2023年の海洋温度が過去最高を記録!?地球温暖化の現状から対策への具体的な取り組みを解説!

海洋温度の過去最高記録は地球温暖化の深刻さを示しています。この記事では、海洋温度の概要、地球温暖化との関連性、地球温暖化への取り組みなどについて解説します。

目次

  1. 海洋温度の概要

  2. 近年の海洋温度に関するデータ

  3. 農業分野における地球温暖化への取組

  4. まとめ:海洋温度は地球温暖化と密接な関係があり、今後の取り組みが重要!

1. 海洋温度の概要

海洋温度の定義とその重要性と地球温暖化による影響に関する解説を行います。

(1)海洋温度の定義とその重要性

海洋温度とは、海の表面の水の温度のことを指しており、地球上の位置によって大きく変動します。一般的には、赤道に近い低緯度地域では高く、北極や南極に近い高緯度地域では低くなりますが、大気の運動、海流、地形、地球の回転、日照時間や季節などの要素により、海洋温度は日々変化しています。

海洋温度は、観測が比較的容易であり、海洋の状態をよく表しているため、気象学や漁業などの多くの分野で利用されています。海洋温度の変動は、海洋生物の生態系に影響を与え、気候変動の一因ともなりますので、海洋温度の観測と理解は、地球の環境を理解し、未来を予測する上で海洋温度は非常に重要な指標です。

出典:気象庁『海面水温』

(2)海洋温度と地球温暖化

海洋温度は、地球の平均気温の上昇に伴って上昇します。これは、大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの増加が原因とされています。温室効果ガスが太陽からの熱を吸収し、その熱を地球の表面に閉じ込めることで大気の温度が上昇します。さらにその熱を海が吸収するため海洋温度も上昇します。

そのため、海洋温度と地球温暖化には密接な関係があり、海洋温度の上昇は人間の地球温暖化の影響によるものだと考えられています。

産業革命以降 、人間は大量の化石燃料を燃やし、広大な森林を伐採し、その他多くの活動を通じて地球の大気中に熱を閉じ込め、二酸化炭素を排出してきました。この閉じ込められた熱の約1%は大気中に留まっていますが、その他の大部分の熱は地球の広大な海洋に吸収されています。そのため、過去二世紀に渡り、平均で約0.6°Cも温度が上昇し続けています。

海洋の温度上昇は、海洋生物、嵐の強度、海面上昇などに大きな影響を及ぼします。特に、海洋の上層部は温度上昇が最も速く、プランクトンから魚、クジラまでの多くの海洋生物が生息しています。これらの生物は、わずかな温度変化にも敏感で、サンゴなどは水温が1度上昇するだけでストレスを感じ、白化現象を引き起こすことがあります。  

出典:国立環境研究所 地球環境研究センター『地球温暖化と「水」』

出典:National Geographic『​Why are our oceans getting warmer?』

出典:NHK『"海の温暖化"なにが起きる?』(2021/7/2)

2. 近年の海洋温度に関するデータ

世界の海洋温度と日本の海洋温度の推移について、解説します。

(1)海洋温度が過去最高を記録

欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによれば、地球の平均海水温は、2016年の最高記録を更新し、20.96度に達しました。これはこの季節の平均を大きく超える数値です。

海洋は気候の調整に不可欠で、熱を吸収し、地球の酸素の半分を生成し、気象パターンを形成しているため、海水温の上昇は、二酸化炭素の吸収力を低下させ、大気中の温暖化ガスが増加する原因となります。

海洋が最も暖かくなる時期は、一般的には8月ではなく3月であるため、今後の海水温の上昇が予想され、多くの専門家や研究者は、現在の海水温の上昇に懸念を示しています。

出典:BBCNEWS『海水温が史上最高を更新、地球環境に厳しい影響』(2023/8/5)

(2)日本の海洋温度が過去最高を記録

上述で記載したような海洋温度の上昇は、アメリカだけでなく、日本でも測定されており、2023年8月に、日本の南を中心に海面水温が過去最高を記録しました。これは、東・西日本から日本の南海上にかけて太平洋高気圧が強く、暖かい空気に覆われ日射も強かったためです。

特に、関東南東方では29.3℃(平年差+1.6℃)、四国・東海沖では29.8℃(平年差+1.7℃)、沖縄の東では30.7℃(平年差+2.1℃)となり、解析値のある1982年以降で海面水温は年を通して、平年差も8月としては最も高くなりました。

これらの地域では、今後も9月下旬まで海面水温が平年よりかなり高い見込みです。海面水温の高い海域を台風が通過すると発達又は勢力を維持する傾向があります。

この海洋温度の上昇は、気候変動と密接に関連しており、台風の発生・接近に影響を及ぼす可能性があります。

出典:気象庁『日本の南を中心に海面水温が過去最高を記録』(2022/9/1)

(3)海洋温度の推移

日本近海における、2022年までのおよそ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+1.24℃/100年です。この上昇率は、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.60℃/100年)よりも大きく、日本の気温の上昇率(+1.30℃/100年)と同程度の値です。

海域別の海面水温(年平均)の上昇率は、日本の気温の上昇率と比較すると、黄海、東シナ海、日本海南西部、四国・東海沖で同程度、日本海北東部、三陸沖、関東の東、関東の南、沖縄の東、先島諸島周辺では小さく、日本海中部、釧路沖では大きくなっています。

日本近海の海面水温には十年規模の変動が見られます。全海域平均水温では、近年は2000年ごろに極大、2010年ごろに極小となった後、上昇しています。

海洋温度が上昇すると、豪雨や水害などの気候変動による災害が発生したり、魚や他の海洋生物へのストレスによる影響が生じる恐れがあります。例えば、水産分野ではホタテやウニなど生息地の変化により水産業への大きな打撃が予想されています。

出典:気象庁『海面水温の長期変化傾向(日本近海)』(2023/3/6)

出典:NHK『"海の温暖化"なにが起きる?』(2021/7/2)

3. 農業分野における地球温暖化への取り組み

2023年の海洋温度が過去最高を更新し、地球温暖化への対策が急務となっています。農林水産省は、施設園芸の省エネルギー対策やバイオマスの活用推進、再生可能エネルギーの導入促進など、具体的な取り組みを進めています。

また、温室効果ガスの排出削減技術の開発や研究成果の活用推進を通じたイノベーションの創出、森林減少・劣化に由来する排出の削減等への対応を含む国際協力も行っています。これらの取り組みは、地球温暖化の進行を抑制し、持続可能な社会を実現するために重要な役割を果たしています。以下に具体的な取り組みをまとめてます。

バイオマスの活用の推進

バイオマスの活用は、地球温暖化対策と地域の経済活性化を両立する重要な取り組みです。地域のバイオマスから経済的な価値の高い製品を生み出す技術開発が進められています。具体的には、バイオマスの特性に応じて、素材、熱、電気、燃料(バイオガス、燃料材、バイオディーゼル等)への変換技術を活用し、高度な利用や再利用を推進しています。

また、バイオガス発電施設の導入やバイオ液肥の利用促進による地域資源循環の取組も進められています。発電だけでなく、エネルギー効率の高い熱源として施設園芸等への利用拡大や木質バイオマスの熱利用・熱電併給による持続的活用のための地域の体制づくりも進められています。

再生可能エネルギーの導入促進

再生可能エネルギー源、例えばバイオマス、太陽光、風力、水力等は、発電時や熱利用時に温室効果ガスを排出しないという優れた特徴を有しています。これらのエネルギー源は、我が国の農山漁村において豊富に存在する資源であり、これらを持続可能な形で活用することが求められています。

具体的には、バイオマス発電・熱利用や小水力発電などの再生可能エネルギーとして活用しつつ、農林漁業者など地域主体の取組を拡大することにより、農林漁業の経営の改善や地域への利益還元を進め、農山漁村の活性化を図るとともに、温室効果ガス排出削減にも寄与していくことが重要です。

また、再生可能エネルギーの導入を契機として、地域農林漁業の健全な発展に資する取組を促進するため、営農型太陽光発電の取組推進や地域における再生可能エネルギー導入をサポートするための情報提供、相談窓口の設置等の措置を講じています。

農業の「脱炭素化」に向けた取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

URL:農業の「脱炭素化」に向けた取り組み〜持続可能な「食」を可能に~

出典:農林水産省『農林水産省地球温暖化対策計画』(2022/1-/27)p.61

4. まとめ:海洋温度は地球温暖化と密接な関係がある!CO2削減に積極的に取り組もう!

海洋温度の過去最高記録は地球温暖化の深刻さを示唆していますが、今後対策を取ることで未来を変えることができるため、温室効果ガスの削減や持続可能なエネルギー利用、海洋保護など、具体的な取り組みが求められています。国際的な協力や政策、企業の責任も重要ですが、私たちもできることがあるので、持続可能な未来のための取り組みを少しずつ行いましょう。

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