SX銘柄とは?選定企業の取り組みも紹介
- 2024年12月02日
- CO2削減
SX銘柄について、わかりやすく解説します。今やサステナビリティへの取り組みは、全ての事業活動において求められています。持続可能性を考慮しない企業は今後ますます、投資家や消費者からの、厳しい目にさらされるでしょう。安定的な企業価値創造のために、多くの企業が新たな経営戦略を模索しています。そうした中、サステナビリティへの先進的な取り組みをしている国内企業を評価する仕組みが、日本で新たに始まっています。本記事ではSX銘柄の概要や選考方法、SX銘柄選定企業の取り組み事例などを取り上げます。
目次
-
SX銘柄の概要
-
SX銘柄の選考方法
-
SX銘柄企業の取り組み事例
-
まとめ:SX銘柄企業に注目し、持続的な企業価値向上を目指そう
1.SX銘柄の概要
SX銘柄は、社会課題への対応を自社の経営戦略へ反映させている企業が選定されるものです。SX銘柄の概要について解説します。
SXとは
SXは「サステナビリティ・トランスフォーメーション(Sustainability Transformation)」の略で、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取り組みを言います。現在は気候変動や地政学的リスクといったサステナビリティ課題が一層複雑化し企業活動の持続性に大きな影響をおよぼしており、長期的・持続的な価値創造に向けた企業経営が一段と難しい状況にあります。長期的かつ持続的な企業価値向上のためには、SXをキーワードとする経営変革こそが、今後の経営に必要不可欠だと考えられています。
出典:経済産業省「『SX銘柄』を創設します」(2023/2/10)
SX銘柄とは
SX銘柄とは、投資家等との建設的な対話を通じて、社会のサステナビリティ課題やニーズを自社の成長に取り込み、必要な経営改革・事業変革によって長期的かつ持続的な企業価値創造を進めている先進的企業を選定・表彰するものです。経済産業省と株式会社東京証券取引所(以下「東証」)によって、2024年度にスタートしました。SX銘柄の選考によって、変革が進む日本企業への再評価と市場における新たな期待形成を促すことが企図されています。
出典:経済産業省「『SX銘柄』を創設します」(2023/2/10)
SX銘柄創設の経緯
日本企業の資本効率性や長期成長に向けた投資は伸び悩んでおり、TOPIX500を構成する企業の4割以上が「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」という状況です。日本企業の課題である「稼ぐ力」や長期的な企業価値の向上は、今や待ったなしの状況と目されています。そこで経済産業省と東証は、SX銘柄の公表を通じて企業経営者の意識変革を促し、投資家との対話を通じた経営変革を期待し、こうした日本企業が向かう変革の方向性を国内外投資家に対して知らしめることが必要と考えたのです。
出典:経済産業省「『SX銘柄』を創設します」(2023/2/10)
2.SX銘柄の選考方法
SX銘柄の選考は、年度ごとに実施されます。SX銘柄の選考方法について解説します。
SX銘柄の選考対象
SX銘柄は東京証券取引所全上場会社約3,800社の中から、SXを通じて持続的に成長原資を生み出す力を高め、企業価値向上を実現する先進的企業群を選定します。こうした企業は中長期的に株主資本コストを上回るリターンを創出できると考えられることから、SX銘柄は「PBR(株価純資産倍率、株価が1株あたり純資産の何倍まで買われているかを見る投資尺度)1倍以上」の企業から選定することとされています。
SX銘柄の募集スケジュールと選考プロセス
SX銘柄は、自ら応募した東証上場企業の中から選定されます。「SX銘柄2025」における応募期間は2024年9月18日~11月18日で、インターネット上の「SX調査票」からエントリーする形式となっています。その後翌年3月頃までが選考期間となり、必要に応じ応募企業へのヒアリングが実施されます。選定企業の公表は4-5月頃の予定です。選考にあたっては「SX調査票」の選択式回答をもとにしたスコアリングによる一次審査、記述式回答をもとにしたスコアリングによる二次審査が実施されます。
出典:経済産業省「『SX銘柄2025』募集要領」p13,14,35
SX銘柄選考における評価の観点
SX銘柄選考においては、「価値観・長期戦略」「実行戦略」「KPI・ガバナンス」「実質的な対話・エンゲージメント」の4項目が評価されます。これらの観点に対し、過去の取り組み実績も踏まえて十分に実現可能性があるかという点が評価されます。特にPBR1倍の壁を乗り越えた経営・事業変革の取り組みが、重要視されます。SX銘柄では、過去・現在・将来の取組を総合的に評価するため、過去5~10年程度の実績も踏まえた、直近の実績・現在進行形の取組・将来の戦略の全てが総合的に評価されます。
出典:経済産業省「『SX銘柄2025』募集要領」p15,38,39
3.SX銘柄企業の取り組み事例
SX銘柄に選定された企業は、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。「SX銘柄2024」の選定企業から、何社かご紹介します。
味の素株式会社
味の素株式会社は、「アミノサイエンス」という独自の競争優位性を活かしたビジネスモデルを確立しており、経営戦略などの一貫性が確認できる点が評価されています。特徴的な取り組みとして、「企業価値向上に向けた長期的視点での重要課題特定」「目指す姿と人的資本の関係性可視化」「複数事業に共通する競争優位としての知的資本」などが挙げられています。また価値創造ストーリーとして「環境負荷を50%削減」「10億人の健康寿命を延伸」などの目標が掲げられ、強靭かつ持続可能なフードシステムの確立を目指しています。
出典:経済産業省「SX銘柄2024」p18-20(2024/4/23)
KDDI株式会社
KDDI株式会社は、自社が特定する重要課題が価値観・社会動向・ビジネスモデル・実行戦略などと整合している点が評価されています。価値創造に向け、通信技術を中心に安定した財務基盤などの強みを活かし、社会に提供する価値を企業価値向上に繋げるというストーリーが描かれています。特徴的な取り組みとして「事業共創のための企業連携」「目指す姿の実現に向けた人材戦略」「非財務情報に関するKPI設定」が挙げられており、自社だけでは不可能なイノベーションを生み出すために取引先、パートナーシップとの関係強化に注力している旨が強調されています。
出典:経済産業省「SX銘柄2024」p27-29(2024/4/23)
日本航空株式会社
日本航空株式会社は、長期戦略・ビジネスモデル・目指す姿に整合性があり、必要な人材戦略やDXを構築している点が評価されています。またこれらを実行していくためのプランが航空業界の抱える課題をふまえて計画されているため、価値向上の期待が感じられる点もポイントです。特徴的な取り組みとして「社会課題の把握からサステナビリティの機会とリスクについて機会・リスクを分析し、 外部環境の変化に応じ重要課題を特定」「KPIと連動した役員報酬制度」「投資家対話からの経営課題の発見・改善」が挙げられています。特に役員報酬について、ESGやCO2の取り組みと役員報酬を紐づけることは、企業統治の観点から有効だと述べられています。
出典:経済産業省「SX銘柄2024」p42-44(2024/4/23)
4. まとめ:SX銘柄企業に注目し、持続的な企業価値向上を目指そう
SX銘柄は2024年度からスタートした制度で、東京証券取引所上場企業の中からサステナビリティへ積極的に取り組む企業を選定するものです。今後の持続可能な企業成長には、各企業の経営戦略におけるサステナビリティの観点が重要であり、そうした企業は長期的な価値創造が見込まれる点を、広く投資家にアピールすることが主な狙いとなっています。各企業が社会課題と整合した事業活動をしていくことで、それらの課題の解決と企業の持続的成長が同時に実現することが期待されます。
SX銘柄企業の取り組みに注目し、サステナブルな企業経営のトレンドを理解し取り入れることで、自社の持続的な企業価値向上を目指していきましょう。