LEAPアプローチとは?基本から活用事例まで解説

 

LEAPアプローチについて、わかりやすく解説します。TNFDが提唱するLEAPアプローチは、企業が自社の環境情報を開示するにあたって有効性が確認されている手法です。LEAPアプローチを活用することで、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。

本記事ではLEAPアプローチやTNFDの概要、LEAPアプローチの各ステップ、LEAPアプローチを活用している日本国内企業の事例などについて取り上げます。

目次

  1. LEAPアプローチを提唱するTNFD

  2. LEAPアプローチの各ステップ

  3. LEAPアプローチを活用している企業事例

  4. まとめ:LEAPアプローチで、情報開示を有効なものにしよう!

1. LEAPアプローチを提唱するTNFD

LEAPアプローチは、TNFDという組織によって提唱されている手法です。TNFDとLEAPアプローチの意味について解説します。

TNFDとは

TNFDとはTaskforce on Nature-related Financial Disclosures の略称で「自然関連財務情報開示タスクフォース」を意味します。TNFDは2021年6月に発足し、自然関連リスクに関する情報開示フレームワークを構築することを目指しています。企業に対して、自社の事業活動が自然環境に及ぼす影響や依存度に関する情報開示や定量評価を求める動きが加速していることが、TNFD発足の背景です。

出典:環境省「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムへの参画について」(2021/12/21)

LEAPアプローチとは

LEAPアプローチは、TNFDによって開発された、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ手法です。 LEAPアプローチではTNFD情報開示に向けた準備として、スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏みます。 LEAPアプローチの実施は必須とはされていませんが、TNFDによって推奨されており、パイロットテストの結果からも有効とされています。

TNFDが推奨するLEAPアプローチとは

出典:環境省「LEAP/TNFDの解説」p3(2023/11/29)

LEAPアプローチが提唱される理由

LEAPアプローチは、先行するさまざまなフレームワークと整合しています。たとえば「自然資本プロトコル」「SBT」「GRI」など国際的な基準や評価方法が、LEAPアプローチと一貫性のあるフレームワークとしてTNFDによって紹介されています。またLEAPアプローチの開発にあたっては、世界中の240 を超える組織がTNFDに協力し、パイロットテストを繰り返しています。パイロットテストを通じ、正式な開⽰要件を持たない多くの組織でも、LEAPアプローチを使用することで自然関連のリスクの特定と評価に役立つことが明らかになりました。このようにLEAPアプローチは、汎用性と実用性に優れた方法として推奨されています。

出典:TNFD「Guidance on the identification and assessment of naturerelated issues: The LEAP approach」p3-7(2023/10)

2. LEAPアプローチの各ステップ

LEAPアプローチには、L・E・A・Pという4つのステップがあります。LEAPアプローチの各ステップについて解説します。

発見する(Locate)

Locateフェーズでは、自然に関連する潜在的な問題を「セクター」「バリューチェーン」「地理的位置」という3つのフィルターで絞り込み、優先順位をつけることが推奨されています。そのため、以下のような観点でチェックを行います。

L1

ビジネスモデルと

バリューチェーンの範囲


自社組織の活動は何か。

直接的操業している拠点はどこか。

L2

依存とインパクトの

スクリーニング


自然への依存やインパクトが中程度または高い可能性のあるものはどれか

L3

自然との接点


中程度または高い依存とインパクトを持つ可能性はどこにあるか。どの生態系と接点を持っているか。

L4

インパクトを受けやすい

地域との接点


生態学的に影響を受けやすい場所はどこか

こうしたアプローチを通じて、企業の活動において自然への影響がある事業領域や場所を特定します。

出典:環境省「LEAP/TNFDの解説」p8(2023/11/29)

診断する(Evaluate)

Evaluateフェーズでは、組織にとって潜在的に重要な自然への依存関係とインパクトを把握します。まずは重要性の高い課題から着手し、その後開示範囲を広げることも推奨しています。そのため、以下のような観点でチェックを行います。

E1

環境資産、生態系サービスとインパクトドライバーの特定


分析対象となる事業分野、ビジネスプロセス、活動は何か。どのような環境資産、生態系サービス、インパクトドライバーが、それらと関連しているか。

E2

依存とインパクトの特定


自然に対する依存やインパクトは何か。

E3

依存とインパクトの測定


自然への依存規模や範囲、マイナス/プラスのインパクトはどの程度か。

E4

重要性のインパクト評価


自社のどのインパクトが重要か。

こうしたアプローチを通じて、関連する環境資産と生態系サービス・ 組織の自然への依存関係とインパクト・潜在的に重要な依存関係と自然へのインパクトの分析、および重要な依存関係とインパクトなどのリストを作成します。

出典:環境省「LEAP/TNFDの解説」p9(2023/11/29)

評価する(Assess)

Assessフェーズでは、LocateおよびEvaluateフェーズで特定された自然への依存関係とインパクトに起因する、自然関連のリスクと機会の特定・測定・優先順位付けを行います。そのため、以下のような観点でチェックを行います。

A1 

リスクと機会の特定


自社の組織に関連するリスクと機会は何か。

A2

既存リスクの軽減とリスクと機会の管理の調整


既存のリスクを軽減し、リスクと機会を管理するプロセスと要素で、すでに適用しているものは何か。リスクと機会の管理プロセスと関連要素をどのように適合させることができるか。

A3

リスクと機会の測定と優先順位付け


どのリスクと機会が優先されるべきか。

A4

リスクと機会の重要性の評価


どのリスクと機会が重要であり、TNFDの開示提言に沿って開示する必要があるか。

このようなアプローチを通じて、 関連する自然関連のリスクと機会を列挙し、既存のリスクと統合させるためのプロセス概要を導き出します。

出典:環境省「LEAP/TNFDの解説」p10(2023/11/29)

準備する(Prepare)

Prepareフェーズでは、L→E→Aの評価を用いて特定された課題に、組織がどのように対応すべきか、TNFDの開示提言に沿って何を開示するかについて、社内の利害関係者との議論に反映させる必要があります。そのため、以下のような観点でチェックを行います。

P1

戦略とリソース配分計画

この分析の結果、どのようなリスクマネジメント、戦略および資源配分が決定されるべきか。

P2

ターゲット設定およびパフォーマンス管理

どのようにターゲットを設定し進捗度を定義・測定するのか。

P3

報告

TNFDの開示提言に沿って、何を開示するのか。

P4

公表

自然に関する開示はどこで、どのように提示するのか。

このようなアプローチを通じて、LEAPアプローチで特定された課題にどのように対応するか決定、目標を設定し、TNFDに沿った開示の作成と公表を行います。

出典:環境省「LEAP/TNFDの解説」p11(2023/11/29)

3. LEAPアプローチを活用している企業事例

日本でも多くの企業が、実際にLEAPアプローチをIRなどに活用しています。LEAPアプローチの活用事例をご紹介します。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は2024年6月、TNFDの情報開示フレームワークに基づいて、自社の事業活動が自然資本などに与える影響について情報を開示しました。情報開示にあたってはLEAPアプローチや、LEAPアプローチ同様TNFDが提唱する「シナリオ分析」を用いて、自社の自然関連の依存・影響、リスク・機会の分析が行われています。これによって、自社の事業活動が自然資本などに与える影響が、より多角的に伝わる内容になっています。

出典:ソフトバンク株式会社「TNFDの情報開示フレームワークに基づいた情報開示について」(2024/6/28)

株式会社セブン&アイホールディングス

株式会社セブン&アイホールディングスは、TNFDの枠組みに基づいた分析・開示に着手しています。その中で同社グループにおける自然関連の依存・影響 、リスク・機会の評価を、LEAPアプローチに沿って実施しています。2024年度上半期には、サプライチェーン上流の重要原材料を特定し、Locate、Evaluateに焦点をあてて分析しました。AssessとPrepareについても着手中です。

出典:株式会社セブン&アイホールディングス「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づく対応」

三井物産株式会社

三井物産株式会社は、「三井物産の森」(北海道/石井山林)を対象としたLEAPアプローチによる分析を、2024年2月に実施しました。LEAPアプローチの分析プロセスを通じて、石井山林において同社が実施している管理を継続したケースが、その他の方法で山林を管理するケースと比べて、生物多様性の保全や、森林の持つ公益的価値発揮(炭素貯留、土壌流出抑制、水源涵養)の観点で、ポジティブなインパクトを持つことが分かりました。

出典:三井物産株式会社「「三井物産の森」におけるLEAPアプローチ」

4. まとめ:LEAPアプローチで、情報開示を有効なものにしよう!

LEAPアプローチはTNFDが提唱する、自然関連課題を評価するための統合的な手法です。企業はLEAPアプローチを活用することで、自社が関係する環境への影響などを適切に把握し、有効な情報開示につなげることができます。投資家などから各企業へより一層の環境関連情報開示が求められている昨今、開示された情報の確からしさを担保する意味でも、LEAPアプローチは有効な方法だと言えるでしょう。

LEAPアプローチを活用して、環境関連の企業情報開示をさらに有効なものに高めていきましょう。

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