偽物のエコ「グリーンウォッシュ」を見分け企業の環境価値を高めよう

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「グリーンウォッシュ」という言葉をご存じでしょうか。「グリーンウオッシュ」とは、企業が環境配慮を行っているように見せながら、実はその実態が見せかけだけのものであることを言います。過去にはメジャーな企業がこのグリーンウォッシュを行い問題視されました。

「グリーンウォッシュ」の言葉の持つ意味とその問題点、今後環境配慮を実行する企業として知っておくべき内容を詳しく解説していきます。

目次

  1. 環境配慮を騙る企業?「グリーンウォッシュ」とは何か

  2. 企業がグリーンウォッシュを行うことのリスク

  3. 企業のグリーンウォッシュをどう見分けるか?

  4. 中小企業だからこそ出来る本物の環境配慮

  5. まとめ:見せかけの環境配慮「グリーンウォッシュ」では企業の環境価値は高まらない

1. 環境配慮を騙る企業?「グリーンウォッシュ」とは何か

グリーンウォッシュの言葉の意味

「グリーンウォッシュ(Green Washing)」とは、汚れたものの表面を白く塗り、取り繕うことを意味する「ホワイトウォッシュ」と、エコや自然環境を連想させる「グリーン」を組み合わせた造語です。つまり「グリーンウォッシュ」の言葉の意味するところは、「環境に配慮しているように見せかけながらも、実は上辺だけの偽物である」ということになります

グリーンウォッシュのなにが悪いのか?

グリーンウォッシュの最大の問題点は、消費者に対する誤解を招くことです。ある企業が自社の活動をエコに配慮しているように見せかけながらも、その実態が伴っていなければ、それは消費者を騙す行為となります。消費者は「環境に良い」、という謳い文句を信用して商品を購入するのに、その実態が却って環境を破壊していると知ったらどう思うでしょうか。

企業経営において消費者の信頼を損ない、なおかつ環境破壊に加担しているということは大きなイメージダウンとなり、その後の経営存続にも関わる問題となります。

グリーンウォッシュの7つの問題点

グリーンウォッシュには7つの罪があると言われています。ここではその7つの問題点を具体的にご紹介します。

  1. 隠れたトレードオフの罪

すべてのプロセスにおいての注意を払わず、狭い属性にポイントを当て、その商品は環境に配慮していると謳うこと。

  1. 証明しないことの罪

その商品が環境に配慮していることを具体的に証明しないこと。

  1. 曖昧さの罪

「環境に良い」「自然にやさしい」などの曖昧な表現を使うことで、消費者に誤解を招くこと。

  1. 偽のラベルを崇拝する罪

存在しない第三者の認証があるかのようなラベルを貼り、誤解させること。

  1. 的外れの罪

嘘ではないが、消費者が求める環境配慮にとっては重要ではない、実際の役には立たないことでエコをアピールすること。

  1. 「かろうじてよい」罪

その製品のカテゴリーの中では良いとされることを主張することで、カテゴリー外のより大きな環境への影響から消費者の注意をそらし、誤解を招くこと。

  1. 嘘をつく罪

言葉通り、嘘をつき消費者を騙すこと。

出典:UL『Sins of Greenwashing』

2. 企業のグリーンウォッシュをどう見分けるか?

グリーンウォッシュを見抜く目を持つ

このように、一見、環境改善・配慮を行っているように見せかけながらも、その実態が伴っていないという企業の実例は多く存在します。今後SDGsをはじめとした世界の環境問題への意識はさらに高まっていき、消費者の商品を見る目や企業を見る目も、ますます厳しくなることは間違いありません。

上辺だけのエコをアピールする事業者を見抜く目を養っていくことが、ビジネスの上でも大変重要になっていくのです。

グリーンウォッシュ債権とは

まずグリーンウォッシュ債権とは何かと言うと、実際には環境改善が見込めない、または調達資金が環境を配慮する事業に適正に配当されていない、なのにグリーンボンド(環境事業に必要である資金調達のために発行される債券)であるということを称する債権のことです。

環境省では、グリーンボンドの環境配慮の効果と信頼性の確保、日本におけるグリーンボンドの普及を図ることを目標に、2017年にグリーンボンドのガイドラインを作成しています。

出典:環境省『「グリーンボンドガイドライン2020年版」の改訂、「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2020年版」の策定及び意見募集(パブリックコメント)の結果について』(2020.3.10)

グリーンウォッシュに惑わされない10のポイント紹介

それでは、ここでグリーンウォッシュをどのように見分ければいいのか、そのポイントをご紹介します。これはイギリスに本社を置くコンサルティング会社のFuterra社が中心になり発行された、グリーンウォッシュの見分け方「グリーンウォッシュの10のサイン」によるものです。

  1. 曖昧な言葉を使用している。

明確な意味のないキャッチフレーズで見せかけのエコを騙ること(例:「環境にやさしい」「エコフレンドリー」など)

  1. グリーン製品を開発するダーティカンパニー。

エコで効率的な電球を販売しながら、実は川を汚染する工場で作られたなど、実態が環境配慮を伴っていないもの。

  1. 環境によいイメージを与える画像を使用しているだけ。

花が美しく咲いているようなエコや自然を連想させる画像を使用し、あたかも環境に配慮しているかのように見せかけるもの。

  1. 実際の環境改善には無関係な主張。

環境配慮に対して一つの小さな属性のみを強調し、全体の環境改善にはなにも関係がない主張をすること。

  1. カテゴリー内での環境配慮の優位を主張。

残りの部分がかなりひどい場合でも、そのカテゴリー内でわずかに環境に優しいと宣言し優位を保つこと。

  1. 信頼が置けない。

そもそも環境に悪いものにエコなどの言葉をつけても、環境改善にはならないのにそのようにごまかすこと。(例:エコフレンドリーなタバコなど)

  1. 専門用語を多用している。

科学者でもない一般消費者が確認できない、または理解できない情報だけが公開されている。

  1. 架空の第三者機関をでっちあげる。

あたかも実際に存在する第三者機関などが認証しているかのようなラベルなどを商品に貼っている。

  1. 環境配慮に対する確実な証明がない。

例え正しくても、それを確実に証明しなければ信頼が置けない。

  1. 全くの嘘である。

完全に偽造されたクレーム、またはデータである。

先に挙げた「グリーンウォッシュの7つの罪」と重なる部分もありますが、これらを注意することで、グリーンウォッシュかそうでないかを見分けることが可能になります。

出典:BSR『Understanding and Preventing Greenwash「A Business Guide」』

3. 企業がグリーンウォッシュを行うことのリスク

上辺のエコは消費者の信用を失い社会的価値を落とす

現在、企業がエコを掲げることは、SDGsなどのトレンドに乗り注目を集めることができるので、利益を受けやすい状況があります。しかし、ただ時流に乗り、安易に実態の伴わない環境配慮を謳うことは危険です。企業を信用し、「環境に良いから」という理由で商品を購入したのに、その商品がグリーンウォッシュであったとしたら消費者はどう思うでしょうか。消費者は信頼を裏切った企業の商品を二度と購入しないでしょう。

企業は社会的信用を落とすなど、取り返しのつかないダメージを受けます。また消費者は「エコをアピールしていても信頼できない」となり、ほかのエコ商品までも購入しなくなる悪循環が生まれる可能性もあるのです。

環境適応型商品の開発が遅れる

企業が無駄にグリーンウォッシュを行い、消費者の信頼を損ねることは環境問題解決の遅延を招きます。企業が環境に適応した良い製品を作っても消費されなければ、企業側もそういった環境適応型商品を作らなくなり、ますます環境適応型商品の開発は遅れます。

「脱炭素」にとって重要な役割を果たす、再生可能エネルギーをはじめとした、グリーンエネルギーの普及促進にも支障を来す可能性があります。

いまこそ企業は安易なごまかしをやめて、上辺だけのエコではなく、しっかりとした環境改善に取り組み、消費者や世界との信頼を結ぶべきなのです。

4. 中小企業だからこそ出来る本物の環境配慮

中小企業の規模の強みを生かし環境に配慮した経営を!

グリーン化した経済を目指すためには、大企業だけではなくそれを支える中小企業の存在が不可欠です。環境に配慮した経営は今後ますます注目され、重要な役割を果たしていきます。中小企業はその規模を生かして、末端の社員に至るまで環境配慮への意識を高めることが可能です。その中で自社の生産を見直したり、再エネ利用を促進したり、自発的に自社の環境改善に取り組むことは、社会の環境負荷を低減し、さらには新たなビジネスや技術の開発にもつながっていくでしょう。

このように中小企業の強みを引き出し、環境改善や配慮に取り組むことは持続可能な社会を実現するための大きな力となります。

環境対策のイメージ図

出典:環境省環『境配慮経営ポータルサイト  環境と経営』

5. まとめ:見せかけの環境配慮「グリーンウォッシュ」では企業の環境価値は高まらない

見せかけだけの環境配慮「グリーンウォッシュ」について、実際の企業の実例も紹介しながら、様々な角度から解説しました。消費者がいかに厳しい目で企業の環境への取り組みを見ているか、ご理解いただけたのではないでしょうか。企業はこのような消費者の目に真摯に向き合い、なおかつ、世界の環境問題に関心を向けなくてはいけません。

環境に配慮した経営は、まさに企業のビジネスチャンスでもあります。ぜひ、グリーンウォッシュではない、真実の環境配慮への取り組みをはじめ、自社の環境価値を高めていきましょう。

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