電気主任技術者とは?再エネの普及に伴い再注目の資格について解説

電気主任技術者について、わかりやすく解説します。再生可能エネルギー業界は、脱炭素社会実現に向けて市場拡大を見せています。日本国内でも太陽光・風力・バイオマスなどによる発電関連事業やプロジェクトが増加、それに伴い発電プラントの建設案件が増えています。そのため建設現場における施工や設備の管理・運用保守に欠かせない人材である、電気エンジニアやファシリティエンジニア、プラントエンジニアなどエンジニアの需要が高まっているのです。

そういったエンジニアのひとつとして、本記事では電気主任技術者の概要や、電気主任技術者を取り巻く環境、電気主任技術者と再生可能エネルギーの関係などについて取り上げます。

目次

  1. 電気主任技術者の概要

  2. 電気主任技術者を取り巻く環境

  3. 電気主任技術者と再生可能エネルギーの関係

  4. まとめ:規制緩和の方向性を注視しつつ、電気主任技術者のあり方について考えよう!

1. 電気主任技術者の概要

電気主任技術者は、経済産業省所管の国家資格です。電気主任技術者の概要について解説します。

電気主任技術者とは

電気主任技術者は、電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づき、電気工作物の安全確保のため、電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を行う者です。事業用電気工作物の設置者は、電気主任技術者を選任することが義務づけられています。電気主任技術者となるためには、電気主任技術者試験への合格が必要です。受験資格には特に制限はなく、受験申込書・受験案内が一般財団法人電気技術者試験センターで無料配布されています。

出典:経済産業省「電気主任技術者」

電気主任技術者資格の種類と必要性

電気主任技術者の資格は、取り扱うことができる電圧によって、第一種から第三種までの3種類あります。

第一種

すべての事業用電気工作物

第二種

電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物

第三種

電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物

(出力5千キロワット以上の発電所を除く)

電気主任技術者には、電気工作物における感電事故などを防止するなどの役割があります。たとえば電気業者従業員が、電気主任技術者への連絡なしに充電中のキュービクル内に立ち入り電気設備に接触したために感電死亡事故に至った事例などがあり、電気主任技術者は電気設備に関わる作業の事前連絡徹底や、不用意な充電部への接近禁止、絶縁用保護具の着用など基本ルールの徹底などをする必要があります。

出典:経済産業省「自家用電気工作物に関する最近の関係法令、電気事故等について」p11,46(2024/2)

2. 電気主任技術者を取り巻く環境

電気工作物の設置にあたっては電気主任技術者の選任が必要ですが、そこに課題が顕在化しています。電気主任技術者を取り巻く環境について解説します。

電気主任技術者の選任・委託状況

電気主任技術者の選任形態は、9割が外部委託です。また従事者の内訳は、電気保安協会が約5割、電気管理技術者協会が約2割となっています。両協会の年齢構成は50代以上が過半数と高齢化が進んでいるため、近い将来引退者の増加により、担い手不足が顕在化するおそれがあります。さらに電気主任技術者の外部委託に従事する者は、受託する電気設備の規模の合計に上限があります。電気保安協会および電気管理技術者協会所属者の多くが上限に近い規模を既に受託しており、電気主任技術者はさらにひっ迫する可能性が高いと言われてます。

出典:経済産業省「電気主任技術者制度について」p4-5(2023/10/16)

電気主任技術者の実務経験に関する課題

電気主任技術者の外部委託従事者に対しては、業務に従事する要件として、電気主任技術者免状を取得した後に、第一種3年・第二種4年・第三種5年の実務経験期間が求められています。これは業務の性質上、相応の知識・経験が要求されるとともに、委託者からの信頼を得る必要があるとの趣旨で設けられているルールです。この実務経験の期間については、課題が指摘されています。たとえば「実務経験期間は勤務日数を積算して算定されるが、日に何件点検に従事しても1日として扱われるため、実際の経験の量に応じた算定方法となっていない」「研修等で集中的に教育を受けて必要な技能を習得した場合には、実務経験期間の短縮を認めて欲しい」などの意見が聞かれています。

出典:経済産業省「電気主任技術者制度について」p11-13(2023/10/16)

電気主任技術者制度の今後の方向性

電気主任技術者の不足が懸念される一方で、外部委託従事に必要な実務経験の壁があるという現状に対し、制度のさまざまな見直しが進められています。たとえば「保安管理業務講習」の修了者は、加えて3年の実務経験を経ることにより外部委託に従事可能と認められていますが、さらに講習修了者が希望すれば1年分の実務経験に相当する実習を受講可能とし、その分実務経験年数を更に1年短縮可能とするという案が出ています。また設備容量が小さく構造が簡易な設備については、外部委託に従事する上で求められる実務経験年数一年減じることができる「条件付き受託」が制度化されていますが、保安管理業務講習修了者は条件付き受託制度を利用できない運用となっている点について、条件付き受託制度の利用を可能とする案なども議論されています。こうした運用の見直しは、育成者側の経済的な負担を軽減するとともに、新たな電気主任技術者の拡大につながることが期待されています。

出典:経済産業省「電気主任技術者制度について」p18,20,22,23,25(2023/10/16)

3. 電気主任技術者と再生可能エネルギーの関係

電気主任技術者の制度改定が検討される背景には、脱炭素へ向けたエネルギー政策も影響しています。電気主任技術者と再生可能エネルギーの関係について解説します。

再生可能エネルギーを巡る国内の現状

GX(グリーン・トランスフォーメーション)が世界的な潮流となっている現在、日本でも、再生可能エネルギーの導入拡大が必要不可欠となっています。一方で、電気事業法の硬直的な保安規制が、合理的な設備の維持管理の妨げになっているという点が指摘されています。自家用電気工作物における電気主任技術者選任義務もそのひとつで、事業者の保安力に関係なく対象設備や電圧・出力の上限が一律で定められていることや、1 人の電気主任技術者が複数の事業場を監督する場合、兼任する発電所の数が定められ、当該電気主任技術者が 2 時間以内に到達できなければいけないとされている点などが、再生可能エネルギー導入推進の妨げになっているという見方もあります。

海外では電気主任技術者のような資格者を選任する義務は課されておらず、設備点検の方法や頻度を細かく定めている規定もないことが、そうした意見に信ぴょう性をもたらしています。

出典:内閣府「再生可能エネルギーの導入拡大に向けた電気主任技術者制度等の在り方に関する提言」p1(2022/1/31)

産業保安規制の取り組み

経済産業省は、高度な保安を確保できる事業者は保安規程の届出を不要とし、定期安全管理審査の適用除外とすることなどを検討しています。このことは保安力が低い事業者により手厚く電気主任技術者を配分するという観点からも有効と考えられます。再エネ事業者からは、「外部委託が可能な電圧の上限規制」「2時間到着ルール」など影響の大きいルールの見直しも期待されています。

またデジタル庁では「構造改革のためのデジタル原則」が策定され、「書面、目視、常駐、実地参加等を義務付ける手続・業務について、デジタル処理での完結」「一律かつ硬直的な事前規制ではなく、リスクベースで性能等を規定して達成に向けた民間の創意工夫を尊重」などの方針が掲げられています。再エネ設備に対する電気保安規制についても、この原則に沿った規制形態に転換し、再エネ設備の保守管理業務の合理化を目指すことが重要です。

出典:内閣府「再生可能エネルギーの導入拡大に向けた電気主任技術者制度等の在り方に関する提言」p2-3(2022/1/31)

今後の方向性

今後再生可能エネルギーの普及拡大のためには、電気主任技術者選任義務などの妥当性の再検証が必要です。昭和 40 年の電気事業法施行当時に比べて電気事故が大幅に減少している状況に鑑み、「公共の安全の確保」という目的に合わない非合理的あるいは非科学的な規制は見直しが必要でしょう。また分散型である再エネ設備は従来の大規模電源と比べ、停止によって電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれも低く、また常時は無人であり感電リスクも低いなどの特徴がありますので、設備の形態に合った規制への見直しも求められます。

出典:内閣府「再生可能エネルギーの導入拡大に向けた電気主任技術者制度等の在り方に関する提言」p3-5(2022/1/31)

4. まとめ:規制緩和の方向性を注視しつつ、電気主任技術者のあり方について考えよう!

電気主任技術者制度は、日本の電力産業において安全確保に重要な役割を果たしてきました。しかし時代の変遷とともにルールと実態の乖離が指摘されるようになっており、電気主任技術者の人材不足が課題となっている中で、早急な規制緩和が必要となりつつあります。特に再生可能エネルギーの普及拡大を図るうえでは、この問題を解決することが、極めて重要だと言えるでしょう。

再電気主任技術者に関する今後の規制緩和の方向性を注視しつつ、再エネ導入促進も踏まえた電気主任技術者のあり方について考えてみましょう。

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