カーボンオフセットとは?仕組みや種類について詳しく解説!

地球温暖化対策のひとつとして「カーボンオフセット」という考え方があります。「カーボン=炭素」を「オフセット=埋め合わせる」という単語の組み合わせとなりますが、その仕組みや種類、また取り組みによるメリットについて解説していきます。

また温室効果ガスの排出が問題となっている今、企業にとってもCO2の排出削減に向けた取り組みは欠かすことができません。脱炭素経営においてカーボンオフセットは重要となっておりますので、分かりやすく解説いたします。

目次

  1. カーボンオフセットとは

  2. カーボンオフセットの種類

  3. 企業がカーボンオフセットに取り組むメリットとは

  4. 【まとめ】カーボンオフセットの種類を理解し自社に適切な活動を!

1.カーボンオフセットとは

まず、カーボンオフセットがどのようなものでどんな仕組みになっているのかを理解しておきましょう。

カーボンオフセットとは

カーボンオフセットは排出することが避けられない温室効果ガスを植林、森林保護などの活動への投資や、他の団体が削減した分を購入することで埋め合わせることを指します。1997年にイギリスのNPO団体の取り組みからはじまり、現在ではアメリカ、ヨーロッパを中心とした先進国で活発に行われています。

カーボンオフセットと同じく「カーボンニュートラル」という言葉も聞かれたことがあると思いますが、これは温室効果ガスの排出削減とカーボンオフセットを行うことにより、温室効果ガスの排出量を「ニュートラル=プラスマイナスゼロ」にするという意味で自身の排出量の全てを埋め合わせた状態のことを指しています。

日本では2050年までのカーボンニュートラル達成を目標としています。

カーボンオフセットの仕組み

カーボンオフセットを行う上での進め方は以下のとおりです。

(1)準備

準備段階として検討しておくことはカーボンオフセットを行うにあたっての「目的」を明確にしておくことです。例としては「日本の温室効果ガス削減目標に貢献する」、「オフセットを通じて地元の社会活動に貢献する」、「自社の商品やサービスへの付加価値」などとなります。また、オフセットをおこなうクレジットの選定や管理体制なども明確にしておきましょう。

他にもカーボンオフセットの取り組みのうち誰が行ったか(埋め合わせたのは誰になるのか)を理解しておくことも大切です。これを「オフセット主体」といい、例えば製造者が商品に対して300㎏-CO2をオフセットした場合、この商品に関わる製造者、販売者、消費者がそれぞれオフセットを主張することになると1商品に対して900㎏-CO2のカウントとなり、3倍のオフセットが行われた状態となってしまいます。

このような状態を「ダブルカウント(トリプルカウント)」といいます。このような状況を避けるためにもオフセット主体を明確にしておく必要があるのです。

オフセット主体の設定の必要性

出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.17)

(2)排出量の把握

オフセットを実行するには現在の活動における排出量を把握する必要があります。自社の活動における排出活動を把握し、それを元に対象範囲を決め排出量の算定を行います。例えば製品・サービスではそのライフサイクル、企業活動ではサプライチェーンやバリューチェーンを考慮し、具体的に把握する必要があります。

算定式は「温室効果ガス排出量=活動量×排出係数」となり、使用した電力量、流通のための距離、排出した廃棄物の量などの活動量に単位あたりの温室効果ガス排出量である排出係数を掛け算します。

活動量と排出係数については実際に行われた活動から得る「実測値」の他、公的機関や業界団体などから公開されている標準値である「文献値」の使用も可能となっています。

標準排出原単位値データベース一覧出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.26)

(3)排出削減の取り組み

カーボンオフセットを行ううえで大切なことは「自ら排出削減を行わない事の正当化に利用しない」ということです。カーボンオフセットは温室効果ガス排出削減への取り組みとセットで考えなくてはいけません。

(4)オフセットで補う

削減しきれなかった温室効果ガスの排出量に合わせこれをオフセットすることになります。オフセットには「Jクレジット」という省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの活用によるCO2などの排出削減量や適切な森林管理によるCO2などの吸収量をクレジットとして国が認定する制度が使われます。

クレジットの調達・無効化は各種制度における登録簿内に口座を開設して購入したクレジットを自ら無効化口座に移転する方法と仲介業者やクレジット保有事業者との契約により無効化までを委託する方法の2種類となっています。

出典:経済産業省『中小企業のカーボンニュートラルへの投資促進に向けたJクレジット制度の活性化』(2022.4.28)

2.カーボンオフセットの種類

ここではカーボンオフセットの種類についてさらに詳しく解説します。環境省のガイドラインでは主な取り組みとして5つ紹介されています。

自己活動オフセット

企業の事業活動で排出される温室効果ガスを直接オフセットする方法で、温室効果ガスの削減に貢献する団体から販売される排出枠を購入し埋め合わせます。

自己活動オフセット

出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.8)

会議・イベント開催オフセット

コンサートやスポーツの大会、会議などのイベント主催者が開催に伴って排出される温室効果ガスを埋め合わせる取り組みです。会場の消費電力のオフセットや、出席者の移動、宿泊に伴う排出のオフセットなどが挙げられます。

会議・イベント開催オフセット

出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.7)

クレジット付製品・サービスオフセット

製品の製造・販売やサービスの提供を行う事業者が製品やサービスにクレジットを付し、購入者に日常生活に伴う排出のオフセットを支援する取り組みです。

クレジット付製品・サービスオフセット

出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.9)

オフセット製品・サービス

製品の製造、販売やサービス提供者が製品やサービスのライフサイクルを通じて排出量をオフセットした製品の販売・提供を行う方法です。

クレジット付製品・サービスオフセット

出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.6)

寄付型オフセット

製品の製造、販売やサービス提供者が消費者に対してクレジットの活用による地球温暖化防止活動への貢献、資金提供を目的に参加者を募りオフセットする方法です。販売時に売上の一部をクレジット購入に用いることを宣言したり、キャンペーンへのアクセス数に応じたクレジット購入などが挙げられます。

寄付型オフセット

出典:環境省『カーボン・オフセットガイドラインver2.0』(p.10)

3.企業がカーボンオフセットに取り組むメリットとは

では、企業がカーボンオフセットに取り組むメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。大きく3つのメリットが考えられます。

企業のイメージアップ

地球温暖化は世界での課題であり、社会での企業に対する温室効果ガス削減への取り組みは企業イメージに直結します。日本では環境問題に取り組む企業が参加する「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」、「RE100(Renewwable Energy 100)」、「SBT(Science Based Targets)」などへの加盟企業は世界トップクラスとなっています。この潮流の中でカーボンオフセットへの取り組みは企業イメージのアップにつながります。

他社との差別化

地球温暖化への取り組みは他社との大きな差別化が可能となります。現在は環境に配慮された商品の販売も多く、製品やサービスの販売の際に消費者への付加価値要素となるでしょう。

取引先への環境付加価値提供

環境問題への取り組みは大手企業ほど意識が高く、サプライチェーン・バリューチェーンに対しても取り組みを求める企業が多くなっています。いち早くカーボンオフセットに取り組むことは取引先へ環境付加価値の提供につながり、企業価値の向上が見込まれるでしょう。

4.【まとめ】カーボンオフセットの種類を理解し自社に適切な活動を!

カーボンオフセットへ取り組む企業は環境問題への取り組みのひとつとして今後も拡大していくことが予想されます。方法は様々ですので自社の現状や今後の方向性も考慮し、適切な対応を検討していく必要があります。ここでご紹介した内容を参考に環境問題対策に取り組んで下さい。

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