世界の二酸化炭素(CO2)排出量と脱炭素への取り組み

二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスにより地球温暖化が進み、環境の変化や異常気象といった影響が世界で拡がっています。世界のCO2排出量を削減するためには民間企業の協力が不可欠であり、現状の把握と脱炭素社会に向けた具体的な取り組みが、企業経営にも求められる時代になっています。

本記事では主に、世界と日本のCO2排出についてデータから理解を深めるとともに、具体的な取り組みに入るために必要な企業データの把握についても紹介しています。

目次

  1. 世界の二酸化炭素(CO2)排出量

  2. 世界の二酸化炭素(CO2)排出量削減目標

  3. 二酸化炭素(CO2)排出量削減で世界を牽引する日本

  4. まとめ:自社の二酸化炭素(CO2)排出量を計算してみよう

1. 世界の二酸化炭素(CO2)排出量

世界第1位は中国、第2位はアメリカ 日本は世界第5位

世界の二酸化炭素の排出量

出典:全国地球温暖化防止活動推進『3-1 世界の二酸化炭素排出量』(2018年)

世界中で排出される二酸化炭素(CO2)量は1年間でおよそ335億トンにも上るとされています。国別にCO2排出量を比較すると、最も多いのは中国で全体の28.4%(約95.1億トン)、2番目はアメリカで全体の14.7%(約49.2億トン)です。3番目のインドを加えると、3ヵ国で世界全体の半分のCO2を排出していることが分かります。

対して日本は、インド、ロシアと続いて5番目にCO2排出量の多い国です。世界全体の3.2%(約10.7億トン)であり、中国やアメリカに比べると少なく感じますが、EU諸国や途上国と比較して多くのCO2を排出していることがわかります。

国民1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量は?

一人当たりの二酸化炭素排出量

出典:全国地球温暖化防止活動推進『3-2 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較』(2018年)

さて、国別のCO2排出量と合わせて、国民一人当たりの排出量も見てみましょう。アメリカが一番数値が高く、15.1トン/人のCO2を排出しています。これに比べ、国別の排出量でトップだった中国では6.8トン/人となっており、アメリカの半分以下です。アメリカの他にも、ロシア、韓国、日本やドイツなど産業革命以降に工業化が進んだ先進国でCO2排出量が大きな数値となっており、これからの脱炭素社会に向けてこれらの国々が大きな役割を担っていることは言うまでもありません。

また、中国やインドをはじめとする人口が多い途上国では、一人当たりの排出量が世界の総CO2排出量に大きなインパクトを与えます。そのため、温室効果ガスの排出抑制と経済発展の両立が求められており、これには先進国との連携が不可欠であると言えます。

世界の二酸化炭素(CO2)排出量の推移

世界の二酸化炭素の排出量推移

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2019年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

 1997年に京都議定書が採択されて以降、EU諸国やアメリカを中心に少しずつではあるもののCO2排出量の削減が進められてきました。しかし、1990年と2016年を比べると中国、インドにおけるCO2排出量が約4倍に膨れ上がっており、結果的に総CO2排出量が大幅に増加しました。そのため、京都議定書では経済発展のために適用を除外された途上国においてもCO2削減に向けて取り組みべきであるとの考えが広がり、2015年のパリ協定へと繋がっていきます。

次章ではパリ協定で採択された世界共通の目標と各国のCO2排出削減目標について触れていきましょう。

2. 世界の二酸化炭素(CO2)排出量削減目標

パリ協定で掲げられた目標

パリ協定目標

2015年に地球温暖化対策の国際的な枠組みとして採択されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を、産業革命以前にくらべて2℃より低くたもち、1.5℃に抑える努力をすること」が長期目標として掲げられました。また合わせて、21世紀後半にはCO2を含む温室効果ガス(GHG)の排出量をネットゼロとすることも目標となっています。

これらは、氷床の融解や生態系の変化、また災害規模の異常気象など地球環境における転換点(ティッピングポイント)を超えないように設定された野心的な目標であるとともに、現在の美しい地球を守るために達成しなければならない世界共通の目標でもあります。

日本のCO2削減目標は決して低くない

先進国の2030年排出削減目標

パリ協定を受け、世界各国でCO2削減目標が設定されました。当初2030年までに2013年度比で26%のCO2排出量を削減することを目標としてきた日本ですが、2021年4月に行われた気候サミットにおいて、2050年のカーボンニュートラルとも整合する野心的な目標として、2030年度のCO2排出量を2013年度比で46%削減することを目指すこと、さらに、50%の高みへ挑戦し続けることが宣言されました。※1

これにより、各国でCO2削減目標の基準とする年度が異なることから直接比較しにくいですが、全基準年度ベースで整理するとEU諸国やアメリカに追従する世界トップレベルの目標を掲げているということとなります。

※1 出典:NHK『菅首相 2030年の温室効果ガス目標 2013年度比46%削減を表明』(2021年4月22日)

3. 二酸化炭素(CO2)排出量削減で世界を牽引する日本

RE100へ参加している292社中50社が日本企業

RE100に参加している企業

出典:環境省『RE100に参加している国別企業数』(2021年3月19日) 

事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーに置き換えることにコミットする世界協働イニシアチブであるRE100では、世界中から292社が参画しています。日本からはアメリカに次ぐ世界2位の社数となる50社が2030年から2050年にかけて再生可能エネルギー100%化することをコミットしています。

日本のCO2排出の約40%を電力部門が占めており※2、再生可能エネルギーへの転換はもっとも重要な課題と言っても過言ではなく、さらなる牽引と日本国内での広がりが期待されています。

※2 出典:全国地球温暖化防止活動推進センター『日本の部門別二酸化炭素排出量の割合 -各部門の直接排出量-』

二酸化炭素(CO2)排出量削減率はイギリスに次いで第2位

CO2削減率排出量の推移G20各国の二酸化炭素(エネルギー期限由来)
出典:経済産業省『資源エネルギー庁 CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”』(2020年8月14日) 

経済産業省のデータによると2013年度を基準としたCO2排出量は主に先進国で削減され途上国で増加していることがわかります。先進国の中でもイギリスは、2013年度比で19.7%ものCO2を削減しており、パリ協定で策定した目標以上の成果を挙げています。

日本はイギリスに次いで第二位のCO2削減量であり、当初のCO2削減目標である2030年までに2013年度比で26%削減するという目標に沿って、堅実に努力してきた成果と言えます。しかし、2030年度に向けた新たなCO2削減目標を達成するためには、カーボンニュートラルに向けた社会全体の強固な姿勢が求められています。

加速する二酸化炭素(CO2)排出量削減の流れ

CO2削減のながれ

主な炭素税導入国の水準比較
出典:環境省『「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ』(2018年3月)(p.32)

1990年以降EU諸国を中心に脱炭素社会に向けた取り組みとして導入され始めたのがカーボンプライシング、つまりは炭素税です。日本でも2012年から石油石炭税として輸入時に課税されていますが、他の国と比べるとごくわずかな税率に留まっています。2030年に向けたCO2排出量の削減目標引き上げに伴い、カーボンプライシングに対する検討を行う小委員会が環境省と経済産業省で再開されています。

また、金融業界ではESG投資と呼ばれる環境・社会・ガバナンスに配慮した経営に対して優先・優遇した投資の流れが出来ており、世界的に脱炭素社会に向けた取り組みが加速しつつあります。

4. まとめ:自社の二酸化炭素(CO2)排出量を計算してみよう

先進国を中心にCO2排出量の削減に取り組んでいるものの、2050年を目標とするカーボンニュートラルやパリ協定により設定された地球全体の温度上昇を2℃以下に抑えるためには更なる削減が求められます。再生可能エネルギーやバイオ燃料などイノベーションを引き起こす技術開発ももちろん重要ですが、これらに期待するだけでなく足元からできることに一人ひとりが意識を向けていく必要があります。

企業活動により排出されるCO2量を把握し、削減目標を立てるためには現在の排出量を把握しなければらなりません。CO2を含む温室効果ガスの排出量算出方法に関するガイドラインが経済産業省から提示されていますので、まずは自社のCO2排出量を計算してみることで、社内の環境への意識を高めてみてはいかがでしょうか。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説