【GHGの排出量計算法】CO2数値化の義務とメリット、計算方法もわかりやすく解説

2015年のパリ協定をうけて、日本は2030年度までに温室効果ガス(GHG)の46%削減(2013年度比)を目指し努力することを表明しました。この記事では企業の受ける影響やそのための取り組みやメリット、算出方法を解説します。

出典:環境省脱炭素ポータル「地球温暖化対策計画が勝っ釘決定されました」

目次

  1. なぜGHG排出量を計算しなければならないの?

  2. サプライチェーンのGHG排出量を計算するメリット

  3. GHGの排出量の計算法

  4. まとめ:GHG排出量を数値化し、効率的な脱炭素経営を目指しましょう!

1. なぜGHG排出量を計算しなければならないの?

1997年の京都議定書採択を受け、翌年「地球温暖化対策推進法(温対法)」が成立。以来温対法は7回の改正を重ねました。2021年3月の改正では、企業のGHG排出量の計算、報告、公表を電子システムによって行うことが盛り込まれました

温対法には地球温暖化は人類によるGHG排出が原因であると明記されています。その上で国、地方自治体、企業、国民はそれぞれが取り組むべき地球温暖化対策について規定し、法律として成立させました。

出典:e-Gov法令検索「地球温暖化対策の推進に関する法律」

企業のサプライチェーン全体GHG排出量の把握

近年、自社以外のサプライチェーンのなかにもGHG排出量が大きい場合があり、また大きく削減できる可能性もあることがわかってきました。

自社だけでなく、サプライチェーン全体のGHG排出量を把握することで、脱炭素への戦略が考えやすくなり、様々なメリットももたらされる可能性があります。

事業者による排出量の範囲は、GHGプロトコルによりScope1、Scope2、Scope3に分けられています。

・Scope1=事業者自らが直接排出するGHG

・Scope2=他者から供給された電気、熱・蒸気の使用により排出されるGHG

・Scope3=Scope1、2以外から排出されるGHG

GHGプロトコルによるサプライチェーン概念図

出典環境省、経済産業省『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム』 

出典:環境省 経済産業省『サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.4) 』2022年3月 

出典:e-Gov法令検索「地球温暖化対策の推進に関する法律」

2. サプライチェーンのGHG排出量を計算するメリット

ではサプライチェーン全体のGHG排出量を把握することによるメリットとは何でしょう。

GHGの排出状況を把握すると削減のための戦略が見える

テクノロジーは日々進化しています。しかし、経済的な理由や保守的な考えから旧態依然の方法に固執して、GHG排出量も多く非効率的な企業活動をしている場合があります。

サプライチェーン全体のGHG排出量を数値で把握することにより、優先的に削除すべき対象が見えてきます。また、環境負荷削減のための道筋や事業戦略策定を考えるヒントが得られることもあります。

出典:環境省、経済産業省『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム』 

脱炭素に向けてサプライヤーとの協働が図れる

サプライチェーン上の他事業者と数値に基づいて協議することにより環境負荷低減に向けての話し合いが深まり、GHG削減につながる可能性が出てきます。

またサプライチェーン全体で脱炭素に向けて努力している企業の姿勢は、社会に向けてのアピールポイントになります。

出典:環境省、経済産業省『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム』 

機関投資家の質問に、ファクトに基づいた説明ができる

カーボンニュートラル宣言を実効性のあるものにするには、努力目標だけでは不十分です。GHG排出量を計算し公表することで利益を獲得する、というメリットがなければ企業は動きません。

世界の投資の流れは、ESG(環境・社会・ガバナンスの要素)を考慮した投資が重視されるようになってきました。逆にESGを軽視しているような企業はどれほど財務状況がよくても、サステナビリティがないと判断されて投資対象から外される事態も考えられます。

機関投資家の質問に対して、GHG排出量計算によって得られた数値をもって説明することによって説得力が増し、投資を得られやすくなります。

出典:経済産業省『ESG投資について』2020年12月2日

3. GHG排出量の計算法

特定排出者(*)は、算定対象となるGHGの排出量を国に報告します。これは自社の企業活動に伴う排出量(Scope1、2)のみではなく、荷主に係る間接的な排出量も含まれます。GHG排出量の計算方法について解説します。

*特定排出者=すべての事業者のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者

出典:環境省 経済産業省『サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.4) 』2022年3月 

GHG排出量の計算(Scope1. 2)

Scope1. 自社からのGHG直接排出

事業者が、自らの活動を通じて排出したGHGを計算します。排出量を計算すべきGHGとして次のものがあります。

  • 二酸化炭素

  • メタン

  • 一酸化二窒素

  • ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

  • パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

  • 六ふっ化硫黄

  • 三ふっ化窒素

出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度

これらの物質ごとに温対法で定められた方法で計算された排出量に、地球温暖化係数を乗算して得られた数値の総計がGHG総排出量となります。

地球温暖化係数とは、二酸化炭素を1として他のガスが二酸化炭素に比してどれほどの強さを持っているかを係数にしたものです。GHGにこの係数を乗算することにより、それぞれのGHGをCO2に換算し、それらを合計することによりGHG総排出量を算出します。

地球温暖化係数一覧

出典:環境省「温室効果ガス総排出量 算定方法ガイドラインver1.0(P4)」平成29年3月

Scope1 直接排出の例

出典:環境省地球環境局「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(I-7)」平成15年7月

Scope2. 他社からのGHG間接排出

他者から供給された電気や熱を使用したとき、その電気や熱を生み出す過程で発生したGHGを計算します。

この場合の計算は活動量×排出係数で求められます。

たとえば、1年間の電気の使用に伴うCO2排出量は、電気使用量(kWh)×排出係数(kg CO2 /kWh) で求められます。

Scope1 直接排出の例

出典:環境省地球環境局「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(I-8)」平成15年7月

サプライチェーン全体のGHG排出量の計算

サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量とは、Scope1、Scope2、Scope3全てのGHG排出量を合計した量のことをいいます。しかしScope3においてGHG排出の形態は多岐にわたりますので、そのカテゴリを15に分類し、それぞれの排出量について計算し合計することが求められます。

Scope3におけるGHG排出量の計算は、活動量に排出原単位を乗じて算出します。活動量とは、各事業者において上記の表に従った排出量を社内の各種データから収集したものです。排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことをいいます。

出典:環境省 経済産業省『サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.4) 』2022年3月 

出典:環境省「サプライチェーン排出量の考え方」P5

4. まとめ:GHG排出量を数値化し、効率的な脱炭素経営を目指しましょう!

サプライチェーンを構成する全てのステークホルダーがGHG排出量を把握することは、脱炭素社会に向けての貢献と経営の効率化に寄与します。GHG排出量を数値化して抑制する戦略を立て、経営の効率化を目指しましょう。

 

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