バイオマス発電のメリットとデメリット ほかの再エネとの違いとは
- 2022年06月15日
- 発電・エネルギー
再生可能エネルギー(以降 再エネ)の中では、バイオマス発電は他の再エネとは少し事情が違います。他の再エネ発電は太陽光・風・水の流れる力など自然の力を主に利用して発電するのに対して、バイオマス発電は燃料を燃やします。
物を燃やせばCO2が排出されるのに、バイオマス発電が再エネのひとつとされ、今後の脱炭素社会に向けて注目されているのはなぜでしょう。
多様なバイオマスの種類やメリット・デメリットなどを確認しましょう。
目次
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バイオマス発電とは
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バイオマス発電のメリット
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バイオマス発電のデメリット
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バイオマス産業都市
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まとめ:バイオマス発電はこれからさらに普及する
1. バイオマス発電とは
バイオマスとは
バイオマスとはBIO(=生命・生物・生物学)とMASS(=質量)からなる言葉で、再生可能な生物由来の有機性資源で、化石資源を除いたものです。
生命と太陽エネルギーがある限り再生可能な資源で、持続的に生み出すことができるのがバイオマスです。
バイオマスの種類
バイオマスには様々な種類があり、ペレットのような固体燃料、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料などの液体燃料、メタンや熱分解ガスなどの気体燃料があります。
また、バイオマスは廃棄物系・未利用・資源作物にも分けられます。
出典:九州農政局『バイオマスとは?』を元にアスエネ作成
出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電』
バイオマス発電の方法
バイオマス発電では、資源によって発電方法が異なります。例えば廃棄物系バイオマスでは、家畜の排せつ物をバイオガス化したメタン、農業の茎葉・野菜くずなどから熱分解ガス化した熱分解ガスや、木質系廃棄物を固形燃料化したペレットを燃やしたり、バイオマスを直接燃やすことによって発電されます。
出典:環境省『廃棄物系バイオマスの種類と利用用途』
バイオマスは資源によって利用用途が様々です。用途によってそれぞれ違った加工がされ、燃料とされるほか家畜の飼料や農地のたい肥などとしても利用されます。
2. バイオマス発電のメリット
CO2を増加させない発電方法
一般的に、燃料を燃やせばCO2が発生しますが、なぜバイオマス発電は再エネとされているのでしょうか。
植物は光合成でCO2を吸収します。これを燃やすとCO2が発生しますが、このCO2は後にこの植物が更新されれば、その成長過程で再び吸収されます。よって、バイオマスのエネルギー利用は大気中のCO2濃度に影響を与えないとされています。
出典:林野庁『なぜ木質バイオマスを使うのか』
廃棄物の活用
廃棄物を原料としたバイオマスをエネルギーとして利用することで、ごみの削減になります。また、森林整備などの間伐材がエネルギーとして価値を持つことができれば、森林整備の推進につながります。
地域の未利用資源をバイオマスとして利用することで、資源の取集、運搬、バイオマスエネルギーの供給施設の管理・運営など新たな産業と雇用が生まれ、地域の活性化に貢献します。
出典:林野庁『なぜ木質バイオマスを使うのか』
既存の火力発電所、ごみ処理施設の活用
バイオマス燃料を既存の火力発電の燃料の一部として利用することにより、化石燃料の使用量を減らし、CO2削減ができます。
出典:九州電力『バイオマス発電』
また、ごみ処理施設自体の数は減少傾向にある中、ごみ処理の燃焼を利用した発電設備の数は増加傾向にあり、エネルギーの有効利用が進められています。
出典:環境省『廃棄物分野における地球温暖化対策について』p.30
電力の安定供給が可能
バイオマス発電は他の再エネとは異なり、発電に燃料が必要ですが、この燃料となるバイオマスは蓄えておくこともでき、需要に対して供給電力が足りないときや災害時などに備えることができます。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.22
広葉樹や早生樹を利用したエネルギー目的の森の開発により、国産の木質バイオマスの低コスト化、林業者の収益向上ができれば林業との持続可能な共生が確立され、安定した発電ができるようになります。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.25
3. バイオマス発電のデメリット
燃料の調達に課題
バイオマスは資源が広い地域に分散して存在するため、収集・運搬・管理にコストがかかります。
出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電』
また、バイオマス燃料を栽培・収集・加工・輸送する際に化石燃料を多く使ってしまえば結果として温室効果ガスの排出が多くなってしまう危険があります。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.27
燃料としての品質にばらつきがある
現状ではバイオマス燃料は発電所が長期契約により、燃料の品質などによらず一定の価格で取引していることが多く、発電の際に温度が安定せず設備利用率が低下したり、燃料品質を調整するための手間が発生したりする問題があります。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.26
生産・輸送システムが非効率
木質バイオマスを例に見てみると、燃料用途の木材は建築目的の木材生産の副次的な位置づけなので、生産・輸送システムが燃料向けには過剰で非効率です。
そのため大規模なバイオマス発電業者は高くても量を安定して確保できる輸入木材を利用する動きもあり、国内でバイオマス資源をいかに安定供給できるかが問題です。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.24
4. バイオマス産業都市
バイオマス産業都市とはバイオマス活用を産業化することに重点を置いた取り組みで、地域のバイオマス原料生産から収集・運搬・製造・利用までの経済性が確保された一貫システムを構築する取り組みです。
バイオマスを活用した産業創出と地域循環型のエネルギー強化により、バイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むら作りを目指す地域で、内閣府・総務省・文部科学省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省が共同で選定します。
出典:農林水産省『バイオマス産業都市について』p.1
北海道鹿追町の例では、既存の汚泥処理施設にバイオガスプラント・堆肥化施設を新設し、「鹿追町環境保全センター」を設置しました。バイオガスにより発電、バイオガスを生成する際の消化液は液肥・堆肥として農地に還元します。
発電の際の熱は付近の温室栽培、魚類の養殖にも利用され、環境に配慮した地域資源循環型の社会作りを推進しています。このバイオガスプラントによって次のようなメリットが生まれます。
(1)環境の改善
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酪農家周辺の環境改善
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臭気軽減、地下水・河川への負担軽減
(2)農業生産力の向上
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消化液・堆肥使用による農産物の品質向上
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糞尿処理の労働時間・コスト削減
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飼養規模の拡大
(3)地球温暖化防止
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バイオガス発電によるCO2削減
(4)循環型社会の形成
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地域のバイオマス資源の活用
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電気・熱・消化液の活用
(5)地域経済活性化の推進
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観光業のイメージアップ
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雇用創出
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新たな産業の創出(余剰熱を利用した温室栽培・魚類養殖)
出典:農林水産省『バイオマス産業都市について』p.13
5. まとめ:バイオマス発電はこれからさらに普及する
バイオマス発電は燃料の安定調達や品質、コストなど、まだ課題の多い分野ですが、エネルギー自給や災害時などにおける再生・復興力などの面で重要視されており、今後開発が進むと考えられます。
バイオマス産業都市の例でもわかるように、バイオマス活用をめぐってはこれから林業活性化や地域経済・雇用への波及効果が大きいと期待されており、企業によっては新規のビジネスの機会となる可能性もあります。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.22
地域の活性化や中小企業の振興といった面でも、政府はバイオマス発電を積極的に活用していく方針です。バイオマスに関連した知識を深めるとともに、あなたの企業にバイオマス燃料を採用できないか、バイオマスをめぐる一連の流れの中で参入の機会がないかなどを考えておきましょう。
出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』p.30