エンジン車でも使えるカーボンニュートラル燃料とは?

エンジン搭載車の燃料として使えるカーボンニュートラル燃料に、大きな注目が集まっています。カーボンニュートラル燃料とはどのような概念で、なぜ注目されているのでしょうか。この記事では、カーボンニュートラル燃料に関心がある法人の皆さまが知っておくべき、カーボンニュートラル燃料に関する基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. カーボンニュートラル燃料とは?

  2. カーボンニュートラル燃料の種類と活用法

  3. カーボンニュートラル燃料の課題

  4. まとめ:カーボンニュートラル燃料への理解を深め、脱炭素に取り組もう

1. カーボンニュートラル燃料とは?

エンジン搭載車にも使用できるカーボンニュートラル燃料とは、どのような燃料なのでしょうか。カーボンニュートラル燃料の概念や、カーボンニュートラル燃料が注目される背景についてご紹介します。

カーボンニュートラル燃料とは?

カーボンニュートラル燃料は、合成燃料と呼ばれている燃料のことです。合成燃料は、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成することにより製造されます。このうち再エネ由来のH2を用いた合成燃料は、e-fuelとも呼ばれています。発電所や工場などから排出されたCO2を利用することから、カーボンニュートラルな燃料であると考えられています。将来的には、カーボンニュートラル実現の鍵を握る技術であると期待されているDAC技術により回収されたCO2が使われることが想定されています。DACはDirect Air Captureの略称で、大気中のCO2を直接吸収することで、大気中のCO2の量を削減することを目指しています。

合成燃料におけるCO2の再利用のイメージ

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)

カーボンニュートラル燃料が注目を集める背景

グリーン成長戦略において、自動車・蓄電池分野における目標として、2035年に乗用車の新車販売を電動車100%にすることが掲げられています。しかしこの目標を達成することは難しく、日本がカーボンニュートラルを実現するためには、エンジン搭載車にカーボンニュートラルな燃料を供給できるようにすることが重要であると考えられます。

出典:経済産業省『グリーン成長戦略(概要)』(2021/6/18)(p.1)

2. カーボンニュートラル燃料の活用法

カーボンニュートラル燃料は、製造方法によりいくつか種類があります。カーボンニュートラル燃料にはどのような種類があるのかや、どのように活用することができるのかについてご紹介します。

カーボンニュートラル燃料の種類

CO2とH2から製造されるカーボンニュートラル燃料には、気体合成燃料と液体合成燃料とがあります。気体合成燃料にはメタン、液体合成燃料にはメタノールがあります。また、FT合成反応により、ナフサ・ガソリン、灯油・ジェット燃料、軽油、重油が製造されます。

合成燃料の種類

 

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)

カーボンニュートラル燃料の様々な活用法

カーボンニュートラル燃料は、自動車や航空機、船舶、石油精製業の分野において活用することができます。

  • 自動車

2021年10月22日に、第6次エネルギー基本計画が発表されました。その中で、電化が難しい部門において、合成燃料を活用して脱炭素化を図る方針が示されています。自動車部門も電化が難しい部門の1つで、国内の自動車メーカーが主体となり、カーボンニュートラル燃料の実用化に向けた取り組みが加速しています。

 

  • 航空機・船舶

カーボンニュートラル燃料は、自動車だけでなく航空機や船舶を動かすための燃料としても活用することができます。脱炭素化を図る有望な燃料として、カーボンニュートラル燃料の技術開発が進んでいます。

 

  • 石油精製業

カーボンニュートラル燃料を製造する際に、既存の燃料インフラや内燃機関をそのまま活用することができます。脱炭素の取り組みが加速する中、日本における石油の需要が減少しています。石油精製業は、カーボンニュートラル燃料を導入することで、新たなビジネスを始めることができます。

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを目指す日本の新たな「エネルギー基本計画」』(2022/1/14)

3. カーボンニュートラル燃料の課題

脱炭素化に貢献し、新たなビジネスチャンスを生み出すメリットがあるカーボンニュートラル燃料ですが、普及にあたって克服すべき課題もあります。

製造技術の確立

日本においてカーボンニュートラル燃料は、研究開発の段階で実用化には至っていません。早期の商用化を実現させるためには、製造プロセス全体における高効率化のための技術開発や、大規模で長期連続、かつ安定した製造を行うための製造設備の設計開発が課題であり、実証実験を引き続き実施することが求められています。

 

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)

出典:資源エネルギー庁『CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案)(2021年10月)(p.23)』

コストの低下

カーボンニュートラル燃料は、化石燃料と比較すると、コストが高いことが課題です。現状では、日本国内でカーボンニュートラル燃料を製造するよりも、海外で製造した方が安いです。カーボンニュートラル燃料を国内で賄えるようになるためには、製造コストを下げることが課題とされています。資源エネルギー庁は、4つのケースにおけるコストの試算を以下のように示しています。(1リットルあたりにかかるコストです。)

  • 国内の水素を活用し、国内で合成燃料を製造するケース 約700円

  • 海外の水素を国内に輸送し、国内で合成燃料を製造するケース 約350円

  • 合成燃料を海外で製造するケース

約300円

  • 将来水素のコストがNm3メートルあたり20円になったケース 約200円

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)

出典:資源エネルギー庁『CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案)(2021年10月)(p.18)』

4. まとめ:カーボンニュートラル燃料への理解を深め、脱炭素に取り組もう

 

この記事では、カーボンニュートラル燃料とはどのような燃料であるのか、法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。カーボンニュートラル燃料は脱炭素化に貢献できることから、今後国内に広く普及する可能性があります。カーボンニュートラル燃料への理解を深め、脱炭素の取り組みを検討しましょう!

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