FTSEとは?サステナブル投資インデックスやESG評価方法などを解説

FTSEとはなにか、わかりやすく解説します。サステナブル(持続可能)な事業活動が求められる昨今、企業のESGに対する関心も非常に高まっています。投資を行う上で投資先企業のサステナビリティは、投資家にとって大変重要なポイントです。FTSEは投資家へさまざまなデータを提供していますが、その中でサステナブル関連の情報が多い点も特徴のひとつです。

本記事ではFTSEについて、その概要・サステナブル投資インデックス・日本における関連事例などをご紹介します。

目次

  1. FTSEとは

  2. FTSEのサステナブル投資インデックスについて

  3. 日本におけるFTSE関連事例

  4. まとめ:FTSEのインデックスやレポートを参考に、ESGの取り組みやサステナブル投資を進めよう!

1. FTSEとは

FTSEは投資家へ、ESGスコアなどのデータや分析ツールなどのデータ・ソリューションを提供しています。この記事ではFTSEの概要について解説します。

FTSEの概要

FTSE(フッツイ―)は、世界の主要経済紙であるFinancial Times社(FT)と、ロンドン証券取引所(London Stock Exchange)の合弁会社です。グローバル・インデックス・プロバイダーとして、世界中の投資家へ向けてESGスコアなどのデータ、業種分類(ICB)、銘柄コード(SEDOL)、分析ツールなどさまざまな情報、分析サービスを提供しています。

出典:日本取引所グループ「FTSE日本(FTSE Japan)指数について」p1(2002/3/15)

出典:日本取引所グループ「FTSE Russell, an LSEG business」(2024/8/24)

FTSEの提供するソリューション

FTSEでは投資家向けに、さまざまなソリューションを提供しています。主なものとして、以下のようなものが挙げられます。

主な分野

左記に含まれる

関連ソリューションの例

サステナブル投資インデックス・ソリューション

・FTSE Blossom Japanインデックス・シリーズ(ESG評価の高い日本企業のパフォーマンスを測定)

・FTSEダイバーシティ&インクルージョン・インデックス(世界の7,000社以上を対象に多様性や受容性の高い企業を特定)

・FTSE ESGインデックス・シリーズ(ESGファクターによる企業リスクを測定)

など

債権インデックス・ソリューション

・FTSE 世界国債インデックス(日本の国内投資信託におけるパフォーマンス評価のベンチマーク利用を目的)

・FTSE 世界 BIG 債券インデックス(世界の債券市場に関する広範なベンチマークを提供)

・FTSE 世界インフレ連動債券インデックス(インフレ指数に連動する固定利付きインフレ連動債のリターンを測定)

など

デジタル資産インデックス・ソリューション

・FTSEデジタル・アセッツ・ステーキング・インデックス・シリーズ(デジタル資産エコシステムにおける主要な合意メカニズム)

・FTSEグレイスケール・クリプト・セクター・インデックス・シリーズ(デジタル資産市場についての新しい考え方を提供し、拡大するクリプト ユニバースのパフォーマンスを測定)

・FTSEデジタル・アセット・インデックス&リサーチ(市場における暗号化されたデジタル商品のインデックス カバレッジを提供)

など

カスタム・インデックス・ソリューション

・債権インデックス・モジュール(インデックスのアイデアを迅速に調査・分析し、潜在的な新しいインデックスをバックテスト)

・ストラクチャード商品向けのインデックス・オーバーレイ(要望に応じて戦略的なインデックスを開発・提供)

など

このようにFTSEは革新的なインデックスを通じて、世界各地の投資家へ新たな機会を創出しています。

出典:FTSE RUSSEL「FTSE Russell のインデックス・ソリューション」
出典:FTSE RUSSEL「サステナブル投資インデックス」
出典:FTSE RUSSEL「債権インデックス・ソリューション」
出典:FTSE RUSSEL「デジタル資産インデックス・ソリューション」
出典:FTSE RUSSEL「カスタム・インデックス・ソリューション」

FTSEの特徴

FTSEはインデックスのアイデアや高精度のベンチマークを通じ、より良い投資判断、リスク管理、投資機会の活用などをサポートしています。その結果世界中の投資家から高い信頼を得ており、FTSEをベンチマークとして採用するファンドの運用資産総額は15兆9,000億ドル、FTSEのインデックスを利用する大手アセット・マネージャーの数は100社中94社、FTSEのインデックスを利用する大手投資銀行の数は10行中9行、世界の主要取引所15ヵ所に上場される指数連動型の先物・オプション商品数は約120に上ります。

出典:FTSE RUSSEL「変わり続ける世界のインデックス・パートナー」

2.FTSEのサステナブル投資関連ソリューションついて

FTSEの提供するソリューションの中でも、サステナブル投資関連のソリューションは特に充実しています。FTSEのサステナブル投資インデックスについて解説します。

サステナブル投資インデックス

FTSEのサステナブル投資インデックスには、先述した3つのシリーズを含め10以上のインデックス・シリーズがあります。その内のいくつかをピックアップしてみましょう。

FTSE Blossom Japanインデックス・シリーズ

ESG (環境、社会、ガバナンス) 評価の高い日本企業のパフォーマンスを測定するために設計

FTSE4Good インデックス・シリーズ

特定の ESGを実践する企業のパフォーマンスを測定するために設計

FTSE EPRA Nareit Green Index シリーズ

気候とサステナビリティ面で優れたパフォーマンスを示す、世界の世界の不動産株式およびREITのパフォーマンスを測定するために設計

FTSE ESG インデックス・シリーズ

投資目標と ESG 目標が整合する広範なベンチマークを投資家に提供できるよう設計

FTSE Women on Boards Leadership インデックス・シリーズ

ジェンダーダイバーシティの考慮を広く分散された市場ベンチマークに統合するように設計

サステナブル投資は今や、投資のメインストリームへと変化しています。FTSEは20年にわたる知見とともにサステナビリティ分野の中核を担い、サステナブル投資戦略の策定をサポートしています。

出典:FTSE RUSSEL「サステナブル投資インデックス」

ESGスコアについて

FTSEは企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを評価するために、「ESGスコア」というデータを提供しています。ESGスコアはオンラインでアクセスでき、47 カ国の先進国と新興国市場の8,000銘柄が含まれています。ESG スコアは環境・社会・ガバナンスという 3 つの柱で構成され、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) との整合性を保ち、SDGsの17 ゴールすべてが反映されています。

ESG スコアは、環境、社会、ガバナンスの 3 つの柱で構成

出典:FTSE RUSSEL「ESGスコア」

各種レポート

FTSEはサステナブル投資に関して、インデックスやデータだけではなく、さまざまなレポートも提供しています。たとえば2024年7月には、日本企業のESGスコア改善と課題についてのレポートが公開されました。この中でFTSEは、日本企業と欧州企業のESGスコアで測定したESG パフォーマンスの差は縮小し、特にE(環境)スコア)はほぼ同等に近づいていると指摘しています。一方で日本企業のS(社会)領域での情報開示率は欧州に遅れをとっており、課題が残るとも記載されています。

出典:FTSE RUSSEL「ESG開示の恩恵」(204/7/2)

3. 日本におけるFTSE関連事例

日本でもFTSEは投資家によって活用され、企業側でもFTSEの動向などに注目しています。日本におけるFTSE関連事例をご紹介します。

日本ペイントホールディングス株式会社

日本ペイントホールディングス株式会社は2022年4月に、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に採用されたことを発表しました。FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexは、各セクター(業種)において相対的にESGへの対応に優れた日本企業のパフォーマンスを反映するインデックスです。また低炭素経済への移行を促進するため、特に温室効果ガス排出量の多い企業については改善の取り組みが評価される企業のみが組み入れられています。同社ではグローバルの視点で特定したサステナビリティを巡る重要課題について、積極的に対応を進めるとしています。

出典:日本ペイントホールディングス株式会社「FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に選定」(2022/4/4)

株式会社博報堂DYホールディングス

株式会社博報堂DYホールディングスは2024年9月、気候変動対策や健康経営、SDGsに関する取組みなどが評価され、「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に2年連続で選定され、「FTSE Blossom Japan Index」「FTSE4Good Index Series」の構成銘柄にも選定されたことを発表しました。同社グループは、中期経営計画において「サステナビリティ経営」を取り組むべき重要なテーマの一つに位置付けており、今後もグループを挙げてサステナブルな経営環境を整備するとしています。

出典:株式会社博報堂DYホールディングス「博報堂DYホールディングス、ESG投資指標『FTSE Blossom Japan Sector Relative Index』の構成銘柄に2年連続で選定『FTSE Blossom Japan Index』『FTSE4Good Index Series』の構成銘柄にも選定」(2024/9/30)

年金積立金管理独立行政法人

日本の公的年金の積立金の管理・運営を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2022年3月に、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexに基づくパッシブ運用(ベンチマーク指標と連動した運用)を開始したことを発表しました。FTSE のESG評価を中心に企業の気候変動リスクや機会に対する経営姿勢を評価し、ESG 評価の透明性が高く、企業側にも評価手法が分かりやすく、市場の底上げが期待される指数であることなどを選定の理由に挙げています。

出典:年金積立金管理独立行政法人「国内株式を対象とした ESG 指数を採用しました」p1(2022/3/22)

4. まとめ:FTSEのインデックスやレポートを参考に、ESGの取り組みやサステナブル投資を進めよう!

FTSEは世界中の投資家から信頼されているインデックス・プロバイダーです。特にサステナブル投資の分野ではESGスコアなど透明性の高いデータや各種のインデックスを提供し、日本の年金運用においても活用されています。今後もグローバル市場においてはサステナブル投資が拡大していくことが予想され、FTSEへの注目がさらに高まることや、企業としてもESGに関する情報開示をさらに求められることが予想されます。

ぜひFTSEのインデックスやレポートを参考にして、ESGの取り組みやサステナブル投資を進めましょう。

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