TNFDの開示に重要なフレームワークとは?企業の事例もご紹介!

TNFDの開示を理想的に行うには、TNFDのフレームワークをしっかりと理解することが重要です。TNFDは、企業が自然にまつわるリスクや機会を報告し、行動を起こせるようにするためのフレームワークを提供しています。そして、TNFDの開示は、そのフレームワークに沿って自然資本と企業運営の関連に焦点を当て、リスク情報や影響を考慮した報告が求められています。

ここでは、TNFDとは何か、開示が求められる理由や活用状況、TNFDに重要な4つのフレームワークなどを企業の好事例とともにご紹介します。

目次

  1. TNFDの意味と開示について

  2. TNFDの現在の状況

  3. TNFD情報開示に重要なフレームワーク

  4. 日本の企業のTNFD情報開示取り組み事例

  5. TNFDのフレームワークに沿った情報開示で将来のリスクに対応しよう

1.TNFDの意味と開示について

TNFDは、気候変動と生物多様性の喪失が進む中で、企業にどのようなリスクが生じるかを理解するための重要な国際的なイニシアチブです。ここでは、TNFDについてご紹介します。

TNFDとは

TNFD(Task force on Nature-related Financial Disclosure:自然関連財務情報開示タスクフォース)とは、企業や金融機関が自然環境や生物多様性に関するリスクを理解しそれを公表するためのガイドラインを提供する国際的な組織です。これは、気候変動が経済や企業にどのような影響を及ぼすかを判断し、それの情報を世界中の金融業界と共有するための国際的な組織「TCFD」(気候関連財務情報タスクフォース)に続く枠組みとして位置づけられています。

出典:環境省『自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムへの参画について | 報道発表資料 | 』(2021/12/21)

出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略の立案 - トピックス - 脱炭素ポータル』(2023/11/27) 

TNFDが発足された背景

TNFDが発足された背景には、気候変動の問題が大きく関係しています。気候変動は、金融システムの安定に影響を及ぼす可能性があるため、2015年にG20の要請を受けて、国際金融に関わる措置、規制、監視などを行う金融安定理事会(FSB)の下でTNFDが設立されました。これは、中央銀行や金融監督当局は、自然災害による損失が金融システムや経済にシステミックリスクを引き起こす要因と認識しているからです。また、政府も気候変動による経済への影響を考慮し、2022年12月時点で約200の政府が、2030年までに自然の損失を食い止め回復させるという目標を掲げています。このような背景の下、TNFDは発足されました。

出典:TNFD『自然関連財務情報開示 タスクフォースの提言』p,12.13.14.(2024/02/06) 

出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略の立案 - トピックス - 脱炭素ポータル』(2023/11/27) 

TNFDの開示と企業への影響

企業は、気候変動のリスクを報告するのと同じように自然環境のリスクも評価し、それを企業の戦略やリスク管理に組み込むことが大切であり、これらの情報をまとめて報告することは、決断する際に役立つと考えられています。そして、TNFDに取り組むことで、企業の戦略、ガバナンス、リスク管理の意思決定が向上し、気候変動に関連するリスク報告と並行して理想的にはそれを統合した形で、自然に関連するリスク評価を取り入れることができます。

TNFDでは、自然環境との関わりやそこから生じるリスク、そしてそれによって得られる機会を評価する「LEAPアプローチ」を開示の手順として推奨しており、パイロットテストを通じて、この方法が効果的だということが証明されています。

TNFDが推奨するLEAPアプローチとは

出典:環境省『LEAP/TNFDの解説』p,4.(2023/11/29)

出典:TNFD『自然関連財務情報開示 タスクフォースの提言』p,16.(2024/02/06) 

2.TNFDの現在の状況

ここでは、TNFDの世界全体と日本の取り組み状況をご紹介します。

世界のTNFD参画状況

TNFDのタスクフォースは、世界中のさまざまな国から選ばれた専門家で構成されていて、これらの専門家は世界の5つの大陸から選ばれた18の国々から集まっています。また、このタスクフォースを支えるために、2023年11月の時点で1248の企業や団体が協力しており、それぞれが異なる分野の知識を提供しています。

出典:環境省『令和5年11月 環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性主流化室』p,15.(2023/11/07)

日本のTNFD参画状況

2024年度または2025年度の企業報告において、TNFDに沿った開示を行う意向を登録した企業を「TNFDアーリーアダプター(TNFD Early Adopter)」と呼びます。このアーリーアダプターには世界全体で46ヵ国320社が含まれており、そのうち日本からの企業が世界最多の80社を占めています。日本のTNFD参画企業数が、次に多いイギリスの46社を倍近く上回っていることから、日本企業のTNFDへの意識が他の国よりも高いことが分かります。

世界のTNFD情報開示企業数

出典:環境省『ネイチャーポジティブの実現に向けた世界・国の取組と企業に求められる取組 - トピックス - 脱炭素ポータル』(2024/02/29)

3.TNFD情報開示に重要なフレームワーク

TNFD提言には「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクトの管理」「測定指標とターゲット」の4つの重要なフレームワークがあります。ここでは、それぞれのフレームワークについて解説します。

ガバナンス

ガバナンスは、組織が自然に対する依存関係や影響、リスクおよび機会を評価し、管理するための情報を開示します。具体的には、自然関連の依存やそれに伴うインパクト、リスクについて取締役が担う役割や、それらの各分野の評価において経営者が担う役割を説明します。また、企業に関わる地域社会や、影響を受けるステークホルダーとどのような協力をしていくのかを説明します。

出典:TNFD『自然関連財務情報開示 タスクフォースの提言』p,47.(2024/02/06) 

戦略

戦略は、企業のビジネスモデル、戦略、財務計画に影響を与える自然に関連する依存、影響、リスクおよび機会について重要と判断する場合は情報を開示します。具体的には、企業による自然に依存する要素やビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務計画において自然関連のインパクトやリスク、機会を短期、中期、長期ごとに説明します。また、企業に関わる地域社会や、影響を受けるステークホルダーと協力して、自然に関連する依存関係やインパクトについて説明するプロセスを明確にします。

出典:TNFD『自然関連財務情報開示 タスクフォースの提言』p,47.(2024/02/06) 

リスクとインパクトの管理

リスクとインパクトの管理は、企業の自然に関連する依存関係、影響、リスクおよび機会を特定し、評価、優先順位を付けて管理するためのプロセスを説明します。具体的には、企業の直接的な運営、またはサプライチェーンにおいてリスクとインパクトの管理の説明を行ったり、これらのプロセスが企業全体のリスク管理にどのように組み込まれているのかを説明します。

出典:TNFD『自然関連財務情報開示 タスクフォースの提言』p,47.(2024/02/06) 

測定指標とターゲット

測定指標とターゲットは、自然に関連する資源の使用、影響、リスクおよび機会を評価し管理するために使用している指標と目標を公開することです。具体的には、企業は戦略とリスクの管理のプロセスに基づいて、重要な自然管理のリスクと機会を評価し、それに対する指標を公開したり、自然に対する依存やインパクトを評価し管理するために使用している測定指標を開示します。

出典:TNFD『自然関連財務情報開示 タスクフォースの提言』p,47.(2024/02/06) 

4.日本の企業のTNFD情報開示取り組み事例

最後に、実際にTNFD情報開示に取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ

メガバンクの三井住友銀行などの傘下子会社の経営管理を行う「株式会社三井住友ファイナンシャルグループ」は、お客様のビジネス活動と自然資本との関係を評価し、それを基に自社の事業におけるリスクと機会を認識しています。そしてTNFDに基づいて自然資本への依存度や影響度を評価し、特に重要な自然資本や生態系サービスを特定しています。この考え方はTNFDにおいて、自然資本の保全と回復を重要な項目として位置づけ、依存と影響の視点から認識されたリスクを簡潔に記述していることがポイントとなっています。

出典:金融庁『記述情報の 開示の 好事例集 2023』p,71.(2024/04/08)

キリンホールディングス株式会社

ビールや清涼飲料水を手掛ける「キリンホールディングス株式会社」は、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議をきっかけに、特定の場所の自然資本に依存している事業のリスク評価を行いました。そして、日本国内の食品、飲料および医薬品として、2021年12月に初めて「The TNFD Forum」に参加しています(TNFD日本会議にも参加)。また、2022年7月に公開した環境報告書でTNFDβv0.1の「LEAPアプローチ」に従って、世界で先駆的に情報を公開しました。これは、自然資本に対するアプローチとしてTNFDのガイドラインに従った開示と目標設定について簡潔に説明しているため、好事例とされています。

出典:金融庁『記述情報の 開示の 好事例集 2023』p,55.(2024/04/08)

5.まとめ:TNFDのフレームワークに沿った情報開示で将来のリスクに対応しよう

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、企業が自然資本と事業の関連について情報開示するためのフレームワークを提供しています。このフレームワークは、自然にまつわるリスクや事業運営に影響を与える情報を開示することを重視しています。また、TNFDは自然資本との関係、リスクおよび機会を評価するために「LEAPアプローチ」を開示の手順として推奨しています。

ぜひ、企業はTNFDフレームワークに基づいて、将来のリスクに対応するために情報を公開すると同時に、持続可能な社会の実現に貢献を目指しましょう。

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