再生可能エネルギー導入の日本政府の目標とは?推進の政策を解説!

日本政府は再生可能エネルギーの導入を推進するため、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロ」にするという目標を掲げました。

このカーボンニュートラルの考え方を実現し、同時に経済成長を達成するためのさまざまな施策や技術開発、金融支援が実施されようとしています。

今回は日本政府による再生可能エネルギー導入についての政府目標や中小企業に求められる脱炭素経営などについて解説します。

目次

  1. 菅総理による「2050カーボンニュートラル宣言」とは

  2. 日本政府が目標達成のために定めたグリーン成長戦略の政策概要とは

  3. エネルギー政策の基本方針

  4. 再生可能エネルギーの技術開発や普及のための金融支援

  5. まとめ:目標達成のために中小企業に求められる脱炭素経営

1. 菅総理による「2050カーボンニュートラル宣言」とは

2020年10月26日、菅総理は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。

出典:首相官邸『令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説』(2020/10/26)

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

温室効果ガスの中でもっとも排出量が多いのは二酸化炭素です。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素排出量の削減への取組と言い換えてもよいでしょう。温室効果を発生させ、地球気温を上昇させる要因となっている二酸化炭素の排出量をコントロールすることが地球環境を守る上で大切だからです。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

しかし、二酸化炭素排出量をゼロにするのは非常にに困難です。そこで、排出される二酸化炭素と同じ量を吸収・除去することで「差し引きゼロ」にすることを目指します。吸収・削減の手段として、植林や二酸化炭素の地下貯留などが検討されています。

2. 日本政府が目標達成のために定めたグリーン成長戦略の政策概要とは

菅総理が打ち出した2050年までのカーボンニュートラルを実現するため、政府は経済産業省を中心に「グリーン成長戦略」を推し進めています。戦略のポイントは環境関連技術のイノベーション投資の促進や産業競争力の強化、新産業への転換などです。

出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021/5/20)

政府は今後の産業政策の方針として、14の重要分野で構成された「グリーン成長戦略」を作庭しました。

エネルギー関連では洋上風力発電や燃料アンモニア、水素産業、原子力産業の4分野。輸送・製造関連では自動車や蓄電池、半導体、船舶、物流、食料生産、航空機、カーボンリサイクルの7分野。家庭・オフィス関連では住宅、資源循環、ライフスタイルの3分野です。

特に、エネルギー自給率が低い日本は、再生可能エネルギーの生産・利用に積極的に取り組む必要があります。輸入に頼らないエネルギーとして再生可能エネルギーや原子力技術のさらなる開発が必要となるでしょう。

もはや、かつてのように環境対策技術の開発は「コスト」ではなく、世界レベルの競争における「武器」と考えられているのです。

3. エネルギー政策の基本方針

「3E+S」とは

出典:資源エネルギー庁『3E+S | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』(2020)

日本のエネルギー政策を知るうえで欠かすことができないキーワードが「3E+S」です。3Eは自給率(Energy Security)・経済効率性(Economic Efficiency)・環境適合(Environment)の英語の頭文字です。Sは安全性(Safety)で、3Eの大前提と考えられえています。

出典:資源エネルギー庁『安定供給 | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 』(2020)

現在、日本のエネルギー自給率は11.8%に過ぎません。これは欧米諸国と比較してもかなり低い水準だといわざるを得ません。政府はエネルギー自給率を2030年までに25%に引き上げることを目標としました。

出典:資源エネルギー庁『3E+S | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 』(2020)

また、電力コストを今以上に削減することや温室効果ガスの排出削減なども同時並行で行います。再生可能エネルギーの発電コストを大幅に引き下げることで今までよりも再生可能エネルギーを導入しやすくなるからです。

再生可能エネルギーの比重を増した新しいエネルギーミックス

出典:資源エネルギー庁『3E+S | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』(2020)

エネルギーミックスとは、多種多様なエネルギーを組み合わせて電気を生み出すことです。現在、日本の電気の77%が石炭・石油・天然ガスといった化石燃料を用いた火力発電によって生み出されています。

政府は2030年度までに現在17%の再生可能エネルギーの割合を22%~24%に、現在6%の原子力発電の割合を20%~22%に高めようと考えています。これにより、火力発電由来の二酸化炭素の排出削減を狙います。

再生可能エネルギーには太陽光発電、風力発電、バイオマス燃料の使用、地熱発電が含まれており、これらの発電をいかに促進していくかが目標達成のカギとなるでしょう。

4. 再生可能エネルギーの技術開発や普及のための金融支援

政府は再生可能エネルギーの技術開発のため、1980年に「新エネルギー総合開発機構」(現 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構:以下、NEDO)を設立。それ以降、新エネルギーに関する研究を積極的に支援しました。

NEDOは全固体リチウムイオン電池や新しい仕組みの蓄電池、電気自動車の活用、洋上風力発電の研究など様々な技術開発に取り組んでいます。

出典:NEDO『NEDOが取り組む技術開発分野』(2021/4/1)

また、資源エネルギー庁は「環境・エネルギー対策資金」を設け、中小企業や個人事業主が非化石エネルギー設備(再生可能エネルギー設備)を設置するときの必要資金を融資しています。低利で20年間融資を受けることが可能な仕組みです。こうした制度を活用することで、政府は再生可能エネルギーの技術開発や普及をはかっています。

5. まとめ:目標達成のために中小企業にも求められる脱炭素経営

今回は再生可能エネルギーの導入・普及のために日本政府がどのような方針で施策を行っているか見てきました。菅総理大臣の所信表明演説にもある通り、日本も世界と歩調を合わせて再生可能エネルギーを導入し、脱炭素社会を実現しなければなりません。

では、中小企業に求められることは何でしょうか。それは、再生可能エネルギーの技術開発や再生可能エネルギー由来の電力への切り替えでしょう。

技術を有している企業は、積極的な技術開発により省エネ技術や発電技術の開発を、技術を有していない一般企業でも、規模の大小にかかわらず、再生可能エネルギーを一定程度使用することや省エネ設備への交換を求められるのではないでしょうか。

こうした脱炭素社会への積極的な参加は企業経営の前提条件となるのではないでしょうか。

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