アフリカの環境問題とカーボンオフセットへの取り組み

アフリカは、その壮大な自然と多様な生態系を持つ一方で、多くの環境問題に直面しています。森林破壊は、生態系のバランスを乱し、動植物の生息地を失わせるだけでなく、地域の気候にも影響を及ぼしています。

これらの問題に対処するための1つの解決策として、カーボンオフセットが注目されています。本記事では、カーボンオフセットの基本的な概念から、アフリカの企業や地域がどのようにこの取り組みを実践しているかの事例を詳しくご紹介します。さらに、アフリカの環境問題の現状、そしてその将来展望についても深く掘り下げて解説します。

目次

  1. カーボンオフセットの概要

  2. アフリカの現状(豊富な資源と環境問題)

  3. まとめ:アフリカが期待されている理由を理解すると共に、世界の環境へ目を向けましょう!

1. カーボンオフセットの概要

(1)カーボンオフセットとは?

カーボンオフセットとは、自らの温室効果ガスの排出を最小限に抑えると共に、それでもなお削減が難しい排出量について、温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入して埋め合わせるという考え方です。

出典:農林水産省『カーボン・オフセット』

(2)カーボンオフセットの取組事例

実際にカーボンオフセットに取り組んでいる例事例をご紹介します。

コベルコ建機株式会社

コベルコ建機株式会社は、森林所有者からカーボンクレジットを購入し、コベルコ建機株式会社が販売する機械にカーボンオフセットの権利を付与することで、機械を使用する会社もカーボンオフセットが出来るという新しい仕組みを構築しました。

日南町

日南町の道の駅では、1商品辺り1円のカーボンオフセットの権利を付与して販売するという取り組みを始めました。また、このクレジットは日南町の森林のものであるため、地域全体でカーボンオフセットに取り組むことが出来る仕組みとなっています。

出典:農林水産省『コベルコ建機株式会社』

出典:農林水産省『にちなん日野川の郷』

2. アフリカの現状(豊富な資源と環境問題)

(1)アフリカの天然ガス保有

2010 年から 2019 年にかけて、アフリカは世界の石油と天然ガスの生産量の 8%を占めており、世界の天然ガス資源量の 13%、石油資源量の 7%という多くの天然資源を保有しています。

天然ガスに着目すると、2010年から 2020年までの間に世界で発見されたガスの 40%がアフリカからのものであり、その他アフリカでは現在までに 5,000bcm を超える天然ガス資源が発見されています。

今後30 年間のガス資源の利用による CO2 排出量の累積は、現在のエネルギー部門からの排出量の約 4 カ月分に当たる約 1,000 億トンと見込まれており、アフリカの天然ガス部門は、石油部門よりは期待されている部門となっています。

出典:JOGMEC『IEAのアフリカのエネルギー見通し』p.5~7

(2)天然ガスとは?注目されている理由とは?

天然ガスの定義

天然ガスは、メタンを主成分とする化石燃料です。これは主に発電燃料や都市ガスの原料として使用されます。

環境への影響

石油や石炭など他の化石燃料と比べると、天然ガスを燃焼したときに排出する温暖化ガスが少ないため、環境対策としての利用が増加しています。

取引単位

天然ガスの取引には、「BTU(英国熱量単位)」という単位が主に使用されます。1BTUは、質量1ポンド(約0.45キログラム)の水の温度をカ氏1度分上昇させるのに必要な熱量を示しています。

輸送方法

天然ガスを運ぶ方法としては、パイプラインを使用する方法と、天然ガスをマイナス162度まで冷却して液体にし、タンカーで輸送する方法があります。日本は海に囲まれているため、液化天然ガス(LNG)として海外からの輸入が主流です。

出典:日本経済新聞『天然ガスとは メタンが主成分、環境対策で消費量増加』(2023/3/24)

(3)アフリカで官民の動き

2022年11月、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)において、アフリカやアラブ諸国の気候変動対策に関する取り組みが注目されました。

アフリカの気候変動対策

COP27では、アフリカにおける気候変動に対する「適応(干ばつ対策、洪水対策など)」に関する支援や事業が強調されました。

アフリカやエジプトの民間セクターの動きや、サウジアラビアなどのアラブ諸国の気候変動対策についても紹介されました。

アフリカの民間企業の動き

アフリカの企業が気候変動対策に取り組む意欲が確認され、多くのCEOが「アフリカビジネスリーダーによる気候に関する声明」に署名しました。

上記に加え、エジプトでは、グリーン水素プラント「エジプトグリーン」の計画が進行中であり、COP27での注目点として挙げられています。

出典:JETRO『アフリカで官民の動き、アラブ諸国も存在感』(2023/1/17)

(4)アフリカ ガボンのカーボンオフセットの取り組み

アフリカのガボンの環境相であるリー・ホワイトは、英連邦首脳会議において、カーボンオフセット市場でCO2で9,000万トン分のカーボンクレジットを発行すると発表しました。これは世界最大規模のカーボンクレジットの発行となります。このカーボンクレジットの創出は、国連気候変動枠組み条約のREDD+メカニズムによって実現されるもので、ガボンはこの枠組みの下でクレジットを発行することが認められる予定です。

ガボンは産油国でありながら、近年は石油埋蔵量が減少しており、経済多角化の方針を採っています。ガボンの森林はアマゾンに次ぐ世界第2位の熱帯林地域のコンゴ盆地の一部を形成しており、国土の88%を覆っています。政府は持続可能な森林経営を推進しており、2021年6月にはアフリカで初めてCO2排出量削減と吸収に貢献する森林保全の実績が評価されています。

出典:JETRO『世界最大規模のカーボンクレジット発行に着手』(2022/8/2)

(5)アフリカの将来展望

アフリカの人口は、2050年までに25.3億人に達すると予測されており、これは、世界の人口の約4分の1を占めることを意味します。また、アフリカの都市化率は急速に進んでおり、これにより新たなビジネスチャンスが生まれています。特に、小売、金融、不動産、インフラ、教育、医療などの分野での需要が高まっています。

また、アフリカではIT技術の進歩も経済成長を推進しており、特に、モバイル技術の普及は、金融サービスの普及、教育の改善、ビジネスの効率化など、多くの面でアフリカの社会経済が変革することが期待されています。

最後に、上述した通り、アフリカは自然資源が豊富であり、これが経済成長の大きな推進力となっています。アフリカは、鉱物資源、農業資源、エネルギー資源など、多様な自然資源を有しています。これらの資源は、アフリカの産業発展と経済成長を支えており、今後も注目が高まる地域であると予想されます。

出典:JICA『アフリカの成長を ビジネスの成長に』(p.2,5,7)

3. まとめ:アフリカが期待されている理由を理解すると共に、世界の環境へ目を向けましょう!

アフリカは壮大な天然ガスを含む自然と生態系を持ちつつ、環境問題に取り組んでいます。特に森林破壊は気候変動に影響を及ぼしており、カーボンオフセットがその解決策として注目されています。

カーボンオフセットは、温室効果ガスの排出を抑えるための手段として、多くの企業や地域で実践されています。例として、コベルコ建機株式会社は森林吸収系クレジットを購入し、日南町はCO2排出量をカーボンオフセットする取り組みを行っています。

また、アフリカのガボンは、世界最大規模のカーボンクレジットを発行する予定で、これは国連のREDD+メカニズムによるものです。アフリカの将来は、人口増加や都市化、IT技術の進歩、豊富な自然資源を背景に、経済成長が期待されています。

カーボンオフセット市場におけるアフリカの動向を理解し、新たなビジネスチャンスに繋げましょう。

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