「GRESB」とは?種類や評価方法・事例について解説
- 2023年10月03日
- SDGs・ESG
世界中で脱炭素が推し進められる中、不動産のESG投資の重要な指標として「GRESB」が注目されています。しかし、具体的に「GRESB」とは何かと言われると、知らない方も多いのではないでしょうか。「GRESB」とはどのような制度で、どのような種類や評価項目があるのか。そして、企業は実際「GRESB」にどう取り組むべきなのか。
この記事では、企業として「GRESB」について、知っておくべき内容をあらゆる角度から解説します。日本で参加している企業も紹介しますので、ぜひ、ESG投資検討の参考にしてください。
目次
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GRESBとは?概要と種類を説明
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GRESBの評価を向上させるポイントとは
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GRESBとESG投資の関係
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GRESBの参加企業
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まとめ:持続可能な投資のためにGRESBでできる努力を!
1. GRESBとは?概要と種類を説明
GRESBとは
GRESBとは「Global Real Estate Sustainability Benchmark(グローバル不動産サステイナビリティ・ベンチマーク)」の略で、一般的には「グレスビー」または、「グレスブ」とも呼ばれています。不動産セクターやファンドがサスティナビリティや環境に配慮しているかどうかを評価するため、欧州の主要な年金投資グループが中心となり2009年に創設されました。
ベンチマークとは、投資家が資産運用を行う際の指標となるもので、ESG投資においては、環境やガバナンスに対しての配慮が行われているかどうかを評価します。GRESBは、実物資産関連におけるさまざまな投資判断に使用できる、国際的なベンチマークツールです。
GRESB評価の種類
GRESBには、評価対象を不動産会社・ファンドとし、不動産の既存の物件や、新規の物件における開発・大規模改修での取り組みと、そのESG開示を評価する「GRESBリアルエステイト」と、評価対象をインフラ会社・ファンドとし、インフラファンドの投資プロセスやインフラ会社・オペレータの運用、そのESG開示を評価する「GRESBインフラストラクチャー」の2つがあります。
出典:Green Building Japan『GRESBとは』
GRESBの評価項目と基準
評価項目は、「GRESBリアルエステイト」「GRESBインフラストラクチャー」「GRESBリアルエステイトデット」の3種類があります。
GRESBにおける評価は、「実行と計測」と「マネジメントと方針」の2つのスコアにより結果が表示されます。2つのスコアで50以上を獲得した参加者は、「グリーンスター」という称号を得ることができ、総合スコアのグローバル順位によって、上位の20%以内であれば、「5スター」という最高位が与えられます。評価項目は多義に渡っており、以下のような内容が含まれています。
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持続可能な社内の体制を整える
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ESGに対する情報の開示
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保有した不動産物件に対しての環境負荷削減の取組み
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従業員やテナント等への健康や快適性の取組み
GRESBの種類
(1)GRESBリアルエステイト(GRESB Real Estate)
GRESBリアルエステイトは、GRESBの制度では、最も多くの不動産投資家が判断の目安に活用している制度です。2009年に創設されましたが、2015年までは「GRESB調査」という呼称でした。特に、不動産の既存物件や新規開発・大規模改修プロジェクトでの取り組みなど、不動産セクターを評価するのに最適と言われています。
GRESBリアルエステイトの評価は、不動産会社・ファンドのベンチマークとしては唯一のものであり、投資家目線での評価項目は投資に関する重要事項を多くカバーしています。
(2)GRESBインフラストラクチャー(GRESB Infrastructure)
GRESBインフラストラクチャーは2016年に開始されました。GRESBインフラストラクチャーは二種類あり、インフラのファンドを対象とする「ファンド評価 (Fund Assessment)」と、インフラの企業や資産を対象とする「アセット評価 (Asset Assessment)」で、構成されています。主に投資のプロセスやインフラ会社やオペレーターを評価する制度であり、開示評価も実施されています。インフラが進む近年、参加者が増加しています。
(3)GRESBリアルエステイトデット
GRESBリアルエステイトデットは、銀行や生命保険などデッドファンドが主な対象の評価制度です。
2. GRESBの評価を向上させるポイントとは
現状を把握する
企業のGRESBの評価を向上させるためには、まずは現状がどのようなものか把握する必要があります。そのためには、しっかりとしたデータを収集し、そのデータの検証を行うことが大切です。例えば、不動産なら実物資産であるビルやテナントの電力や水の使用量、またCO2をどのくらい排出しているかなどを把握し、問題があれば改善していくことで、評価を高められます。
環境アセスメント改善
積極的なアセスメントにより、環境アセスメントを改善することも可能です。一例として物件のエネルギー削減の改善ポイントを見つけ、節約や省エネをおこないエネルギー削減につなげることが挙げられます。また自社の従業員への研修制度、満足度調査の実施を行うことも、GRESBの評価項目に値し、評価を向上させるでしょう。
改善の維持管理
GRESBは、参画している企業が継続的な活動を行うことを目標としているため、企業はスコア改善に向かって持続的な努力が必要です。現状把握からデータ管理、そして改善した内容を常に企業内でも確認し、活用を目指さなくてはなりません。そうすれば、さらなる評価の向上が見込まれるといえます。
3. GRESBとESG投資の関係
ESG投資とは
GRESBが注目される背景には、ESG投資が深く関係しています。ESG投資とは、従来の財務による投資だけではなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に対して配慮した投資のことです。2005年に発表されたPRI(国連責任投資原則)において、投資家に対しても持続可能な市場を構築して欲しいという呼びかけがなされるようになり、ESG投資という概念が注目されはじめました。
関連記事:ESG投資とは?7種類の手法を解説
環境問題とESG投資
世界的に国連の定めた目標「SDGs」が注目されはじめると、ESG投資の重要性が増し、取り組みも活発化しました。投資におけるこれまでの判断材料は、業績や財務状態など利益に関わるものというのが一般的でした。しかし、2015年にパリ協定が採択されると、世界ではさまざまな環境問題に対する対策の気運が高まり、投資においてESGの視点を持つことは、企業にとって必要不可欠となりました。
出典:経済産業省『ESG投資について』2020年12月2日 p.8
GRESBは不動産のESG投資の重要指標
GRESBは、特に不動産の投資家がESG投資に対しての配慮を行っているかを評価するものです。ESG投資は、長期的な資産運用に対して非常に有効と考えられており、莫大な資金を運用する公的年金や投資ファンドが実施しています。そのため、不動産業界に対しても、大きな影響を与えています。不動産の投資家にとって、GRESBでの評価をいかに向上させるかが重要になっているのです。
4. GRESBの参加企業
日本の参加企業
日本では、2015年に国連責任投資原則(PRI)に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名したことにより、ESG投資はますます広がりを見せました。ESG投資の関心とともに、GRESBに参加する日本企業は増加しています。以下に参加している企業をご紹介します。
参加企業一覧
リアルエステイト評価
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イオンモール ・イオンリート投資法人
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大和ハウスリート投資法人
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積水ハウス・リート投資法人
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野村不動産マスターファンド投資法人
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NTT 都市開発リート投資法人
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ジャパン・ホテル・リート投資法人
インフラストラクチャー評価
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日本再生可能エネルギーインフラ投資法人
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タカラレーベン・インフラ投資法人
5. まとめ:持続可能な投資のためにGRESBでできる努力を!
ESG市場の拡大とともに、重要性の増しているGRESBについて、あらゆる角度から解説しました。不動産市場におけるESG投資は、今後も拡大傾向にあり、不動産投資家はGRESBについての重要性を認識する必要があります。不動産投資の市場は、莫大なものです。だからこそ、持続可能な市場を創造していかなくてはなりません。
GRESBは、資産におけるESG投資の実践媒体として、将来的にさらに重要な役割を果たすことは間違いないでしょう。この記事を参考に、持続可能な社会の実現に向けたESG投資を検討し、自社の資産価値を高める努力をしてみてはいかがでしょうか。