燃料費調整単価とは?制度の内容や電気料金との関係まで徹底解説

毎月の電気料金の請求書に「燃料費等調整単価」という項目があります。毎月の電気料金に含まれる燃料費調整額は化石燃料の価格により変動します。化石燃料の価格が高騰すれば、燃料費調整額も高くなります。

毎月の電気料金を節約したいとお考えの企業の皆さまは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用などの取り組みが欠かせません。この記事では、燃料費調整制度の目的とこれまでの歴史、燃料費調整単価の考え方や推移など、法人の皆さまが知っておくべき知識をご紹介します。

目次

  1. 燃料費調整制度に関する基礎知識

  2. 燃料費調整単価に関する基礎知識

  3. 燃料費調整単価の推移

  4. まとめ:燃料費調整制度や燃料費調整単価についての理解を深め、電気料金を節約しよう!

1. 燃料費調整制度に関する基礎知識

燃料費調整制度は1996年に制定された制度ですが、その後2009年に見直しが行われました。ここでは燃料費調整制度がどのような目的で誕生したのか、これまでの歴史についてご紹介します。

燃料費調整制度の目的

燃料費調整制度は、市場や為替など外部要因による原油や石炭、LNG(液化天然ガス)の価格の変動から事業者を守るために1996年に導入されました。

化石燃料の調達価格が上がると燃料調整単価は高くなり、逆に調達価格が下がると燃料費調整単価は低くなります。燃料費調整制度のもと決定された金額は、毎月の電気料金の中において、燃料費調整額という名目で電気の利用者全てが負担することになります。

出典:資源エネルギー庁『月々の電気料金の内訳』

燃料費調整制度の歴史

燃料費調整制度は1996年に制定されましたが、2009年に制度の見直しが行われています。見直しが行われた背景には、前年度における化石燃料価格の急激な高騰がありました。

見直しの目的は、化石燃料の価格の変動をより迅速に燃料費調整額に反映させることで、これまで3ヶ月スパンだった料金反映までの期間が最短2ヶ月に変更されています。

出典:資源エネルギー庁『電気・ガス料金についてのお知らせ(原燃料費調整制度の見直しについて)

2. 燃料費調整単価に関する基礎知識

燃料費調整額は、燃料費調整単価にその月の電気使用量を乗じることで決定します。ここでは、燃料費調整単価の特徴や算定方法、再エネ賦課金との違いなどについてご紹介します。

燃料費調整単価の算定方法

毎月の燃料費調整額は、燃料費調整単価に1ヶ月の電気使用量を乗じた額です。つまり毎月の電気料金は、燃料費調整単価やその月の電気使用量により変わってくることになります。燃料費調整単価は、原油と石炭、LNGをそれぞれ、3ヶ月間の貿易統計価格から平均燃料価格を算定し、基準燃料価格と比較することで自動的に調整されます。電気料金として反映されるのは2ヶ月後です。

出典:資源エネルギー庁『燃料費調整制度について』

燃料費調整単価と再エネ賦課金の違い

電力量料金単価に1ヶ月の使用量を乗じた額から燃料費調整額を足した(または差し引いた)額に、基本料金と再エネ賦課金を足した額が毎月の電気料金として請求されます。毎月の電気料金として徴収されるため、燃料費調整額と再エネ賦課金の違いがよく分からないとの声をよく耳にします。燃料費調整額と再エネ賦額金には次のような違いがあります。

(1)燃料費調整額は国が一律に定めるものではない。

再エネ賦課金が、国が一律に定めた買取単価により算定されるのに対して、燃料費調整額は化石燃料の価格により変動する燃料費調整単価により算定されます。原油や石炭、LNGの使用割合は電力会社によって異なるため、燃料費調整単価は電力会社により異なります。

(2)燃料費調整額はマイナスになることもある。

再エネ賦課金はマイナスになることはありませんが、燃料費調整額はマイナスになることがあります。

基準となる燃料調達価格は基本料金や電力量料金に含まれているため、その基準と比較し、調達価格が上がると燃料費調整額はプラス、下がるとマイナスになります。

多くの電力を使用する企業は、燃料費調整額がプラスの時は電気代高騰の影響を受けやすくなるので、再エネ発電を積極的に活用するなどして電力使用量を削減しましょう。

出典:資源エネルギー庁『月々の電気料金の内訳』

3. 燃料調整単価の推移

燃料費調整単価は実際にどれくらいの価格なのか、最新版となる2021年度の単価とこれまでの推移についてご紹介します。

2021年度の燃料費調整単価

電力会社により原油、石炭、LNGの使用割合が異なるため、燃料費調整単価も電力会社により異なります。また燃料費調整単価は、契約している電気供給条件(特別高圧・高圧・低圧)によっても異なります。新電力ネットによると、2021年7月の燃料費調整単価は以下のようになっています。

  • 北陸電力:特別高圧−0.15円/kWh、高圧−0.15円/kWh、低圧−0.16円/kWh

  • 東京電力:特別高圧−2.92円/kWh、高圧−2.96円/kWh、低圧−3.06円/kWh

  • 中部電力:特別高圧−4.09円/kWh、高圧−4.15円/kWh、低圧−4.33円/kWh

  • 関西電力:特別高圧−0.53円/kWh、高圧−0.54円/kWh、低圧−0.56円/kWh

  • 九州電力:特別高圧−1.05円/kWh、高圧−1.07円/kWh、低圧−1.12円/kWh

出典:新電力ネット『燃料費調整単価の推移』

燃料費調整単価の推移

燃料費調整単価は、原油価格の高騰や下落、電力会社ごとの原油の使用割合などの要因により大きく影響を受けます。

資源エネルギー庁によると、原油価格の影響も時代ごとに波があります。1970年度に2度起きた石油ショックをピークに原油価格は減少しており、かつ日本も高騰リスクを踏まえ原油の輸入量を減らしたため、原油価格高騰による影響を受けにくくなりました。しかし東日本大震災以降、原子力発電停止による原油の需要が増加したため、再び原油の輸入量が増加しています。

直近の変化をみると、2014年度に原油価格が下落したため、原油輸入金額が2013年度比で20%も減少しました。2015年度はさらに原油価格が低下し、原油輸入金額は2014年度比で38%減少しています。

2017年度に原油価格が上昇していますが、2019年度から緩やかに下がり、その後緩やかに上昇するも燃料費調整単価はマイナスを維持しています。

国産と輸入原油供給量の推移
出典:資源エネルギー庁『第3節 一次エネルギーの動向』

4. まとめ:燃料費調整制度や燃料費調整単価についての理解を深め、電気料金を節約しよう!

法人の皆さまが知っておくべき燃料費調整制度や燃料費調整単価に関する基礎知識についてご紹介しました。燃料費調整単価がマイナスになると電気代は安くなりますが、原油や石炭、LNGの価格が高騰すると、電気代は高くなります。

毎月の電気料金を抑えるためには、再生可能エネルギーの活用をするなど、化石燃料発電による電気に頼らない取り組みが必要になります。ぜひ今一度、自社の使用している電力を見直して見ましょう。

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