サステナビリティ・リンク・ボンドとは何か?わかりやすく解説します!

債券とは国や地方公共団体、企業などの発行体が投資家からお金を借りるために発行する有価証券のことです。サステナビリティ・リンク・ボンドも債券の一種です。

今回はESG投資やサステナビリティ・リンク・ボンドの内容、仕組み、メリットなどについてまとめます。

目次

  1. ローンとボンドの違い

  2. ESG融資とは何か

  3. サステナビリティ・リンク・ボンドとは何か

  4. サステナビリティ・リンク・ボンドのメリット

  5. まとめ:自社の事業がサステナビリティ・リンク・ボンドの発行条件を満たしているか調べてみよう

1. ローンとボンドの違い

企業が資金を調達するにはいくつか方法があります。このうち、銀行などの金融機関から資金を融資してもらうものを「ローン」、企業が社債を発行して自ら資金を調達するものを「ボンド」と考えるとよいでしょう。

2. ESG融資とは何か

サステナビリティ・リンク・ボンドを理解するには、ESG融資やSDGs債について理解しておかなければなりません。ここではESG融資やSDGs債についてまとめます。

(1)ESG融資の誕生

ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の頭文字をとったもので、これらに配慮した企業を選別して投資する手法のことです。

ESG融資の前にはSRI(社会的責任投資)が行われていました。企業活動を社会・倫理的な面からとらえ、社会的責任をはたしているかどうかを投資判断に取り入れていました。

1990年代以降、環境に特化したSRIが拡大します。2000年代に入ると環境や社会への影響に配慮した企業に融資するべきだとする考えが強まり、ESG融資が誕生しました。

(2)増加するSDGs債

近年、ESGやSDGsへの貢献を前面に出して資金調達を図る「SDGs債」の発行額が急増しています。ちなみに、SDGs債とESG債はほぼ同じものを意味します。

世界的なSDGs債の推移

出典:金融庁「ソーシャルボンド ガイドライン」(2021)(p3)

2015年には全部で500億ドルにすぎなかった発行額は2020年には約6,000億ドルと12倍に増加しました。今後もSDGs債の発行は増加するものと考えられます。

(3)SDGs債の内訳

SDGs債は大きく分けて5つに分類できます。

グリーンボンド

使途特定

気候変動や水管理、生物多様性の保全、CO2排出削減など環境負荷の低減などのグリーンプロジェクトに必要な資金を調達するために発行

ソーシャルボンド

使途特定

特定の社会問題の解決・対処・軽減などを目的としたソーシャルプロジェクトに必要な資金を調達するために発行

サステナビリティボンド

使途特定

グリーンボンドやソーシャルボンドの資金調達のために発行

サステナビリティリンクボンド

使途非特定

発行体が事前に設定したESG目標の達成状況によって金利などが変化する債券

トランジションボンド

使途特定、または使途非特定

トランジションファイナンスの4つの条件を満たす債券

2. サステナビリティ・リンク・ボンドとは何か

サステナビリティ・リンク・ボンドとは「発行体が事前に設定したサステナビリティ/ESG 目標の達成状況に応じて、財務的・構造的に変化する可能性のある債券の総称」です。

発行体(資金の借り手)が事前に設定した目標の達成状況によって、金利条件が変化します。目標設定によっては低金利で資金を調達できる可能性がありますが、目標が達成できなかった場合は利率が上がるなど返済条件が悪化してしまいます。

出典:環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版」(p.66)

3. サステナビリティ・リンク・ボンドのメリット

企業や地方自治体がサステナビリティ・リンク・ボンドを発行することにどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットを解説します。

(1)発行のメリット

発行体が得られるメリットは次の通りです。

  • サステナビリティ・リンク・ボンド発行の取り組みや投資家との話し合いを通じてサステナビリティ経営を高度化できる

  • 低い金利など好条件で資金を調達できる

  • 新たな資金調達先を獲得できる

  • 環境・社会面で持続可能な企業経営をしているとアピールできる

サステナビリティ・リンク・ボンドを発行するためには、発行計画や発行に当たって投資家と話し合う必要があるため、自社の経営とサステナビリティの関わりを深く考えるきっかけになります。

加えて、高い目標を掲げると低金利での資金調達や新たな資金調達先の獲得ができます。また、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行により、自社がSDGsに貢献していることもアピールできるでしょう。

(2)投資のメリット

投資家が得られるメリットは次の通りです。

  • ESG投資ができる

  • 投資利益と環境社会面での貢献の両立ができる

  • 発行体にESGに基づいた企業活動をさせることができる

サステナビリティ・リンク・ボンドを購入することで投資家はESG投資に参加できます。それにより、債券の利子と環境社会面での貢献という2つのメリットを享受できます。さらに、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行体に、ESGに基づいた企業活動をさせることができ、社会全体でのSDGs達成に寄与できます。

(3)環境・社会面のメリット

環境・社会面でのメリットは以下のとおりです。

  • 地球環境保全に貢献できる

  • 投資家のESGやSDGsへの関心を高められる

  • サステナビリティ・リンク・ボンドを通じて社会・経済問題の解決に貢献できる

サステナビリティ・リンク・ボンドが普及することで、地球環境の保全に資金を回すことができ、環境保護に貢献できます。サステナビリティ・リンク・ボンドが普及すればするほど、投資家のESGやSDGsへの関心を高められるという効果も期待できます。

また、サステナビリティ・リンク・ボンドを通じてエネルギーコストの削減や地域経済の活性化、エネルギー安全保障の強化、災害からの復興など社会的・経済的問題に資金を回すことができるでしょう。

出典:環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版」(pp.32-35)

4. まとめ:サステナビリティ・リンク・ボンドを理解し、資金調達の幅を広げよう

今回はサステナビリティ・リンク・ボンドについて解説しました。2015年に締結されたパリ協定以降、地球環境問題に対する関心が否が応でも高まっています。サステナビリティ・リンク・ボンドはそういった流れの中で活性化した社債の一種です。

社債を発行していない中小企業の場合、銀行などからサステナビリティ・リンク・ローンを受けることで資金調達の幅を広げることができるでしょう。

2050年までにカーボンニュートラルを達成するという政府の目標の下、今後もESG投資は活発化し、SDGs債券の発行やサステナビリティ・リンク・ボンド/ローンの規模も拡大するでしょう。

従来のように財務諸表中心の借入以外に、環境問題に対する取り組みも評価対象となることは、見方を変えれば資金調達の幅を広げるチャンスです。社債を発行しない中小企業であっても、サステナビリティ・リンク・ボンドの仕組みを理解し、銀行などからの融資に活用することが必要なのではないでしょうか。

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