「海のエコラベル」MSC認証とは?関連する企業事例も紹介
- 2024年12月02日
- 環境問題
「海のエコラベル」と呼ばれるMSC認証について、わかりやすく解説します。あらゆる事業領域でサステナビリティが求められる昨今、水産資源に関しても例外ではありません。持続可能な漁業を実現していかないと、環境問題や資源の枯渇といった重篤な問題につながってしまいます。MSC認証はそのような課題を背景に、漁業の適切性を担保する仕組みとして機能しています。本記事ではMSC認証の概要や各規格、MSC認証に関する企業などの事例を取り上げます。
目次
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MSC認証の概要
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MSC認証の各規格
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MSC認証に関する企業等の事例
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まとめ:「海のエコラベル」MSC認証を活用して、サステナブルな水産業を推進しよう!
1.MSC認証の概要
MSC認証は、環境負荷低減に寄与する商品を判別する「環境ラベル」の一種です。MSC認証の概要について解説します。
環境ラベルとは
環境ラベルとは、商品やサービスがどのように環境負荷低減に資するかを教えてくれるマークや目印を指します。製品や包装などについており、消費者がリサイクルのしやすさや環境のことを考えて、グリーンな商品やサービスを選ぶ際の参考となります。「エコマーク」や「低排出ガス車認定」など、日常生活でも目にしたことがあるのではないでしょうか。
環境ラベルは、国や第三者機関が認証しているものだけでも40種類以上あり、MSC認証もその中のひとつです。他にも事業者団体が認定したり、地方公共団体が独自に定めている環境ラベルなども多数存在します。
出典:環境省「環境ラベルとは」
出典:環境省「環境ラベルの情報を見る」
MSC認証とは
MSC認証は、国際的なNPである海洋管理協議会(MSC、Marine Stewardship Council)が1997年より運営している環境ラベルで、水産物が持続可能で適切に管理されている漁業由来であることを認証するものです。着目している環境影響は「水産資源の持続的活用に向けての管理」と「海の生態系保護」で、いずれも製品のライフサイクルの中で最も川上の「資源採取」段階に関するものとなっています。
出典:環境省「MSC認証制度」
MSC認証の意義
消費者がMSC認証を受けた水産物を選択することによって、水産物の枯渇を防ぎ、持続的に漁業が継続できることへとつながります。また企業側もMSC認証を受けることにより、ブランドイメージの向上、販路の拡大、価格プレミアムの可能性、原料・製品の安定的な調達などの商業的メリットを享受することができます。
MSC認証付きの製品を流通させるためには、厳格な審査や、消費者が認証製品を選べる市場づくりが必要です。MSC認証が広がることによって、将来の世代まで水産資源を残していくことが期待できます。
出典:MSC「MSCについて学ぼう」
出典:MSC「MSC認証の概要」
2.MSC認証の各規格
MSC認証には、3つの規格が存在します。MSC認証の各規格について解説します。
MSC漁業認証
MSC漁業認証規格は、漁業が適切な管理のもと持続可能に行われているかを審査する際に用いられます。漁業がMSC漁業認証規格を満たすとして認証されると、その漁業により獲られた水産物はMSC「海のエコラベル」を付けて販売することができます。この規格は、海洋だけでなく淡水での漁獲を含むすべての漁業が対象範囲です。ただし哺乳類・鳥類・両生類・爬虫類は除かれ、魚類・貝類・甲殻類などが対象となっています。審査の観点は「資源の持続可能性」「漁業が生態系に与える影響」「漁業の管理システム」の3点です。
MSC CoC認証
MSC CoC認証は、水産物の水揚げ以降のサプライチェーンに対する加工・流通の管理認証です。MSC認証水産物が非認証水産物と混ざることなく消費者に届くようにすることを目的としており、MSC漁業認証を取得した漁業で獲られた水産物をMSC認証のものとして取り扱うためには、MSC CoC認証の取得が必要となります。MSC CoC認証にあたっては、「認証サプライヤーからの購入」「認証製品であることの識別」「認証製品の分別」「認証製品のトレーサビリティ」「事業者の管理システム」などの観点で審査が行われます。
ASC-MSC 海藻(藻類)基準
ASC(水産養殖管理協議会)とMSCの共同で作成されたASC-MSC 海藻(藻類)基準は、海藻生産に関するものです。ここで言う海藻は藻類全体を指し、淡水性のものも含みます。同基準は藻類の採取と養殖に関して、「持続可能な天然資源」「環境への影響」「効果的な管理」「社会的責任」「地域社会との関係と相互作用」という5つの観点で定めています。
出典:MSC「私たちの認証規格」
出典:水産養殖管理協議会および海洋管理協議会「ASC-MSC海藻(藻類)規準」p13,14(2017/11/22)
3.MSC認証に関する企業等の事例
日本でも多くの企業などが、自社商品についてMSC認証を活用しています。MSC認証に関する企業等の事例を紹介します。
日本生協連
日本生活協同組合連合会は、商品のひとつである「CO・OPフィッシュソーセージ」の原料であるアラスカ産スケソウダラについて、MSC認証に基づいた流通管理が行われていることをホームページ上で公開しています。漁獲量は厳しく管理された上、海洋環境に与える影響を最小限にとどめる中層トロール漁法が採用され、工場ラインへの搬入は必ずオブザーバーが立ち合って魚種の混獲有無を確認し、工場はいつどこでどの漁船が漁獲した原料で生産した製品かを確実に管理することで、製品のトレーサビリティを実現しています。ほかにも・CO・OPふっくらにしんの甘辛煮」「CO・OP一本釣り藁焼き戻りかつおのたたき」など多くの商品が、MSC「海のエコラベル」対象として紹介されています。
出典:日本生協連「MSC認証 海の恵みを未来に残す」
出典:日本生活協同組合連合会「MSC 海のエコラベル商品」
株式会社セブン&アイホールディングス
セブン&アイグループでは2018年10月から、プライベートブランド「セブンプレミアム」の水産食品において、MSC認証の商品を販売しています。
2022年10月にはセブン&アイホールディングスが、MSC CoC認証を取得しました。これにより、グループのスーパーストアの店内で加工したMSC認証水産物についても、MSC認証商品として販売することが可能になりました。セブンプレミアムの水産商品に占めるMSC認証商品の割合は、2021年度8.2%・2022年度8.1%・2023年度9.2%となっています。
出典:株式会社セブン&アイホールディングス「持続可能な原材料の調達」
株式会社ニッスイ
ニッスイグループはアラスカのスケソウダラをはじめ、複数の漁場魚種でMSC認証を取得しています。さらにニッスイの海外グループ会社であるエムデペス社ほか3社が操業する、チリの底引きおよび中層トロール漁業・はえ縄漁業が、2019年9月24日付でMSC認証を取得しました。2020年に行った第2回ニッスイグループ取り扱い水産物の資源状態調査では、ニッスイグループが取り扱う天然魚のうち28%が、MSC認証を取得した漁業で獲られたものであることがわかりました。
このようにニッスイグループでは、水産資源の持続可能性向上を図る施策の一つとして、MSC認証などの取得と水産エコラベルを表示した水産物の活用に取り組んでいます。
4. まとめ:「海のエコラベル」MSC認証を活用して、サステナブルな水産業を推進しよう!
MSC認証は、限りある水産資源の持続的な活用を目指した国際的な取り組みです。日本でも多くの企業がMSC認証を活用し、環境への配慮や商品のトレーサビリティなどを消費者へアピールしています。消費者側としても、MSC認証を受けた商品を選択することによって、サステナブルな社会の実現へ貢献することができます。
「海のエコラベル」MSC認証を活用して、サステナブルな水産業を推進しましょう。