再生可能エネルギーに関して日本の企業ができることとは?技術開発や取り組みを解説!

菅総理大臣は2050年までに「カーボンニュートラル」を達成すると表明しました。この目標達成のため日本企業は、再生可能エネルギーを今まで以上に導入することが求められます。

日本の省エネ技術は世界最高レベルに達していますが、再生可能エネルギーの導入に関してはまだまだ改善の余地があります。今回は再生可能エネルギーに関して日本企業ができる取り組みや政府の支援、技術開発などについて解説します。

目次

  1. 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とは

  2. 求められる「カーボンニュートラル」の達成

  3. 日本企業による技術開発の取り組み

  4. 国による再生可能エネルギー事業への支援

  5. 日本の中小企業 再生可能エネルギー導入の取り組み

  6. まとめ:再生可能エネルギー導入に企業が果たすべき役割とは

1. 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とは

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下、2030アジェンダ)とは、2015年に国連サミットで採択された2016年から2030年までの行動目標です。2030アジェンダでは、達成すべき目標として17のゴール(SDGs)を設定。各国は、それに向けて行動すると定められました。

17のゴールは、貧困や飢餓、教育などの改善などの社会面やエネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消などの経済面、地球温暖化などの環境面など現在の地球が直面するあらゆる問題が含まれています。

17のゴールを達成するために各国が行動することを定めたのが「2030アジェンダ」です。

出典:環境省『持続可能な開発のための2030アジェンダ/SDGs』(2020/3/6)

2. 求められる「カーボンニュートラル」の達成

「カーボンニュートラル」とは何か

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの発生を全体としてゼロにするという考え方です。温室効果ガスの排出を完全にゼロにするのは困難です。しかし、排出せざるを得ない温室効果ガスと同じ量の温室効果ガスを吸収もしくは除去することは可能です。

こうして、結果的に温室効果ガスの排出を差し引きゼロにしようというのがカーボンニュートラルという考え方です。温室効果ガスの排出削減と同時に、植林や二酸化炭素を地下に貯留する技術(CCS)を導入することで2050年までにカーボンニュートラル達成を目指します。

出典:資源エネルギー庁『エネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」(2017/11/14)

出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021/5/20)

現在、日本を含む126の国と地域がカーボンニュートラルを表明しています。2050年までに脱炭素社会を目指すのは世界的潮流といってよいでしょう。

温室効果ガスの削減

温室効果ガスとは、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、フロンガスなどのことです。二酸化炭素は化石燃料の燃焼などによって発生します。二酸化炭素についで地球温暖化に影響を与えるとされるメタンは、湿地や水田、家畜、天然ガス、バイオマス燃料などから発生します。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

ただ、日本の温室効果ガスの85%がエネルギー由来の二酸化炭素であり、この抑制が温室効果ガス削減の鍵となります。

再生可能エネルギーへの切り替え

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

エネルギー由来の二酸化炭素は、電力・運輸・産業などから排出されます。このうち、最も多くの割合を占めているのが電力。電力の割合が高い理由は、化石燃料を燃焼させて電力を得る火力発電が日本の主な電力供給源であるからです。

出典:資源エネルギー庁『3E+S | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 』(2020)

日本政府は石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の割合を減らし、原子力や再生可能エネルギーの割合を増やそうと考えています。なかでも太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーに大きな期待を寄せています。

3. 日本の中小企業 再生可能エネルギー導入の取り組み

IoT技術の開発

近年、「IoT」という言葉が多くの分野で使われるようになりました。IoTとは、「Internet of Things」の略で、様々なものがインターネットにつながること、あるいは、インターネットにつながるものそのものを意味する言葉です。

出典:資源エネルギー庁『2019年、実績が見えてきた電力分野のデジタル化②~バーチャルパワープラント編』(2019/11/01)

従来、発電所が一極集中で電力を生み出し、それを消費者である企業や家庭に供給する仕組みを活用してきました。今後は、各家庭や工場などの自家発電設備が生み出した電力を送電網によって必要な場所に送る仕組みが検討されています。

いわば、社会全体を巨大な発電所と見立てる考え方で、その際の電力制御の技術としてIoTは必要不可欠です。また、電力の使用においてもIoTを活用することで一層の省エネを図ることも可能でしょう。

省エネ技術の開発

出典:資源エネルギー庁『日本の省エネルギー技術施策について』P3(2020/1)

日本は、世界と比較しても類まれな省エネ技術を誇る国です。エネルギー効率という面では、日本は環境規制が厳しいヨーロッパ並みで、世界平均の2.5を大きく下回っています。

たとえば、東京メトロが2018年に導入した新型車両は従来型に比べ27%の消費電力削減に成功しました。

また、2017年に四国計測工業株式会社が開発した高輝度LED照明は、大光量・長寿命・省エネを同時に達成します。省エネ分野で世界をリードする日本企業は、今後もさらなる技術革新が期待されるでしょう。

蓄電池技術の開発

再生可能エネルギー普及の上で重要なことの一つは、生み出された余剰電力をいかに無駄なく蓄え、不足時に供給できるかです。そのために必要なのは蓄電池技術の性能向上です。蓄電池とは、充電で電気を蓄え、繰り返し使用できる電池のこと。蓄電池の性能が上がれば、その分、多くの電力を貯留・供給できるでしょう。

出典:経済産業省『資料5 蓄電システムをめぐる現状認識(PDF形式:3740KB)』P16(2020/11/19)

2020年11月に開かれた経済産業省の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」の資料によれば、日本の蓄電池生産能力は中国や欧米、韓国と比較しても低い水準であることがわかります。今後、日本が再生可能エネルギーの導入拡大を図る上で、蓄電池技術や生産能力を向上させる必要があります。

4. 国による再生可能エネルギー事業への支援

政府は再生可能エネルギーの普及を図るため、各種の支援制度を設けています。主な内容は補助金の交付や税制面での優遇措置、事業活動のための融資です。

環境省は「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」で民間企業や地方公共団体に再生可能エネルギーの発電設備設置に補助金を出しました。経済産業省は太陽光発電に併設する家庭用蓄電にシステムに補助金を出します。

税制面では太陽光発電への投資での優遇措置や再生可能エネルギーの発電設備にかかる固定資産税の特例措置、省エネリフォームを実施した際の減税措置、バイオエタノールに関する特例措置などを打ち出し、再生可能エネルギー事業の普及を支援しています。

出典:資源エネルギー庁『各種支援制度|なっとく!再生可能エネルギー



5. 日本企業による技術開発の取り組み

太陽光発電設備の導入

出典:資源エネルギー庁『再生可能エネルギーの歴史と未来|再生可能エネルギー・新エネルギー』(2018/2/18)

現在、各企業がもっとも導入しやすい再生可能エネルギーは太陽光発電設備を導入することです。太陽光発電にかかるコストは2009年から2017年にかけて3分の1以下に低下し、各企業や家庭で導入しやすくなりました。

また、電力会社が提供するプランが多様化し、再生可能エネルギーで生み出された電力を多く含むプランを採用することで再生可能エネルギーを導入することも可能です。今後は、企業の社会的責任として再生可能エネルギーの積極的な導入が必要となるのではないでしょうか。

中小企業でも参加しやすい「再エネ100宣言 RE Action」とは?

2019年10月9日、日本の中小規模企業や企業以外の団体によるRE100宣言の新枠組みとして「再エネ100宣言 RE Action」が発足しました。環境省もこの「再エネ100宣言 RE Action」にアンバサダーとして参加します。

「再エネ100宣言 RE Action」は消費電力量が10GWh以上の企業による「RE100イニシアチブ」に参加できない、より小規模な事業者や団体の集まりです。

主な活動内容は参加団体による再エネ100%宣言とその達成のための支援、参加企業・団体による情報発信です。すでに、敷地内での太陽光発電や再エネ主体の電力の購入などで実績が上がっています。参加団体は21年6月7日現在147ですが、SDGsなどを背景とし、さらなる増加が見込まれます。

出典:再エネ100宣言 RE Action協議会『再エネ100宣言 RE Action

6. まとめ:再生可能エネルギー導入に企業が果たすべき役割とは

日本は持続可能な開発目標にむけて行動する「アジェンダ2030」の採択に賛成しました。そのため、日本の政府や企業は環境負荷を低減する施策の実行を求められています。政府が打ち出した「カーボンニュートラル宣言」もこうした理念に基づくものでした。

日本が脱炭素社会を達成するためには、省エネルギー技術のような日本が得意な分野だけではなく、出遅れているとされる再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組まなければなりません。

「再エネ100宣言 RE Action」のように、中小企業が主体的に再生可能エネルギー導入に取り組むことで、地球環境の保全という大きな目標を達成するべきではないでしょうか。

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