私たちにできることは?身近な環境問題への取り組み

環境問題というと世界規模の取り組みという印象で、「身近なもの」という感覚が持てない人も多いと思います。しかし、環境問題は様々な要因があり、その一つ一つは私たちの生活に密接に関わっています。

ここでは、これからの地球環境を保つために課題となる環境問題についてどのようなものがあるのか、また私たちの身近にある取り組み方法について解説します。

目次

  1. 地球の将来を考える!身近な環境問題とは?

  2. 日本で行われている環境問題への取り組みとは?

  3. 環境問題解決のために私たちができることは?身近な環境問題への取り組み

  4. 【まとめ】日々の意識が重要!身近な環境問題への取り組み

1. 地球の将来を考える!身近な環境問題とは?

環境問題といってもその内容は様々あります。まず、実際にどのような問題がおこっているのか把握しておきましょう。

地球環境が問題視されるまでの流れ

まず、環境問題が大きく進行したのは1970年代。科学の進歩によって地球の大気の仕組みが明らかになり、1985年にはオーストリアのフィラハで行われた環境問題に関する世界会議でCO2による地球温暖化の影響が取り上げられました。

出典:経済産業省『地球温暖化防止対策の歩み』

これにより1988年には地球温暖化の科学的検討の場として「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」が設立されました。2007年に発表された第4次評価報告書では、「我々を取り巻く気候システムの温暖化は決定的に明確であり、人類の活動が直接的に関与している」と人間の活動で気候変動がおこっていることを指摘し、この問題解決に向けて2015年にはパリで「COP(国連気候変動枠組条約締約会議)」により、温室効果ガスの排出削減への世界的な取り組みが合意されました。

出典:経済産業省『IPCC評価報告書』

また、同じく2015年には国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」という国際目標が採択されています。これは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標で、環境問題についての取り組みも取り上げられています。

出典:外務省『SDGsとは?』

では具体的にどのような問題が取り上げられているのでしょうか。細かく見ていきましょう。

(1)世界平均気温の上昇

人類の活動によって排出されるCO2を主とする温室効果ガスの影響により、地球の気温の上昇は続いています。現在の温室効果ガスの排出状況が続いた場合、地上の気温は2050年には1.5℃~2.0℃上昇し、2100年には2.6℃~4.8℃の上昇まで進むとされています。

これにより、異常気象の増加、北極海の海氷の減少、海面水位の上昇、農業・水産業への影響などが起こっています。

出典:JCCCA『世界平均気温の変化予測』

出典:環境省『おしえて!地球温暖化』(2019.3.29)

(2)海洋汚染

地球の7割は海と言われていますが、この海洋汚染も地球温暖化に次いで深刻化しています。特に問題視されているのが「マイクロプラスチック問題」で、ペットボトルのフタ、ストロー、ビニールなどの廃棄によるものです。陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量を調査した結果(2010年推計)では1位が中国で、以下東南アジアの国々が続き、日本も年間6万トンで30位に入っています。

陸上から海上に排出されたプラスチックの発生量v

出典:環境省『海洋プラスチック問題について』(2018.7)(p3)

南極や北極でもマイクロプラスチックが観測された報告もあり、地球規模で広がっています。

マイクロプラスチックの密度分布

出典:環境省『海洋プラスチック問題について』(2018.7)(p2)

また、生活排水や、廃棄石油などの汚染も広がっており、海洋生物の生態系の破壊や、船舶航行への障害、沿岸域の居住環境への影響などが懸念されています。

(3)水質汚染

海洋汚染と同様に、問題となっているのが水質汚染です。河川、湖、池、地下水などに生活排水やごみが流出し、有害な物質により汚染されていることが問題となっています。日本では、昭和30年代の経済成長時の工業化で工業用水による水質汚染が問題となり、昭和45年には「水質汚濁防止法」が成立し、環境基準により水質の改善が行われています。

公共用水域の環境基準の達成率の推移

出典:環境省『水質汚濁対策』(p12)

しかし、世界をみるとアフリカなどの水道インフラの整っていない地域では、汚染された水に含まれる細菌により命を落としてしまう人もいます。この水質汚染では汚染された水の浸透による「土壌汚染」という二次汚染を引き起こす可能性もあり、対策が求められています。

(4)大気汚染

大気汚染は車の排気ガス、工場から排出される有害物質を含む煙によって空気が汚染される現象となります。自然現象によって発生する場合もありますが、ほとんどは人為的な排出が要因となっています。

現在最も問題視されているのが「PM2.5」と呼ばれる微小粒子状物質です。これは2.5㎛(マイクロメートル)以下の小さな粒子で、物質の燃焼や、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などのガス状大気汚染物質が大気中での化学反応により粒子化したもので、人体に入ると呼吸器系や循環器系への影響が懸念されています。

出典:環境省『微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報』

日本での発生状況は改善傾向が続いていますが、中国の急速な経済成長により発生したPM2.5は日本を含む近隣国に影響を与えており、対策についての話し合いが行われています。

出典:環境省『令和元年度大気汚染状況について』

(5)森林破壊

森林破壊は土地開発、商業利用での森林の人為的な伐採、焼失などにより森林が劣化、縮小することを言います。世界の森林面積は40.3億ヘクタールで、全陸地面積の約31%を占めていますが、毎年520万ヘクタールが減少しています(2000年~2010年平均)。

出典:環境省自然環境局『世界の森林の現状』

この森林破壊による影響は2つあります。1つは「野生動物への影響」で、生活の場である森林の減少により、野生動物の生態系が崩れて生物が減少し、絶滅の危機にさらされている動物もいます。もう1つが「地球温暖化への影響」で、樹木の光合成により吸収されるCO2の減少により、温室効果ガスが増え、地球の温暖化につながることが懸念されています。

2. 日本で行われている環境問題への取り組みとは?

様々な環境問題が深刻化している中、各国はこの問題の解決に向けて取り組みを進めています。ここからは日本における環境問題対策について、どのような対策が行われているかご紹介します。

環境省の取り組み

環境省では、気候変動に対して「脱炭素」、「テクノロジーの変革」、「社会経済システムの変革」の観点から対策を進めています。

  • 脱炭素でレジリエントかつ快適な地域とくらしの創造

再エネを活用した脱炭素を中心に省エネ・畜エネを組み合わせ、自立、分散型エネルギー設備の導入推進や、建築物の脱炭素化・ゼロエネルギーハウスへの支援事業など温室効果ガスの排出削減と地域の防災への取り組みで快適な暮らし・ビジネスの実現を目指しています。

出典:環境省『環境省における気候変動対策の取組』(2020.9.1)(p29)

  • 脱炭素のための技術イノベーション・グリーンファイナンスと企業の脱炭素経営の好循環の実現

大電流・高耐圧パワーデバイスやCCUS、プラスチックの資源循環システム・浮体式洋上風力発電などの革新技術の推進や、ESG金融などによるグリーンファイナンスでの資金の好循環を図り、脱炭素経営の推進を進めています。

出典:環境省『環境省における気候変動対策の取組』(2020.9.1)(p30.31)

  • 社会ニーズからの社会経済システムイノベーションの創出

カーボンプライシングや、物流脱炭素化などのエネルギー転換部門の脱炭素化の検討により、社会経済システムのイノベーションの促進に取り組み、ゼロカーボンシティ実現に向けた基盤情報整備を進めています。

出典:環境省『環境省における気候変動対策の取組』(2020.9.1)(p32)

  • 世界の水環境問題解決に向けた取り組み

アジア地域では水質汚染の問題が深刻化しており、この問題の解決のため環境省は、「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」を設立し、アジア各国との連携を図り水環境ガバナンスの強化・向上を目指しています。

出典:環境省『世界の水環境問題解決に向けた環境省の取組について』

  • 森林保全対策事業の実施

森林の保全に向け、環境省では「フォレスト・パートナーシップ・プラットフォーム」という情報サイトを運営しています。こちらは企業とNGO/NPOとの連携を促進させ、保全活動を推進することを目的としています。

出典:環境省『国際的な森林保全対策』

このように政府も様々な方策で環境問題に取り組んでいます。

3. 環境問題に私たちができることは?身近な環境問題への取り組み

では、実際に私たちが生活の中でできる環境問題への取り組みとはどのようなものになるのでしょうか。身近な生活の中でできることを具体的に取り上げてみます。

現在の環境問題における課題とは?

環境問題に取り組む上で大事なのは、私たちの生活と地球環境は密接に関わっていることを認識することです。ここまであげた環境破壊に係わる内容は私たちの普段の生活によっておこっていることなのです。重要なのは、普段使っているものやエネルギーに「意識」と「疑問」を持つことです。どこからきて、どのような経緯で自分の手元にあるのか考えること、そこに関わる環境破壊はどのようなものがあるか、今一度考えてみるべきでしょう。

身近な環境問題への取り組み

  • 照明をLEDに替える

  • 家電製品を省エネ型に買い替える

  • 再生可能エネルギー比率の高い電力会社に替える

  • 温暖化対策に積極的な政治家を支持する

  • 窓を二重窓・断熱サッシにリフォーム

  • 太陽光発電・太陽熱温水器の導入

  • 無駄な食料の削減

  • 製品の購入時に原料・加工方法等を確認する

  • FSC・MSC・ASCなどのエコラベルのついたものを選ぶ

  • プラスチックごみの排出削減

  • 無駄な買い物をしない

  • 3Rを意識する

  • 地産地消を心がける

  • 過剰包装の製品を避ける

  • 環境問題に取り組む企業の製品を選ぶ

ここにあげたものはほんの一部で、私たちの生活の中でできることはこの他にも多数あると思います。世界規模の問題に対して「小さなこと」と思わず、一人ひとりが意識を持ち、取り組んでいくことが大事なのです。

普段の暮らしの中でできることWWF

4. 【まとめ】日々の意識が重要!身近な環境問題への取り組み

地球環境の破壊に、人間の生活が関わっていることが実証され、世界的に対策が講じられています。私たちの身近な暮らしの中でできることはどのようなものがあるかもう一度しっかり考えてみてはいかがでしょうか。それが「小さなこと」のように感じるかもしれませんがその取り組みを一人ひとりが意識し、行うことで世界中では「大きなこと」に変わっていきます。

企業としてもこの消費者の意識に答えるサービスの提供が必要となっていくでしょう。家庭・職場での取り組みや、企業としての取り組みについてもう一度考えてみてはいかがでしょうか。

CO2排出量を見える化しよう!

アスエネでは、CO2排出量見える化クラウドサービス『アスゼロ』により、CO2排出量をワンストップでご支援することができます。気候変動問題への取り組みや、脱炭素経営の推進を考える企業・自治体のお客様にお勧めのクラウドサービスです。

 

 

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説