航空業界大手であるボーイング社のカーボンオフセットへの取り組み

ボーイング社は、航空業界大手として、環境への影響を軽減するために積極的な姿勢を示しています。ボーイング社が特に推進しているカーボンオフセットは、どうしても排出されてしまう二酸化炭素を他の方法で削減するための取り組みです。

ボーイング社はどのようにカーボンオフセットに取り組んでいるのかや、そもそもカーボンオフセットとは何か、ボーイング社以外の航空業界はどのような取り組みを行っているのかなど、業界の状況についても解説していきます。

目次

  1. カーボン・オフセットと航空業界

  2. 航空業界大手のボーイング社におけるカーボンオフセットに関する取り組み

  3. 航空業界全体のカーボンオフセットに関する動向や課題について

  4. まとめ:産業単位でカーボン・オフセットに取り組む姿勢が見られる

1. カーボン・オフセットとは?

近年、2050年に温室効果ガスの排出をゼロにするという目標に向けて、政府や企業が動いています。しかし、温室効果ガスの排出をいきなり無くすことは難しいのが現実であるため、「カーボン・オフセット(相殺)」という考え方が出てきました。

カーボン・オフセットとは、人間活動によって排出される温室効果ガスを、できるだけ排出量の削減を行ったうえで、どうしても排出されてしまう分を、省エネ設備や植林など、排出量に見合った削減活動に投資すること等により埋め合わせるという考え方です。 

カーボン・オフセットについてもっと詳しく知りたい方はこちらカーボンオフセットとは?仕組みや種類について詳しく解説!

政府はカーボン・オフセットを実行するために、省エネルギー設備や再生可能エネルギーの導入、適切な森林管理によるCO2の排出削減量や吸収量をクレジットとし、企業等の間で売買するJ-クレジット制度を導入しています。

カーボンクレジット

カーボンクレジットとは、企業や団体がCO2削減活動を行い、その成果をクレジットとして売買する仕組みです。購入者はこのクレジットを使用して、自らのCO2排出を相殺することができます。

カーボンクレジットは、森林の保全や植林を通じて、大気中のCO2を吸収する量を増加させることや省エネルギー技術の導入により、CO2排出を吸収する活動によって生成することが出来ます。

出典:環境省『J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて』

出典:J-クレジット制度『Jークレジット制度とは』

2. 航空業界大手のボーイング社におけるカーボンオフセットに関する取り組み

ボーイング社のカーボン・オフセットに対する具体的な対策について解説します。

(1)再生可能エネルギーの導入

ボーイングは、ワシントン州のレントン、サウスカロライナ州のチャールストン、アリゾナ州の大規模データセンターの工場を動かすための十分な再生可能電力(太陽、風、水力)を調達しており、ボーイングのエバレット工場のほぼ全ての電力を満たしています。

(2)エネルギーの節約

ボーイングの従業員は、製品の製造に必要なエネルギーの量を削減するための数百の節約のベストプラクティスを再現しており、具体的には、使用していないときに機器をオフにするなどの取り組みが行われています。

(3)風力と太陽光発電への取り組み

新しい再生可能エネルギーの調達により、2020年に温室効果ガス排出量が10%削減されています。

(4)責任あるオフセット

ボーイングは、2020年の運営排出と出張に関する残りの排出をオフセットすることで、環境悪化を最小限に抑えており、持続可能な戦略の一部として自主的にオフセットしています。

(5)航空炭素取引所 (ACE) への参加

ボーイングは最近、国際航空運送協会 (IATA) とXCHG社のCBL MarketsとのパートナーシップであるACEに公式に参加しました。

※ ACE は国際航空運送協会 (IATA) と XCHG 会社 CBL Markets とのパートナーシップであり、航空会社やその他の航空関係者が国際航空向けにカーボン オフセットを購入できるサービスを提供しています。

出典:BOEING『ボーイング、製造および作業現場からの二酸化炭素排出量実質ゼロを達成』(2020/12/22)

3. 航空業界全体のカーボンオフセットに関する動向、課題とCORSIAの役割について

航空業界がどのようにカーボン・オフセットに取り組んでいるかについて解説します。

(1)国際民間航空機関(ICAO)が定めたCORSIAという国際的な枠組み

国際民間航空機関(ICAO)が定めたCORSIAとは、市場メカニズムを活用するための制度で、2050年まで年平均2%の燃費効率改善と、2020年以降、GHG排出を増加させないことが目標とされています。

CORSIAは、新技術の導入、運航方式の改善、代替燃料の活用、経済的手法があります。CORSIAは2021年から2035年まで3つのフェーズに分けて実施され、それぞれのフェーズで対象国、義務量計算が異なります。ベースラインは2019年の排出量で、現在、88か国が参加表明しています。

出典:IGES『CORSIA(国際⺠間航空のためのカーボ ン・オフセットおよび削減スキーム) について』p.7,11

(2)参加国や対象者、オフセット義務量などの具体的な内容について

CORSIAは、国際民間航空機関(ICAO)が策定した、航空業界の温室効果ガス(GHG)排出量の削減に関する枠組みです。CORSIAに参加する国は、2021年からパイロット運用が開始され、各運航会社は定められたルールに沿ってオフセット義務量が割り当てられます。

オフセット義務量とは、2019・20年をベースに割り当てられます。また、CORSIAの適格な排出ユニットについては、CORSIAの審査をクリアする必要があり、現在8プログラムがあります。主要航空会社は、ICAOの方針に基づき対策を行い、CORSIAによるオフセット義務を満たすため炭素クレジットの活用を検討しています。

出典:IGES『CORSIA(国際⺠間航空のためのカーボ ン・オフセットおよび削減スキーム) について』p.11,21

4. まとめ:産業単位でカーボン・オフセットに取り組む姿勢が見られる

カーボンオフセットは、避けられない温室効果ガス排出を他の方法で削減する取り組みであり、ボーイングは再生可能エネルギーの導入、エネルギー節約、風力・太陽光発電の活用などを通じて、取り組みを進めています。

また、航空業界全体を通して、飛行機の運航という業務の性質上避けられないCO2の排出に対し、燃費の改善や新技術の導入、炭素クレジットの活用などを通してカーボン・オフセットに取り組む姿勢が見られます。

ボーイングは社内でのこまめな節電や再生可能エネルギーの活用に加え、自主的なカーボン・オフセットを通して、積極的に脱炭素に取り組んでいます。

この記事を通してカーボン・オフセットに対する理解を深め、カーボンクレジットの購入や植林など、自社にとって最適な脱炭素への選択肢を検討してみましょう。 

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