温室効果ガスによる地球温暖化の影響とは?世界の現状と合わせて解説

現在、世界的に環境問題が注目されており、その中でも「地球温暖化」が1番聞かれるワードではないでしょうか。この地球温暖化の要因が「温室効果ガス」と言われています。では、この温室効果ガスとはどのようなもので、地球温暖化にどんな影響を与えているのでしょうか。ここでは地球温暖化にともなう温室効果ガスの影響とその仕組みについて解説していきます。また、温室効果ガスの世界の現状も合わせてみていきましょう。

目次

  1. 温室効果ガスとは?

  2. 温室効果ガスが地球温暖化にあたえる影響

  3. 温室効果ガスによる地球温暖化で世界はどうなっている?

  4. 【まとめ】温室効果ガスにより地球温暖化はすすんでいる

1. 温室効果ガスとは?

温室効果ガスというと、「CO2(二酸化炭素)」と理解している人も多いと思います。もちろんCO2は温室効果ガスの代表といっていいと思いますが、正確には大きくわけて4つの物質によって構成されています。

  • CO2(二酸化炭素)

温室効果ガスの代表と言える物質で、日本では温室効果ガス全体の91.4%を占めています。特に、エネルギー起源となる化石燃料の焼却による発生がその大部分となり、工業化のすすんでいるアメリカ、ロシア、日本などの先進国では世界の排出量の大部分を占め大きな問題となっています。また、近年では途上国でも経済発展により、急速に増加しており、経済発展と温室効果ガス抑制の両立を実現する社会システムの構築が必要といわれています。

  • メタン

日本での温室効果ガスの構成比は2.3%となりますが、温室効果はCO2の約20倍となり、大気中濃度は1750年以降から150%増加し続け、現在も上昇しています。有機物が空気の少ない状態で発酵することで発生し、水田や、家畜の腸内発酵、糞尿などとなっています。また、埋め立てなどの人間活動からも発生しています。

  • フロン

オゾン層の破壊の原因として有名なフロンですが、二酸化炭素の1000倍以上の温室効果をもっています。1987年の「モントリオール議定書」の採択により製造、消費、貿易が規制され、1997年以降は減少傾向にあります。日本でも1988年に「オゾン層保護法」により製造、輸入が規制され、1997年には生産禁止となっています。現在は塩素を含まない「代替フロン」がエアコンや冷蔵庫の冷媒等に使用されています。

  • 一酸化二窒素

全身麻酔剤などに使用されるガスで、CO2の約300倍の温室効果といわれています。大気濃度は1750年以降20%増加し、現在も増加傾向になります。大気中の寿命が121年ほどと長く、農耕地の土壌や家畜の他、工業プロセスによる燃料の焼却などの人間活動による排出もあります。1999年より排出削減が行われています。

出典:国立環境研究所『2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』

以上の物質により形成される温室効果ガスですが実際、地球温暖化にどのような影響があるのでしょうか。

2. 温室効果ガスが地球温暖化にあたえる影響

温室効果というのは、地球の気温を維持する効果のある物質ということです。地球の気温は温室効果ガスにより、生物が生息できる気温が維持されています。温室効果ガスがない場合、地球の気温はマイナス19℃ほどになります。これは太陽からの熱が地球の地表を暖め、地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し、大気を暖めることにより、現在の平均気温である14℃を保っているのです。

 

出典:気象庁「温室効果とは

 

しかし、近年の温室効果ガス排出増加により、温室効果が増幅し、地球の平均気温は上昇し続けています。IPCCの第4次報告書によると、大気中のCO2濃度は、産業革命以前の1750年では280ppmに対して2013年では400ppmを超え、40%以上の増加となり、過去80万年間で前例のない水準に達しているとされています。

出典:文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省『IPCC第4次報告書要約』

地球温暖化による気温の上昇

IPCC第5次報告書では、2001年に発表された第3次報告書の1901年から2000年の100年あたりの気温上昇0.6℃と比べて、1880年から2012年で0.85℃と上昇幅が大きくなっていると報告されており、世界平均気温は1998年が最高値、2013年が2番目に高かった年となっています。

過去50年の気温の上昇は自然変動ではなく、人類が引き起こしたもので、このままでは今後さらに気温は上昇を続けることになります。IPCC第5次報告書ではさらに、温室効果ガス排出を最も抑えた場合でも、2100年末には0.3~1.7℃の上昇、最悪の場合4.8℃上昇すると予測しています。

出典:気象庁『IPCC第5次報告書気象庁訳』

地球温暖化による海面水位の上昇

IPCC第5次報告書では1901年から2010年の期間で世界の海面水位は0.19メートル上昇したと発表されています。現在も上昇を続けており、今世紀末には1986年から2005年と比較して0.26~0.82メートル上昇すると予測されています。

出典:環境省『IPCC第5次評価報告書の概要』(p41)

地球温暖化による海洋酸性化

海洋は人為的に発生したCO2の30%を吸収することにより、海洋酸性化をおこしているとされています。また、海洋のPHは工業化初期の1950年以降0.1減少したと発表されています。

出典:環境省『IPCC第5次評価報告書の概要』(p42)

北極などの海氷の変化

1979年から2012年の期間で、北極圏における年平均海氷面積の減少は10年あたり3.5~4.1%の割合であった可能性が高いとあります。21世紀中には北極海の海氷は縮小と薄くなり続け、北半球の積雪は減少する可能性が非常に高いと発表されています。

出典:環境省『IPCC第5次評価報告書の概要』(p44)

 

3. 温室効果ガスによる地球温暖化で世界はどうなっている?

では、温室効果ガスの影響による地球温暖化で世界の状況はどのように変化しているのでしょうか。

パリ協定

地球温暖化は世界各国が共通の「最優先で取り組むべき課題」として取り上げ、世界会議でも話し合いがおこなわれています。そこで現在最も重要な役目を果たしているのが2015年にパリで採択された「パリ協定」です。パリ協定には世界190ヵ国以上が参加し、2020年以降の気候変動に関する国際的な枠組が定められました。

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。

  • できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

パリ協定ではこの他に各国が具体的な数値目標を掲げ、2030年への中期目標や、長期的な目標へ取り組む内容となっています。

各種報道資料を元にアスエネが作成

出典:JCCCA『各国の温室効果ガス削減目標』

※日本は2021年に目標を46%削減に引き上げを発表しています。

出典:bloomberg『政府、30年度の温室効果ガス削減目標を46%に引き上げ』(2021年4月22日)

SDGs

SDGsは2015年の国連会議で採択された国際社会共通の目標で、17の持続可能な開発目標をゴールとして掲げています。この中にも地球温暖化についての項目が掲げられています。

  • 目標13 気候変動に具体的な対策を

具体的なターゲットとして、

  • すべての国々で、気候関連の災害や自然災害に対するレジリエンスと適応力を強化する。

  • 気候変動対策を、国の政策や戦略、計画に統合する。

  • 気候変動の緩和策と適応策、影響の軽減、早期警戒に関する教育、啓発、人的能力、組織の対応能力を改善する。

の3つがあり、気候変動に対する具体的な対策が求められています。

世界各国の温室効果ガス排出量

出典:環境省『世界のエネルギー起源CO2排出量(2018)』

2018年のデータでは、世界のCO2排出量は335億トンとなっており、最も多い中国が95億トン、次いでアメリカの50億トンとなっています。日本は10億トンで世界5位の排出量です。また、国民ひとりあたりの排出量ではアメリカ(15.1トン)、韓国(11.7トン)に続き、8.5トンと3番目に高い値となっています。中国、アメリカと比較すれば日本の排出量は少なく思えますが、他の190ヵ国からみれば「排出大国」と言われざるをえません。

今後の日本における温室効果ガス削減への取り組みは世界的にみても注目されるポイントとなるのではないでしょうか。

4. 【まとめ】温室効果ガスにより地球温暖化はすすんでいる

  • 温室効果ガスはCO2(二酸化炭素)・メタン・フロン・一酸化二窒素などからなり、エネルギー起源となる化石燃料の焼却による二酸化炭素の排出量の増加が問題となっている。

  • 温室効果ガスは、地球温暖化による平均気温の上昇・海面水位の上昇・海洋の酸性化・北極などの海氷への影響の原因と言われ排出削減が求められている。

  • パリ協定・SDGsなどの世界会議で削減に関する世界的な取り組み目標が定められている。

  • 日本のCO2排出量は世界で5番目に多く、ひとりあたりの排出量は世界で3番目となっており、「排出大国」として積極的な削減への取り組みが求められている。

 

温室効果ガス削減による地球温暖化対策は世界全体の使命であり、政府だけでなく、企業・個人での取り組みも重要となるでしょう。

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