産業廃棄物って何?産業廃棄物の処理や廃棄物発電、補助金について解説!
- 2022年10月20日
- 補助金
産業や生活の中から出てくる「ゴミ」は廃棄物と呼ばれます。廃棄物の中でも市町村ではなく事業者に処理責任を持たせているものが産業廃棄物です。最近、産業廃棄物を使った発電が行われるなど注目されています。今回は廃棄物の分類や産業廃棄物の区分、現状、処理の流れや環境省が実施する廃棄物関連の補助金について解説します。
目次
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廃棄物の分類
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産業廃棄物の区分
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産業廃棄物の現状
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産業廃棄物処理の流れ
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まとめ:補助金を活用した廃棄物の資源化はますます進む
1. 廃棄物の分類
1970年(昭和45年)に制定された廃棄物処理法は、廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物に区分しています。この法律で廃棄物は市町村の責任で処理する一般廃棄物と事業者の責任で処理する産業廃棄物に区分されました。
一般廃棄物の中にある事業系ごみは、事業活動に伴って生じたゴミです。生ごみや紙くず、木くずなどの一般ごみ、食器棚や机などの粗大ごみという事業を営む際に発生したゴミで、産業廃棄物に含まれないものは事業系ごみとして処理されます。事業系ごみの処理は自治体が定めたルールに従わなければなりません。
2. 産業廃棄物の区分
産業廃棄物は、廃棄物処理法で事業者の責任で処理が義務付けられている廃棄物で、全事業に共通するものと特定事業で排出されるものに分けられます。それぞれの内容を確認します。
(1)全ての事業に共通する産業廃棄物
以下の廃棄物は全ての事業に共通する産業廃棄物とされています。
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燃え殻
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汚泥
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廃油
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廃酸
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廃アルカリ
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廃プラスチック類
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ゴムくず
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金属くず
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ガラス・コンクリート・陶磁器くず
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鉱さい
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がれき類
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ばいじん
この12の廃棄物については、どのような事業であれ、事業者の責任で処理することが義務付けられています。
(2)特定事業で排出される産業廃棄物
以下の廃棄物は特定事業で排出される産業廃棄物に指定されています。
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紙くず
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木くず
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繊維くず
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動物系固形不要物
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動植物性残さ
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動物のふん尿
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動物の死体
出典:e-Gov法令検索『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』
この7つの廃棄物も産業廃棄物に含まれます。いいかえると、事業で排出されるごみのうち、産業廃棄物に含まれないものは一般廃棄物の事業系ごみとして処理されます。
3. 産業廃棄物の現状
日本全体で産業廃棄物はどのくらい排出されているのでしょうか。
1996年に405万トンだった産業廃棄物の排出量は20年以上経過した2018年は379万トンとなりました。わずかに減少していますが22年間でほぼ横這い状態です。業種では電気・ガス・熱供給・水道業が26.1%で全体のおよそ4分の1を占めます。次いで農業・林業が21.4%、建設業が19.9%でそれぞれおよそ5分の1となっています。この上位3種で全体の約7割を占めています。
4. 産業廃棄物処理の流れ
排出された産業廃棄物はどのように処理されているのでしょうか。廃棄物のうち20%ほどは直接再生利用されています。直接利用の代表は「専ら再生利用」の4品目です。産業廃棄物のうち、古紙やくず鉄、あきびん類、古繊維などは「専ら再生利用」とされています。これらは処理業の許可が無くても取扱が可能で、率先してリサイクルされています。最も割合が多いのは中間処理量です。
中間処理とは廃棄物を焼却、脱水、粉砕、脱水、選別などすることです。焼却や脱水、粉砕することで廃棄物の量が減ります。また、選別することでリサイクルできるものを取り出したり、処理すべき方法ごとにごみを分けたりでき、作業を効率化できます。こうした工程を経て、産業廃棄物の52%は再利用され、45%は焼却などにより減量化されます。最終的に埋め立てなどに回されるのは3%まで減らされるのです。
5. 環境省が実施する廃棄物関連の補助金
環境省は産業廃棄物関連の補助金を出し、廃棄物処理を円滑に進めようとしています。代表的な補助金を3つ紹介します。
(1)循環型社会形成推進交付金
2004年度(平成16年度)に始まった補助金で、市町村が3R(リユース・リデュース・リサイクル)を総合的に推進するために設けられました。主な交付対象は以下の施設です。
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マテリアルリサイクル推進施設
(不燃物、プラスチック等の資源化施設、ストックヤード 等)
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エネルギー回収型廃棄物処理施設
(ごみ発電施設、熱回収施設、バイオガス化施設 等)
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有機性廃棄物リサイクル推進施設
(し尿・生ごみ等の資源化施設)
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浄化槽
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最終処分場
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既設の廃棄物処理施設の基幹的設備改良事業
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廃棄物処理施設における長寿命化計画策定支援事業
対象施設の3分の1〜2分の1の費用を補助します。
出典:環境省「概要説明 | 循環型社会形成推進交付金サイト」
(2)廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏構築促進事業
廃棄物処理施設を自立・分散型の地域エネルギーセンターとして整備することを支援するためにこの補助金は設けられました。事業は2015年度(平成27年度)から始まっており、令和2年度の予算案では259.5億円の規模です。
廃棄物処理施設をエネルギーの供給源とし、公共施設へのエネルギー供給や地域産業のエネルギー供給の一翼を担わせる構想です。災害時には廃棄物発電の電力を非常用電源として活用したいと考えています。
出典:環境省「廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏構築促進事業」
(3)廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業
出典:環境省「廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業」
この補助金は2つの目的からなりたっています。1つ目は廃棄物エネルギーを発電の燃料などとして有効活用することで、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を削減し、社会全体を脱炭素化させることを目的としています。
2つ目は中小企業を中心に使用されているPCB使用照明器具のLED化です。PCBは燃えにくく電気絶縁性に優れているためトランスやコンデンサなどの電気機器に広く使用されていました。しかし、有害であることが判明し1972年(昭和47年)以降、PCBは製造・新規の使用等を禁じられました。
PCB使用照明器具は災害時には有害な廃棄物となり、周辺環境に悪影響を与える可能性があります。脱炭素化をすすめるためにも、残存しているPCB使用照明器具を早期にLED化するため費用の一部に補助金を出します。
6. まとめ:補助金を活用した産業廃棄物の資源化はますます進む
今回は産業廃棄物の区分や現状、処理の流れや環境省が実施する産業廃棄物関連の補助金についてまとめました。産業廃棄物を含む廃棄物処理をめぐっては、公害対策の側面だけではなく、脱炭素の面でも注目を集めています。
環境省は廃棄物の資源化を推進するため、廃棄物を発電のエネルギー源として活用する事業に対する補助金やPCBのような危険な廃棄物の処理を促進する補助金を出すなどしています。脱炭素という大きな流れで考えると、省資源化やCO2の排出削減とともに廃棄物の資源化(リサイクル)もますます進むと考えられます。政治情勢が不安定化する中、国内にある廃棄物を資源として活用する動きはますます加速するのではないでしょうか。