カーボンニュートラルとは?SDGsとの関係や取り組みなど徹底解説
- 2023年12月15日
- SDGs・ESG
SDGs13番に関係する気候変動問題の深刻化により、世界各国がカーボンニュートラル実現に向けて取り組みを行っています。カーボンニュートラルを実現させるためには、企業の取り組みが欠かせません。この記事では、カーボンニュートラルの取り組みに関心のある法人の皆さまが知っておくべき、カーボンニュートラルに関する基本的な知識についてご紹介します。
目次
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カーボンニュートラルとは?SDGsとの関係
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SDGsに向けたカーボンニュートラルを実現させる方法
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カーボンニュートラルの実現に向けた世界各国の動向
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まとめ:【SDGs】カーボンニュートラルについての理解を深め、CO2削減に取り組もう!
1. カーボンニュートラルとは?SDGsとの関係
バイデン大統領と菅首相が就任したことで、アメリカや日本で気候変動問題への取り組みが加速し、カーボンニュートラルという言葉をよく聞くようになりました。ここでは、カーボンニュートラルの概念とSDGsとの関係についてご紹介します。
カーボンニュートラルとは?
菅首相は、就任後初となる所信表明演説において「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。資源エネルギー庁は「排出を全体としてゼロにする」とは、どうしても出てしまう量の温室効果ガスから、同じ量の温室効果ガスを吸収または除去することでゼロにすることであると説明しています。
出典:環境省『2050年カーボンニュートラルの実現に向けて』
出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)
カーボンニュートラルはSDGsへの取り組みである
企業がカーボンニュートラルに取り組むことは、SDGs目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」と目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」への取り組みにもなります。
温室効果ガス排出量増加による気候変動は、世界に深刻な被害を与えています。経済産業省によると、2019年度の日本における温室効果ガス排出量は12億1300万トンで、その内CO2排出量が占める割合が非常に高く11億600万トンです。電力を多く使用する企業がCO2を多く排出する化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えることは、気候変動を食い止める行動になります。
企業のカーボンニュートラルへの取り組みは、SDGs 目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」への取り組みにもつながります。SDGs 目標7を達成するための具体的な方法として、2030年までに誰もが安い値段で安定的に現代的なエネルギーを使えるようになること、2030年までに再生可能エネルギーを使う割合を増やすこと、2030年までに再生可能エネルギーの研究や技術開発への投資を促進することなどが示されています。
出典:外務省『7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに』
2. SDGsに向けたカーボンニュートラルを実現させる方法
カーボンニュートラルを実現させるためには、再生可能エネルギーへの転換や省エネ機器の導入などにより、CO2排出量を最大限に削減し、どうしても削減できなかった量をカーボンオフセットなどにより差し引きゼロにする必要があります。ここでは、カーボンニュートラルを実現させる方法についてご紹介します。
再生可能エネルギーへの転換
カーボンニュートラルを実現させるためには、再生可能エネルギーを最大限に活用する社会に変わらなければなりません。日本は2030年に再生可能エネルギー比率を22〜24%にすることを目標としていましたが、更なる政策対応による再生可能エネルギー導入を拡大することを新たな目標として掲げています。日本における2019年度の再生可能エネルギー比率は18%で、再生可能エネルギー発電設備容量は世界第6位です。
出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策のあり方』(2021/4/28)(p.9)
エネルギー消費量の削減
資源エネルギー庁は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして「化石エネルギーの使用を減らし、省エネを徹底し、再生可能エネルギーや水素など非化石エネルギーの導入を拡大していくこと」が重要であるとの見解を示しています。企業が省エネを徹底させるために、省エネ設備のさらなる普及と技術開発が求められています。
出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルの実現に向けた需要側の取組』(2021/2/19)(p.3.7)
カーボンオフセット
カーボンニュートラルを実現するために必要になるのが、省エネの取り組みと再生可能エネルギーの拡大、そしてどうしても排出されるCO2と同量のCO2を吸収または除去することです。この考えに基づいた制度としてカーボンオフセットというものがあります。カーボンオフセットとは企業がどうしても排出してしまうCO2排出量に見合う温室効果ガス削減活動に投資することで排出したCO2をゼロにするという考え方です。
3. カーボンニュートラルの実現に向けた世界各国の動向
世界各国が、独自に政策を打ち出し、カーボンニュートラルの実現を目指しています。ここでは、日本、アメリカ、EUの動向をご紹介します。
カーボンニュートラルの日本の動向
日本政府は、成長戦略会議やグリーンイノベーション戦略推進会議などで議論を重ね、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画の見直しなどを行い、カーボンニュートラルに取り組む方針を示しています。日本では、カーボンニュートラルを宣言する自治体や企業の数が増加しており、2020年12月における自治体の数は191、企業数は72社です。SDGsとカーボンニュートラルに取り組んでいる日本企業の事例をご紹介します。
(1)株式会社竹中工務店
大阪府に本社を置く大手総合建設会社です。カーボンニュートラル社会を実現させるために、2050年までに事務所や作業所からのCO2排出量をゼロにすることを目標に掲げています。
「人の感性や創造性を高め、自然を活かし、ライフサイクルCO2ゼロからカーボンニュートラルな社会の実現を目指す」をコンセプトに、様々な取り組みを行っています。再生可能エネルギーの取り組みとしては、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷で、地熱発電事業の開発をしています。
(2)平和紙業株式会社
東京都に本社を置く、ファンシーペーパーを扱う企業です。平和紙業株式会社は、森林認証紙、再生紙、非木材紙、間伐材紙、グリーン電力活用紙、カーボンオフセットを活用した紙、グリーン購入法対応紙などを販売しています。環境に優しい紙という持続可能な素材を社会に提供することで、CO2削減に取り組んでいます。
出典:HEIWA PAPER『平和紙業のSDGsへの取り組みについて』
出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルを 巡る国内外の動き』(2020/12/14 )(p.4.8.9)
カーボンニュートラルのアメリカの動向
2035年に電力脱炭素を達成し、4年間でEV(電気自動車)の普及や建設のグリーン化、エネルギー技術開発などの脱炭素分野に2兆ドル投資する計画を発表しています。建設のグリーン化とは、省エネ効果が高く、環境負荷を低減した建物を建設することです。
アメリカのアウトドア用品などを製造販売する「パタゴニア」のカーボンニュートラル実現を目指した農業の取り組みをご紹介します。パタゴニアは、2025年までのカーボンニュートラルの実現を目指し、CO2を排出しない環境再生型有機農業に取り組んでいます。有機肥料を使用することで、土壌中の農作物の根や微生物によるCO2の固定効果を高めたり、土を耕さないことでCO2排出量を削減しています。
出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルを 巡る国内外の動き』(2020/12/14 )(p.10)
出典:NIKKEI STYLE『地球を救うビール パタゴニアが食品に力を注ぐ理由』(2019/7/9)
カーボンニュートラルのEUの動向
EUは、2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする「気候中立」という目標を掲げています。目標を達成するために、10年間で官民で1兆ドルのグリーンディール投資を行う計画を発表しています。
ドイツの代表的な自動車メーカーであるダイムラーのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みをご紹介します。ダイムラーは、燃料電池自動車の研究開発に取り組んでいます。燃料電池自動車は、水素と空気中の酸素で発生させた電気を動力にして走る車で、CO2を一切排出しません。ダイムラー・トラックは、大型FCVトラックを開発しており、2023年にテスト走行が始まる見通しです。
出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルを 巡る国内外の動き』(2020/12/14 )(p.10)
出典:JIJI.COM『ダイムラー、燃料電池車に懸ける思い』
4. まとめ:【SDGs】カーボンニュートラルについての理解を深め、CO2削減に取り組もう!
この記事では、カーボンニュートラルに関心のある法人の皆さまが知っておくべき、カーボンニュートラルについての基本的な知識や取り組み方法、世界各国の方針などについてお伝えしました。
カーボンニュートラルは、SDGs 目標7と13につながる取り組みです。現在世界に深刻な影響を与えている気候変動問題を食い止めるためには、CO2を排出しないクリーンな再生可能エネルギーの使用の割合を増やすことが欠かせません。
世界各国で、企業を中心にカーボンニュートラルの実現を目指す取り組みが広がっています。企業ができることを考え、CO2排出量削減に向けた取り組みを始めましょう!