COP29とは?概要や動向などを解説!

COP29について、わかりやすく解説します。気候変動対策の情報において、よく目にする「COP」。世界中に様々な国が存在する中で、COPは国際的に統一した目標を掲げ取り組みを促す重要な位置を占めています。もちろん日本も、その枠組みの中で気候変動対策などに取り組み、政策を決定しています。

本記事ではそのCOPについて、概要や特に重要な決定事項、最新のCOP29やCOP30の情報、COPに関連した日本における各種取り組みなどを取り上げます。

目次

  1. COPの概要

  2. 代表的なCOPの内容

  3. 近年のCOPの動向

  4. 日本におけるCOP関連の取り組み

  5. まとめ:COP29に注目し、気候変動対策を推進しよう!

1. COPの概要

COPは気候変動対策などに関する、国際的なルール決定の場です。COPの概要について解説します。

COPとは

COPはConference of the Partiesの略で、日本語では締約国会議と言います。多くの国際条約の中で、加盟国が物事を決定するための最高決定機関として設置されています。最も頻繁に耳にするCOPは気候変動枠組条約に関するCOP(COP-FCCC)ですが、生物多様性についてのCOP(COP-CBD)、砂漠化対処条約についてのCOP(COP-CCD)などもあります。気候変動に関するCOPには、国連全加盟国が参加しています。さらに産業界や環境保護団体、研究所などから数多くのオブザーバーが出席して、数万人規模の会議となります。

出典:国立研究開発法人国立環境研究所「COP(コップ)とは?」(2002)

出典:資源エネルギー庁「あらためて振り返る、「COP26」(前編)~「COP」ってそもそもどんな会議?」(2022/3/3)

COPの目的

COPでは世界中の国々が集まって、気候変動などに関する問題や取組について話し合い、具体的な行動計画の策定や国際的な合意がなされます。気候変動問題など国境のない問題の解決には、地球規模での対処が必要なため、多国間での合意形成を進める場であるCOPは非常に大きな役割を果たしています。COPでは首相級・閣僚級の会合が開かれるだけでなく、学者、NGO、ビジネスリーダーなどによるイベントやセッションが行われます。また条約の目的達成に向けた締約国の対策の効果や進捗状況を評価することも、COPの大切な役割です。

出典:環境省「COP(コップ)ってなに? 気候変動に関するCOPを紹介」2023/10/30

COPの歴史

国連は1992年にブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」を開催し、そこで国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が採択されました。各国はこの条約で、「大気中の温室効果ガス濃度を安定させて、人間活動による気候システムへの危険な干渉を防ぐ」ことに合意しました。同条約が1994年に発効して以来、地球上のほぼすべての国々が参加する地球規模の気候サミットであるCOPが毎年開催されるようになりました。

出典:国際連合広報センター「今年のCOP27について、知っておくべきこと(UN News 記事・日本語訳)」(2022/11/4)

2. 代表的なCOPの内容

COPでは毎回国際的な決定が行われますが、その中でも特に重要なものをご紹介します。

COP3

1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)では、「京都議定書」が採択されました。この京都議定書は、先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目的を定めています。先進国及び市場経済移行国全体は「少なくとも5%削減」、主要各国の削減率は日本-6%、米国-7%、EU-8%、カナダ-6%、ロシア0%、豪州+8%、NZ0%、ノルウェー+1%となっており、全体を足し合わせると5.2%の削減とされています。

COP3で採択された京都議定書ですが、その実施にかかわる詳細なルールについて合意をする予定であった2000年のCOP6では一度交渉が決裂、さらに2001年3月にアメリカが京都議定書体制からの離脱を宣言し、有効性が危ぶまれることとなりました。日本は1990年比で2008~2012年に6%の温室効果ガスの排出量削減という目標は達成することができましたが、次の約束である第2約束期間(2013~2020年)には不参加となりました。このように京都議定書は気候変動対策としては不十分な結果となりましたが、京都議定書がなければ排出量はより大きくなっていたことは確実であり、京都議定書は一定の役割を果たしたと言われています。

出典:外務省「COP3」

出典:外務省「京都議定書の骨子」

出典:WWFジャパン「京都議定書とは?合意内容とその後について」(2010/9/14)

COP15

2022年12月にカナダのモントリオールで開かれた生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年までに地球上の陸域、海洋・沿岸域、内陸水域の30%を保護するという画期的な合意がなされました。この合意によって、世界中の人々が地球を守り、先住民や地域社会の権利を尊重する形で生物多様性の喪失を止め、陸地や海洋を保護・回復することの進展が期待されます。

日本においてはCOP15において採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえ、我が国の新たな生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本的な計画として「生物多様性国家戦略2023-2030」をCOP15翌年の3月に閣議決定しています。これは各国がCOP15を踏まえて、生物多様性国家戦略を策定・改定することが求められたことへの対応となります。

出典:国際連合広報センター「COP15:世界の生物多様性の3分の1を保護する「歴史的」合意で閉幕(UN News 記事・日本語訳)」(2022/12/28)

出典:環境省「『生物多様性国家戦略2023-2030』の閣議決定について」(2023/3/31)

COP21

2015年11-12月フランスのパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、新たな法的枠組みとなる「パリ協定」が採択されました。パリ協定においては世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)」「主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること」などが定められています。

その後のCOPでもパリ協定に関する詳細なルールが議論され、COP24では実施指針が決定、COP26ではGHG排出削減量を「クレジット」として国際的に移転する「市場メカニズム」に関するルールが決定し、こうしてパリ協定全体のルールブックが完成したのです。

出典:環境省「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書第11回締約国会合(COP/MOP11)の結果について」
出典:資源エネルギー庁「『COP28』開催直前!知っておくと理解が進む、『COP27』をおさらいしよう」(2023/11/24)

3. 近年のCOPの動向

COPは毎年開催されており、近年注目度もさらに高まっています。近年のCOPの動向について解説します。

【近年の注目COP】COP26

2021年10-11月英国のグラスゴーで行われた気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、「締約国に対し、今世紀半ばの『カーボンニュートラル』を求める。また、その経過点である2030年に向けた野心的な気候変動対策を求める」「すべての国が、排出削減対策がおこなわれていない石炭火力発電のフェーズ・ダウンや非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む努力を加速する」ことが決定されました。日本からも岸田総理の「我々が気候変動問題に向き合う時、誰一人取り残されることがあってはならない」というスピーチなど、積極的な発信が行われています。

出典:資源エネルギー庁「あらためて振り返る、「COP26」(後編)~交渉ポイントと日本が果たした役割」(2022/3/11)

最新のCOPの動向・COP29

2024年11月11-22日にアゼルバイジャンのバクーで気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開催される予定です。COP29では、気候資金に関する新しい目標設定、2035年削減目標に向けた機運醸成、炭素市場に関する詳細ガイダンス作りなどが期待されています。特に気候資金については「COP29は資金(ファイナンス)COPである」と言われるほど重要なポイントです。発展途上国が洪水や干ばつなど深刻な気候災害に対応しつつ、同時に温室効果ガス排出削減を進めていくためには巨額の資金が必要であり、各国の予算だけでは対応ができません。そのため発展途上国に必要な資金を国際的にどのように用意し提供するかが論点となります。

パリ協定が採択されたCOP21では、先進国が2020年までに年間1000億ドルの気候資金供与を達成し、それを2025年まで継続すること、さらに2025年以降の新しい資金目標を2024年中に合意することが決まっています。COP29はまさに、2025年以降の資金目標を決定する場となるのです。しかし「どれだけの量の資金支援が提供されるべきか」「誰が資金を提供すべきか」「誰が資金を受け取れるのか」といった点について国際的にも意見が分かれており、特に先進国と開発途上国間での主張には隔たりがあると言われています。COP29で野心的な資金目標を打ち出すことができれば、2025年2月までに提出することが求められている各国の2035年に向けた削減目標をより引き上げることにもつながるため、COP29で国際的な協力関係の土台を作ることができるか、注目されるところです。

出典:WWFジャパン「気候変動に関するCOP29会議について」(2024/10/11)

最新のCOPの動向・COP30

2025年11月にはブラジルのベレンで、気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が開催される予定です。2023年にブラジル大統領に就任したルーラ氏は、熱帯雨林の保護を目的として運用される「アマゾン基金」を再開させるなど積極的な環境政策を打ち出して、COP30の誘致に成功しました。開催地のベレンはブラジル北部のアマゾン玄関口にあたる場所です。COP30では、途上国における森林減少の抑制や森林保全活動についての議論が行われるかもしれません。

出典:独立行政法人日本貿易振興機構[「COP30開催国ブラジルの気候変動対策を探る」(2024/6/12)

4. 日本におけるCOP関連の取り組み

日本でも、COPで採択された目標などに基づく取り組みが進んでいます。日本におけるCOP関連の取り組みについて解説します。

日本の現状と取り組み

パリ協定の採択などをふまえ、日本でも2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」が宣言されました。また温暖化への対応は成長の機会ととらえ、経済と環境の好循環を作っていく産業政策「 グリーン成長戦略」が掲げられています。具体的な政策として、カーボンニュートラルに資する野心的な取り組みを支援する「グリーンイノベーション基金」、再エネや水素発電の推進、脱炭素事業に意欲的に取り組む地方公共団体等を支援する「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」、環境のための地球学習及び観測プログラム「GLOBE (Global Learning and Observations to Benefit the Environment)」などが挙げられます。

出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」p2,3,4,9.10(2021/6/18)

出典:環境省「地域脱炭素推進交付金」

出典:文部科学省「環境教育」

日本の将来展望と課題

日本が脱炭素化社会を目指すには、再生可能エネルギーの推進が重要です。そのため今後主力電源として、再生可能エネルギーの導入拡大・定着が見込まれますが、一方でコストダウンや国民負担の抑制などが課題となります。また産業界においては、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要があります。しかしカーボンニュートラルを実現するための技術開発や社会実装に伴う「グリーン成長」によって、2050年には約290兆円の経済効果と約1,800万人の雇用が見込まれるという試算もあります。

さらに日本には国際協力も求められます。一例として、開発途上国の温室効果ガス対策を支援する「緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)」に日本からは、15億米ドル(約1,540億円)を拠出しています。今後もこのような国際貢献は、日本にとってますます重要となっていくでしょう。

出典:資源エネルギー庁「昨今のエネルギーを巡る動向とエネルギー転換・脱炭素化に向けた政策の進捗」p24(2019/7/1)
出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」p2-4,29-31(2021/6/18)
出典:環境省「緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)について」

5. まとめ:COP29に注目し、気候変動対策を推進しよう!

2024年11月に開催されるCOP29では、開発途上国への気候資金提供が大きな論点となります。これまでもCOPではさまざまな重要事項が決定し、気候変動などに関する国際協力が進んできました。COP29でも意欲的な目標に各国が合意し、温室効果ガス削減に資する重大な決定が行われることへの期待が高まります。

COP29に注目し、その決定内容に従って気候変動対策を推進していきましょう。

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