世界の発電方法や自給率とその特徴。国によって異なる電力事情とは
- 2022年10月07日
- 発電・エネルギー
2050年カーボンニュートラルに向け、日本は再生可能エネルギーの導入を促進し、同時にエネルギー自給率の向上を目指しています。そして、日本だけでなく世界各国でも化石エネルギーから再生可能エネルギーへの移行が急速に進んでいます。
しかし現状、日本はほとんどのエネルギー源を輸入に頼っています。もし海外でなにかの問題が生じて資源を輸入できなくなると、エネルギー源を確保できなくなるという大きな弱点を抱えていることになります。
世界の主要国と日本の発電方法、自給率などを把握し、エネルギー問題や企業の経営への影響について考える材料にしましょう。
目次
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世界の電力供給における発電方法の比率
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世界の発電方法の特徴
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世界の電力自給率
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まとめ:世界の発電方法は国の特徴により多様
1. 世界の電力供給における発電方法の比率
世界の電源構成
世界の電源構成をエネルギー源別に見てみると、石油が2019年時点で33.1%と依然として最も多いことがわかります。石油消費量は1965年から2019年にかけて年平均2.1%で増加しました。
次に多いのが全体の27%を占める石炭です。2000年代に安価な発電用燃料として消費が拡大した石炭ですが、近年では中国の需要の伸びが鈍ったことと、アメリカでシェールガスの生産が本格化し、エネルギー源が天然ガスへ移行したことによる需要の減少などの理由で2015年以降は消費が減少する年もありました。
石油・石炭以上に消費量が伸びたのが全体の24.2%を占める天然ガスです。天然ガスは気候変動への対応が強く求められる先進国を中心に発電用・都市ガス用に消費が伸び、年平均3.3%増加しています。
伸び率で見ると近年増加しているのが原子力と太陽光・風力などによる再生可能エネルギーです。しかし2019年時点で全体に占める割合が原子力が4.3%、再生可能エネルギーが5%と、まだ大きなシェアとは言えません。
しかし、太陽光発電や風力発電は近年コストが低下しており、市場での競争力が向上しています。世界が循環型経済・脱炭素社会を目指す中、今後さらに再生可能エネルギーの比率は拡大すると予想されます。
※世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー)
出典:資源エネルギー庁『エネルギー需給の概要等』(2021/07/19更新)
世界の化石燃料(石油)への依存度
世界の化石燃料への依存度を代表的な石油を例に見てみましょう。世界の石油消費量は経済成長とともに増加してきました。
1973年には1日あたり5,558万バレルであった石油の消費量は、2019年には1日あたり9,827万バレルまで増加しました。世界の原油生産量も石油消費の増加とともに拡大し、1973年の1日あたり5,855万バレルから2019年には1日あたり9,519万バレルと、47年間で約1.6倍に増加しました。
※世界の原油生産動向(地域別)
出典:資源エネルギー庁『一次エネルギーの動向』(2021/07/19更新)
2.世界の発電方法の特徴
※主要国の発電電力量と発電電力量に占める各電源の割合(2018年)
出典:資源エネルギー庁『二次エネルギーの動向』(2021/07/19更新)
アメリカ
200年代前半、アメリカで地下2000mに存在するシェールガスを掘削する技術革新が起こりました。エネルギー源としてシェールガスの生産が本格化したことは「シェール革命」と呼ばれ、世界のエネルギー事情に大きな影響を与えました。
アメリカでの発電は石炭が28.7%、天然ガスが34.3%、水力・原子力・再生可能エネルギーを合わせた非化石エネルギーの割合が36.1%と、大きく3つに支えられています。そのうち石油での発電はわずか1%です。
出典:資源エネルギー庁『二次エネルギーの動向』
イギリス
1960年に北海油田の開発を開始したイギリスは、1980年頃には石油輸出国となりました。しかし1990年頃に最盛期となったイギリスの北海油田での石油の生産量はその後段々と減少しています。
イギリスでは石炭・石油・天然ガスを合わせた化石エネルギーの割合が45.3%、水力・原子力・再生可能エネルギーを合わせた非化石エネルギーの割合が54.7%と、非化石エネルギーの割合が化石エネルギーの割合を上回っています。今後もイギリスでは増え続ける電力需要を補うために、再生可能エネルギーの導入が進められる方針です。
出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルに向けた課題と取り組み』p.37
フランス
フランスの電力供給で特徴的なのは原子力が71.6%と大きな割合を占めていることです。このためフランスの化石エネルギーの割合は2018年の時点ですでに8.1%です。
アルプス山脈などによる水資源にも恵まれたフランスは水力発電も11.8%を占めています。今後は原子力の割合を引き下げ、再生可能エネルギーの割合を増やす方針です。
出典:資源エネルギー庁『二次エネルギーの動向』
ドイツ
ドイツはかつて、国内で生産される石炭による火力と原子力で国内のエネルギーの約4割を供給していました。近年には再生可能エネルギーの導入と原子力の稼働停止を進めています。
2009年に58.9%を占めていた化石エネルギーの割合は2018年には51.4%に、2009年に23%を占めていた原子力は2018年には11.9%に減少しています。他方で2009年に14.9%であった再生可能エネルギーは2018年には33.8%まで増加しました。
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2012 第2章国際エネルギーの動向 第3節二次エネルギーの動向』
日本
資源の乏しい日本では、石炭・石油・天然ガスを合わせた化石エネルギーが73.4%と他の主要国と比較して大きな割合を占めています。このほとんどを輸入に頼っていることが電力自給率の低さにも大きく影響しています。
今後は原子力を一定規模で活用しつつ、2050年には再生可能エネルギーの主力電源化を目指します。同時に水素・アンモニアの火力への活用のための技術開発も進められています。
出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』p.13
3.世界の電力自給率
※一次エネルギー自給率の変化
出典:資源エネルギー庁『グラフで見る世界のエネルギーと「3E+S」安定供給① ~各国の自給率のいま』(2019/07/19更新)
アメリカ
アメリカではシェール革命により原油と天然ガスの国内生産量が2000年代前半以降に増加しました。また、気候変動問題を重視するバイデン大統領就任により、再生可能エネルギーの導入量も増加しています。
2017年時点でアメリカのエネルギー自給率は92.6%と、2007年から比較して10年間で約20%も上昇しています。アメリカの自給率はしばらくはこのような高い水準が続くと予想されます。
出典:資源エネルギー庁『グラフで見る世界のエネルギーと「3E+S」安定供給① ~各国の自給率のいま』
イギリス
イギリスでは北海油田の開発され、1980年頃はエネルギー自給率が100%を超えました。北海油田からの原油・ガスの生産で、イギリスは一時エネルギー輸出国となりました。しかし、北海油田の枯渇により原油の生産は徐々に減少し、それに伴いエネルギー自給率も下がりました。
2014年頃には60%を下回ったイギリスのエネルギー自給率ですが、その後の再生可能エネルギー導入量の増加などにより、再び回復傾向となりました。イギリスのエネルギー自給率は2017年時点で68.2%です。
出典:資源エネルギー庁『グラフで見る世界のエネルギーと「3E+S」安定供給① ~各国の自給率のいま』
フランス
フランスでは電力の7割以上を原子力によって供給しています。原子力発電は、もしも海外からの燃料調達が途絶えた場合でも国内に保有する燃料でけで数年に渡ってエネルギー供給が維持できます。
これによりフランスの電力自給率は50%前後で安定して推移しています。今後は原子力の占める割合を50%まで引き下げ、再生可能エネルギーの比率を2030年までに40%まで引き上げるとしています。
出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑥ ~非化石電源比率がすでに9割のフランス』
ドイツ
ドイツのエネルギー自給率は40%前後で少し減少しながら、ほぼ横ばいの推移です。かつて国内の電力の大部分を供給していた石炭による火力と原子力を減少させ、代わりに再生エネルギーを導入することにより、結果として自給率の推移はほぼ同じ水準を保っています。
ドイツは2022年までに原子力を全て廃止、2038年までに石炭火力の段階的廃止の方針です。今後も再生可能エネルギーの導入は促進されますが、国内の電力自給率の多くの割合を支えている石炭と原子力の減少も進むため、ドイツの電力自給率自体はこのまま横ばいで推移すると考えられます。
出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑦ ~原子力と石炭火力からの脱却を図るドイツ』
日本
2011年に東日本大震災が起こる以前の日本のエネルギー自給率は20%前後の水準でした。東日本大震災以降、原子力の発電量が減少し一時は自給率が6%まで落ち込みました。
2017年時点での日本のエネルギー自給率は10%程です。2012年の「固定価格買取制度(FIT)」導入による再生可能エネルギーの増加や原子力の再稼働などにより自給率は少しずつ高まっています。
出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
出典:資源エネルギー庁『グラフで見る世界のエネルギーと「3E+S」安定供給① ~各国の自給率のいま』
4.まとめ:世界の発電方法は国の特徴により多様
世界の発電の方法はその国のさまざまな事情により移り変わっています。しかし日本においては他の主要国がいずれも4〜5割のエネルギー自給率を維持しているのに対し、1割程度と際立って低いことがわかります。
2050年カーボンニュートラルを目指し再生可能エネルギーの導入を推し進めることは、同時に現在の日本の低いエネルギー自給率の改善にもつながります。日本の国際的な競争力の強化、経済の長期的な成長、企業のサプライチェーンの生き残りなど、再生可能エネルギー導入は社会を好循環に導くために重要な鍵です。
世界でも急速に再生可能エネルギーの導入が進んでおり、それにともない再生可能エネルギーの導入コストの低下と市場での競争力の強化が進んでいます。日本の企業は脱炭素・カーボンニュートラルへの取り組みと同時に国のエネルギー自給率向上のために、できる限り早期に自社への再生可能エネルギー導入を検討・実行しましょう。