもらうことです。

主な質問項目は、水セキュリティに関する現状やビジネスへの影響、取り組みの手順、ビジネス戦略、今後の目標などです。

出典:CDP『2023年CDP水セキュリティ質問書 導入編』2023年4月

(3)フォレスト質問書

CDPが行う森林に関する質問を「フォレスト質問書」といいます。森林といっても森林そのものについてではなく、大豆やパーム油、木材、畜産品などの原材料(コモディティ)が、森林減少をもたらしていないか、について、企業の認識を高め、対策を透明化することを目的としています。森林減少による年間CO2排出は、全世界の全自動車による年間排出量に匹敵する規模であることが知られています。

出典:CDP『2022年 CDPフォレスト質問書 導入編 2022年4』

3. CDPによる企業の格付け

(1)CDPスコアとは

CDPは質問書に対する企業の解答から、各企業にスコアをつけます。CDPがつけるスコアは8段階(無回答を除く)に分かれています。

  • 情報開示レベル(D⁻、D)

質問書に解答しているが、まだ、スチュワードシップに向けた努力が未成熟

  • 認識レベル(C⁻、C)

事業で環境課題への影響を考慮し、環境問題に関する認識を深めている段階

  • マネジメントレベル(B⁻、B)

環境リスクやその影響に対するアクションをとり、環境リスクをなくそうとしている

  • リーダーシップレベル(A⁻、A)

環境課題の管理にベストプラクティスを行っている

出典:CDP『2021年CDP気候変動質問書』 p9

 出展:CDP『CDP2022 スコアリング 各種注意点』

(2)CDPスコアAリストに掲載された企業

2021年12月、CDPは「全世界で環境先進的な上位2%の企業をCDP Aリストに選出」したと発表しました。CDP Aリストについて以下のようにまとめられています。CDPAリストに選抜された日本企業は2020年1月24日時点で38社あり、アメリカやフランスを抜いて世界1位です。

  • 評価対象となった12,000社近くの企業の中から272社をAリストに選出した

  • 水資源保護と森林保全の分野で、これまで以上に企業の先進的な取り組みが見られた

  • 先進的な14社が、気候変動、水セキュリティ、フォレストの3分野すべてでAスコアを獲得した

  • 評価基準の引き上げに伴い、気候変動のAリスト企業数は減少した

  • 2021年、過去最高の13,000社強がCDPを通じて環境情報を開示した

  • しかしながら、時価総額で21兆ドル相当の17,000社近くが依然として開示を怠っている。 

出典:CDP JAPAN 「全世界で環境先進的な上位2%の企業をCDP Aリストに選出 本年度のCDP Aリストの時価総額は12兆」

日本企業全体でみると、2022年のプライム市場上場企業においてCDPが質問書を送った1841社の日本企業のうち、回答した企業は1056社(57%)

出典:環境省_『参考資料集 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」』

出典:CDP『CDP 気候変動レポート 2022: 日本版』2023年4月

「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」の3分野でAを獲得した企業は全部で14社ありますが、その中には花王、不二製油グループなどの日本企業も含まれています。

Aリストの企業の取り組事例として、花王は2021年にインドネシアの小規模パーム農園に対し、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証取得を支援する事業を始めました。

また、前年にCスコア以下だった企業のうち509社がBスコアを獲得しました。その一方、合計時価総額21兆ドルにも達する16,870社が積極的な情報開示に応じていない、または不十分な開示にとどまっていると指摘されています。

Aスコア・Bスコアを取る企業が増えている半面、環境に関する情報開示に応じない企業も一定数存在していることから、環境問題に対する企業間の温度差が大きいものであることがわかります。

(3)CDPによる格付けとESG投資の関連

ESG投資とは

出典:財務省『ESG投資について』(2020/12/2)p3

ESG投資とは「環境」「社会」「ガバナンス(企業統治)」の頭文字をとった言葉で、これらの要素を重視した企業を選別して行う投資のことです。このESG投資の判断基準の一つとしてCDPスコアが用いられます。

CDPによる格付けともいえるCDPスコアは、株価情報にも掲載され、機関投資家の判断材料の一つとなっています。このように、CDPが集めた環境に関するデータは金融市場や政策決定などさまざまなステークホルダー(利害関係者)によって活用されているのです。

4. CDPと日本政府の関わりは深まっていく!

2020年10月、国会で菅総理大臣が「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言しました。

これにもとづき、各省庁は二酸化炭素排出削減に積極的に取り組んでいます。環境省はCDPと共催で「サプライチェーン・アジア・サミット2021」を開催しました。

今後も、日本政府とCDPの関係がより深まっていくと予想されます。

出典:首相官邸『令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説 』(2020/10/26)

出典:環境省『サプライチェーン・アジア・サミット2021の開催について』

5. まとめ:CDPの気候変動レポートは中小企業経営にとっても必要不可欠

CDPが取りまとめる気候変動などのレポートは、世界の環境問題を理解する上で必要不可欠なものとなりつつあります。現在のところ、質問書の送付対象は大企業が中心です。しかし、今後は中小企業にも影響を及ぼすようになるでしょう。

質問書の送付対象である各国政府は、自国に投資を呼び込むためにもCDPの基準を満たす環境対策に取り組まざるを得なくなるからです。

政府の環境対策の行く末を予想し、自企業の企業戦略や融資獲得などのため、中小企業もCDPについて理解を深める必要があるのではないでしょうか。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説