コアカーボン原則とは?コアカーボン原則の基礎知識を解説

コアカーボン原則(Core Carbon Principle)は、カーボンクレジットの品質向上と信頼性を目的とし、企業の更なる脱炭素の取り組み向上を目指す上でぜひ知っておきたい要素です。炭素市場の拡大で、カーボンクレジット購入者にも適切な判断が必要となり、コアカーボン原則は、企業の脱炭素経営に有効な要素となります。

ここでは、コアカーボン原則の基礎知識や従来のカーボンクレジットとの関係性、コアカーボン原則の概要、基準などを分かりやすくご紹介します。

目次

  1. コアカーボン原則とは何か

  2. カーボンクレジットにおけるコアカーボン原則の重要性

  3. コアカーボン原則の概要

  4. コアカーボン原則の評価フレームワーク

  5. まとめ:コアカーボン原則の知識を深め脱炭素の取り組みを更に高めよう

1. コアカーボン原則とは何か

コアカーボン原則の導入により、より効果的に温室効果ガス排出削減を実現することができます。ここでは、コアカーボン原則についてご紹介します。

コアカーボン原則(Core Carbon Principles)とは?

カーボンクレジットを創出するにあたって、高品質なカーボンクレジットの要件のことを「コアカーボン原則(CCP:Core Carbon Principles)」と言います。コアカーボン原則は、従来のカーボンクレジットの要件に「持続可能な開発」「ネットゼロ移行」の要件が盛り込まれ、クオリティがより高いカーボンクレジット要件となっています。

出典:農林水産省『炭素クレジットを取り巻く世界の情勢』p,21.(2022/11/15)

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

2. カーボンクレジットにおけるコアカーボン原則の重要性

脱炭素に取り組む上で、カーボンクレジットは欠かせない要素となっています。ここでは、カーボンクレジットの意味や、コアカーボン原則が作られた背景をご紹介します。

(1)カーボンクレジットとは?

カーボンクレジットとは、再生可能エネルギー導入や省エネ技術、森林保護などで得た温室効果ガス排出削減量を取引できるシステムで、削減量をクレジットで購入できます。購入した側は、購入分の温室効果ガス排出削減量を自社の温室効果ガス排出削減量として取り扱うことができるので、脱炭素経営が実際には難しい企業などに利用価値があります。

また、提供する側は、クレジット収入により企業の資金向上の効果があります。ただ、クレジットの購入では温室効果ガスを実質的には削減できていないという課題もあります。

出典:日本経済新聞『カーボンクレジットとは 温暖化対策で民間市場拡大 』(2021/12/13)

(2)コアカーボン原則が作られた背景

世界は、2100年までに2.6℃気温が上昇するという懸念があり、パリ協定で定められた「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える」ためには、現在の温室効果ガスを早急に削減させる必要があります。スピーディーな対応を行なうためには、従来のカーボンクレジットよりもクオリティの高いカーボンクレジットの要件が必要であり、より信頼性の高いカーボンクレジット(コアカーボン原則)に投資することで、更なる温室効果ガス削減に貢献することが可能となります。

また、世界で「グリーンウォッシュ」が大きな問題になっていることも、コアカーボン原則が作られた理由のひとつです。グリーンウォッシュとは、環境対策を講じているように見えて、実は、実態が伴わない「見せかけの環境対策」のことで、近年の積極的な環境対策が求められる中、グリーンウォッシュの問題も増加しています。グリーンウォッシュは、利用者に大きな不信感を与えると同時に、環境対策の遅れも伴うため、利用者は本物の環境対策を見抜く必要があります。

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

出典:アスエネメディア『偽物のエコ「グリーンウォッシュ」を見分け企業の環境価値を高めよう』(2022/11/01)

3. コアカーボン原則の概要

高品質のカーボンクレジットを特定する手段となる、コアカーボン原則の概要をご紹介します。

(1)コアカーボン原則のガバナンス

コアカーボン原則のガバナンスの要素として、「効果的なガバナンス」「透明性」「トラッキング」「堅牢な独立した第三者による検証と検証」があります。カーボンクレジットの取り組みは、透明性、説明責任、継続的な改善、クレジットの品質保持において効果的な管理を行ない、誰もがそのクレジット情報を見ることができるものとしています。

また、緩和活動やクレジットを特定、記録、追跡を明確にした運用が望ましく、これらの管理を行なう上で、第三者による検証を通じた適正な管理が必要とされます。

出典: ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

出典:自然エネルギー財団『炭素クレジットの新たな役割と求められるインテグリティ』p,11.(2023/05/22)

(2)コアカーボン原則における温室効果ガス排出量の影響

温室効果ガス排出量による影響として、「排出削減量と排出量を確実な定量化」「二重カウントなし」「追加性」「永続性」があります。温室効果ガス排出削減量・除去量は、定められた方法で定量化し、二重カウントは行なわないことを原則としています。

また、カーボンクレジット収入を生み出すことを前提とした上で、追加的に温室効果ガス排出量削減・除去の効果が生まれることが望ましく、温室効果ガス排出量削減の取り組みで何らかのリスクが生じた場合は、そのリスクにも対応し、温室効果ガス排出削減の取り組みを長期的に進めていくものとしています。

出典: ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

出典:自然エネルギー財団『炭素クレジットの新たな役割と求められるインテグリティ』p,11.(2023/05/22)

(3)コアカーボン原則におけるサスティナビリティ

コアカーボン原則におけるサステナビリティの要素として、「ネットゼロ移行への貢献」持続可能な開発の利益と保障措置」があります。緩和活動の目的として、2050年の温室効果ガス排出量を実質ゼロ達成を目指すもの、また、持続可能な開発にプラスの効果を生み出し、社会と環境を守り続けるものとしています。

出典: ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

出典:自然エネルギー財団『炭素クレジットの新たな役割と求められるインテグリティ』p,11.(2023/05/22)

4. コアカーボン原則の評価フレームワーク

高品質のカーボンクレジットは基準を設けることで、更なる信頼性を得ることができます。その手法として評価フレームワークが設けられています。

(1)評価フレームワークとは

評価フレームワークとは、炭素市場の価値を向上させることを目的とし、目的が達成可能な数値を定めたものです。コアカーボン原則においては、カーボンクレジットの取り組みとカーボンクレジットのカテゴリーが、高品質なカーボンクレジットとして満たしているかを判断する基準となっています。

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles Assessment Framework』(2023/7/26)

(2)コアカーボン原則適格のCCPラベル

評価フレームワークの基準を満たしたカーボンクレジットは、CCP適格と判断されCCPラベルが与えられます。CCPラベルは、カーボンクレジットの信頼性を表し、カーボンクレジットの購入者が一目で高品質のカーボンクレジットだと判断することができるものです。CCPラベルのカーボンクレジットは、炭素市場の信頼性を高め、投資家の投資への意欲につながる効果が期待できます。

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles Assessment Framework』(2023/7/26)

5. まとめ:コアカーボン原則の知識を深め脱炭素の取り組みを更に高めよう

コアカーボン原則は、持続可能な開発とネットゼロ移行が盛り込まれた高品質なカーボンクレジットを創出するための要件であり、温室効果ガス排出量削減の取り組みを更に高める目的で設けられました。高品質と信頼性を確保するために、10項目の原則と評価フレームワークが定められており、基準をクリアしたカーボンクレジットには、信頼性のあるカーボンクレジットを評価するCCPラベルが与えられます。

ぜひ、CCPラベルのあるカーボンクレジットを購入し、更なる脱炭素の取り組みに貢献しましょう。

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024