各企業のSDGs取り組み方のメリットとその課題点とは?
- 2022年06月15日
- SDGs・ESG
2015年に国連で採択され、今や世界常識となっている「SDGs」。企業でも社長や役員、投資家から「SDGsを実践しよう」と言われたけど、何をすればいいのかわからない方や、本業と掛け持ちでやっていけるのか不安な方は多いと思います。この記事では、SDGsってどういうものなのか? 実践していくうえでの注意点は何か? といった企業の担当者が抱きやすい疑問を解消します。
目次
- SDGsは地球環境のため企業が行うサステナビリティ。その取り組み方とは
- メリットばかり。企業がSDGsに取り組む意義
- 企業の取り組み方次第でマイナスになる。SDGsの注意点
- 企業のSDGsの取り組み方の好例
- まとめ:自社に合ったSDGsの取り組みを模索しよう
1. SDGsは地球環境のため企業が行うサステナビリティ。その取り組み方とは
2015年に国連が提唱した、2030年までに達成すべき世界中の教育問題や、海や陸のゴミ問題などをなくす事を目的とした持続可能な開発目標です。17のゴールと169のターゲットがあり、企業はまず、17のゴールを達成する事を目標にしています。
他人事ではない? SDGsの必要性
SDGsには、温暖化問題や、人権問題をなくす事も目標として定められています。例えば、日本で問題となっている「ブラック企業」。これは経営陣が従業員をモノをして扱っているため、サービス残業問題や過労死のような事件が起きてしまいます。17の目標のうちの1つ「平和と公正をすべての人に」はこの様な人権問題も課題としています。
他にも、近年一層注目されるようになった「地球温暖化問題」。世界の方が深刻で積極的に取り組んでいる中、日本だけ対策が遅れていると言われています。今や外交関係や海外企業との取引にも温暖化問題への関心度合いが見られる時代です。取り組みが活発でない国や企業は、海外との協力関係に悪影響が出てしまいます。
2. メリットばかり。企業がSDGsに取り組む意義
SDGsを行えば、企業にとってどういうメリットがあるのでしょうか。これからSDGsを実践して行こうと計画している企業は気になるはずです。そこで、そのメリットをまとめました。どれも企業にとってプラスになる事なので、実践しようか迷っている経営陣の方々はぜひ一緒に考えてみてください。
企業ブランドの価値が上がる
現在は「安い」「便利」で溢れた時代で、人々も企業も「情動的価値」を求めるようになりました。そのため、SDGsという地球全体の問題に取り組んでいる姿勢が投資家や顧客に伝わると、自社への株式投資や商品を購入、従業員採用の拡大につながり、会社の利益となります。
さらに、全世界に自社が実践しているSDGsをアピールできるので、結果世界から注目され、新しい投資家や顧客の確保につながり、それ以上にブランド価値が上昇します。
逆に、SDGsを実践していない企業に対しての風当たりは強くなっています。今世界中が、貧困問題や地球環境問題に関心を持つため「この企業は今、直面している問題に関心がない」「自分たちが生き残ればいいと思っている」と認識されてしまいます。
結果、信頼を失い、投資家や顧客から支援が受けられなくなり、売上の低下や資金調達が困難になるという事も増えていくでしょう。それだけ、世界におけるSDGsの価値は高まっているのです。
ビジネスチャンスが広がる
飲み会やパーティで、全く別の業種の人と意気投合して、結果SDGs関連で一緒に仕事をする事になったという事例も増えています。事実、アディダスの社長が、世界会議で偶然隣りになった海洋環境問題団体のトップと意気投合して、海に不法投棄された漁網を糸と繊維に分けてランニングシューズを作っています。
ビジネスチャンスはどこに転がっているかわかりません。現在、世界で目標達成のために突き進んでいるSDGsを話題にすれば、思わぬところでチャンスを得られるかもしれません。
社員のモチベーションアップ
人間らしい職場環境を提供する事で、従業員は働き甲斐がある会社だと感じ、モチベーションアップになります。さらに社内外に良い職場環境をアピールする事で、投資家や顧客の評価も高くなって自社製品も売れ、会社全体の活気作りにつながる事でしょう。
誰だって暗い雰囲気の会社より明るくて活気がある方に働きたいし、職場環境も健全な会社を希望します。SDGsを実行する事により、人材不足も解消されるのです。
3. 企業の取り組み方次第でマイナスになる。SDGsの注意点
SDGsを実践する上で、気をつけなければいけない点もあります。それは無意識にやってしまっていたり、会社全体にSDGsの取り組みが伝わっていなかったりと様々。また、SDGsは経営陣だけでなく、全社で取り組むことに意義があります。より効果的に活動するための注意点を紹介していきます。
SDGsウォッシュに注意
SDGsウォッシュとは「SDGsの目標に向かって実行しているつもりが、別の目標に背いた活動をしていること」です。例えば、貧困撲滅を目的としたプロジェクトが、実は自然破壊になっているというもの。
SDGs自体、法的罰則はないものの、社会からペナルティを受けてしまう恐れがあります。もし、世界中に上記の様な事が知れ渡ってしまったら、抗議活動や不買運動が起きてしまい、さらに投資対象から外されてしまうなど、経営面での損失を受けてしまいます。
SDGsウォッシュは、無意識のうちにやってしまう事も多いので、今一度実践している内容確認してみましょう。
経営者と社員の価値観のズレ
これもよくある事ですが、SDGsの意識が経営陣にしかなく、働く従業員や製造などを委託している子会社は実践しているのを知らなかったという例です。他にも、社長がSDGsをやろうと意気込んでいても従業員は何をやればいいのか全くわからない場合も多いです。
企業理念に組み込んでもそれを実行するのは経営陣ではなく、実際に働いている従業員全員です。経営陣は口だけではなく、すべての従業員が取り組めるように、組織活動を工夫していく必要があります。
経営陣はただ言い出すのではなく、自社・従業員・環境にとってどのようなメリットがあるか、会社全体の理解を深め、従業員それぞれが自発的に活動できる状態を目指せると良いでしょう。
本業との掛け持ちによる弊害
SDGsの活動は、どの従業員も大抵本業と掛け持ちになります。本業が忙しすぎて手が回らなかったり、SDGsを考える余裕すらない場合もあります。
そんな中、経営陣にSDGsの活動を強要されても、従業員は納得するはずがなく、社内のひずみは大きくなっていきます。ただ言い出すだけではなく、現在の自社の状況をきちんと把握し、従業員の活動やスケジュールをある程度調整しなければ、最悪上記のSDGsウォッシュになりかねません。
4. 企業のSDGsの取り組み方の好例
世界と比べ、日本にはSDGsという言葉が浸透していない課題がありました。しかし徐々にSDGs目標達成に向けて大企業も取り組みを始め、様々な先駆者が現れるようになりました。ここでは、これから始める企業に向けて、実際に企業が実行しているSDGsの好例を紹介します。
サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングスは、SDGs目標達成のため、7つのテーマを定めています。実行を第一に掲げ、社会福祉や次世代育成に力を入れており、環境イベントで資金や商品を提供しています。
飲料水を販売する企業なので「目標6:安全な水とトイレを世界中に」を中心に、水質源保全と、節水について発信してCMやイベントで水の重要さを訴える活動もしています。他にも「目標13:気候変動に具体的な対策を」として運送会社にCO2排出削減を求めたり、原料も環境問題を考えてリサイクルしたりと、地球環境に考慮した活動を実行しています。
日本電気株式会社(NEC)
NECは自社のデジタルテクノロジーを利用して、病院を一部AIを用いてデジタル化を推進。医療機関の負担を減らす取り組みをしています。これは「目標3:すべての人に健康と福祉を」「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に繋がっておいます。
特に2021年現在は、新型コロナウイルスの影響で医療機関は崩壊寸前となっており、すべての病院で早急なデジタル化が必要となっています。海外事例ではインドでバスの利便化を図ったり、モザンビークで電子クーポンの利用を実現したりと世界から評価され、これからも企業価値が上昇していくでしょう。
株式会社資生堂
日本人ならではの「もったいない精神」に基づいたサステナビリィを実行しています。
20年3月に発表したスキンケアブランド「BAUM」は肌にも環境にも優しくをコンセプトに、店内でオークの苗木を育て、育った苗木は北海道で植林。家具会社の商品作りに利用され、端材は容器のフタの素材として利用されています。
「BAUM」のように商品の中でリサイクルできるシステムはSDGsの「目標15:陸の豊かさも守ろう」に該当しています。さらに化粧水は合成着色料を使用せず、自然由来のものを使用し、人の肌にも地球にも優しい商品作りを進めています。この成果が認められて第2回日経SDGs経営大賞を受賞しました。
野村ホールディングス株式会社
「目標4:質の高い教育をみんなに」を掲げ、小・中学生に金融や経済の教育を行い、正しい資産運用の理解を広める活動をしています。教育機関ではお金の正しい使い方を学ぶ機会が少ないため、このような活動は社会的に評価されています。
また、「目標13:気候変動に具体的な対策を」「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」に向けた活動としてグリーン電気を取り入れたり、2025年までに女性管理職を20%上げる取り組みを行っています。
スターバックスコーヒー株式会社
ケビン・ジョンソンCEOは「数十年かけて、地球に還元できる量を増やす方針」と語り、地球環境に配慮した飲食の提供を行っています。
現在では、プラスチックのストローから再生紙を利用したストローに変更されており、廃棄されたコーヒーかすなどは、肥料や家畜のエサとしてリサイクルしています。さらに、コーヒーで使用されている水を貧困が深刻化している地域に提供したり、運送業者にも、CO2排出を減らすよう理解を求めたり、SDGs目標達成のため様々な提案をしています。
ビー・エム・ダブリュー株式会社(BMW)
BMWはドイツに本社を持つ自動車メーカーで、太陽光で充電できる、電気自動車産業に力を入れています。SDGsの「目標11:住み続けられるまちづくりを」を達成目標にし、電気自動車のカーシェアリングや、電気スクーターの設置を進めています。
電気自動車の充電ステーションを運営する会社やシェアリング関連の会社にも投資しており、それが国内外に評価されています。実際に、ドイツでは電気自動車のカーシェアリングが積極的に行われており、国民にはカーシェアリングが当たり前だという認識が浸透しています。
5. まとめ:自社に合ったSDGsの取り組みを模索しよう
SDGsは地球環境にも、そして企業にも大きなメリットがあります。しかし技術進化が早い昨今では、具体的な活動も陳腐化するスピードが速いため、ゴールするためのやり方を臨機応変に考えなくてなりません。
経営者の手腕も問われるSDGs。もし取り組めていない、活動が充分でないと感じる場合は、一度他社とのやり取りの中で情報交換を行ったり、自社への導入・活発化を検討してみてはいかがでしょうか。