【2023年度版】日本の再生可能エネルギーの割合と今後の見通し
- 2023年01月17日
- 発電・エネルギー
日本は、2030年度までに再生可能エネルギーの割合を22〜24%にする方針から36〜38%程度にまで引き上げるのではないかとの声も上がっており、日本では今後再生可能エネルギーがますます推進されていくことが予想されます。
再生可能エネルギーの導入をご検討中の法人の皆さまは、日本の動向を知った上でどのように取り組むかを考えていただければと思います。この記事では、最新版となる日本の再生可能エネルギーの割合と今後の見通しを中心にご紹介します。
目次
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日本/世界で再生可能エネルギーが求められる背景
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【2021年度版】日本のエネルギー割合
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日本の再生可能エネルギーの見通し
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世界の再生可能エネルギーの割合に関する基本的な知識
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世界の再生可能エネルギーの見通し
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まとめ:日本の再生可能エネルギーの割合を理解し、今後の導入につなげよう!
1. 日本/世界で再生可能エネルギーが求められる背景
再生可能エネルギーという言葉が、最近ニュースなどでもよく取り上げられるようになりました。ここでは日本を含めて世界各国で再生可能エネルギーが求められるようになった3つの背景をご紹介します。
地球温暖化による異常気象の問題視
近年、世界各国で問題視されているのが、地球温暖化による異常気象です。地球温暖化の主な原因である二酸化炭素排出量を削減しようとする試みが、再生可能エネルギーの普及につながっています。
再生可能エネルギーが注目されている理由は、再生可能エネルギーがほとんど二酸化炭素を排出しないことです。環境省の発表によると、再生可能エネルギーは発電時に二酸化炭素を排出しません。設備の建設や廃棄などライフサイクル全体で考えても、化石燃料発電と比較すると、二酸化炭素排出量が少ないです。
たとえば石炭火力が943g-CO2/kWhであるのに対し、太陽光は38g-CO2/kWhです。このように化石燃料発電と比較して大幅に二酸化炭素排出量を削減できることが、再生可能エネルギーが注目されている背景にあります。
出典:環境省『1.再生可能エネルギー導入加速化の必要性など』(p.2)
国内でのエネルギー自給率の低さ
国内でのエネルギー自給率の低さも、再生可能エネルギーが注目されている背景にあります。経済産業省の発表によると、日本は1960年には石炭や水力など国内の天然資源によりエネルギー自給率は58.1%もありました。しかし1970年には15.3%に大幅にダウン、その後はわずかに増減を繰り返しながらも自給率は低い水準にあり、2022年度のエネルギー自給率は約11%です。
エネルギー自給率の低さは、他国からの輸入に頼ることを意味しています。そのため、社会情勢の変化により価格が変動したり、必要なエネルギーを得ることができないというデメリットがあります。
とくに、現在ウクライナへの軍事侵攻で問題になっているロシアへの資源エネルギーの依存度が高く、石油が4%、天然ガスが9%、石炭が11%でロシアに依存している状態です。
出典:経済産業省「エネルギーの安定供給の再構築」(2022/9/28) p18
パリ協定の採択
日本を含めて世界各国で再生可能エネルギーの導入が進んでいます。世界が歩みを揃えた背景には、パリ協定の採択があります。パリ協定は、2015年にフランスで採択された、2020年度以降の気候変動抑制に関する国際的な枠組みです。気候変動抑制に関する国際的な枠組みには1997年に採択された京都議定書があります。
京都議定書が先進国のみを対象としているのに対し、パリ協定は「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という世界共通の長期目標を掲げ、先進国の他に新興国や途上国を含む全ての主要排出国が地球温暖化対策に取り組むことを約束することを定めたものです。
出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017/8/17)
2. 【2021年度版】日本のエネルギーの割合
日本は今後、2030年度までに再生可能エネルギーの割合を現行目標の22〜24%から36〜38%程度に引き上げて政策を進めていくのではないかとの声も上がっています。ここでは、現在の日本におけるエネルギー事情をご紹介します。
2022年度における日本のエネルギーの割合
経済産業省の「エネルギー白書2020」によると、2019年度の日本のエネルギーに占める化石燃料の割合は88.3%と高い水準にあります。(内訳は石油38.4%、石炭27.8%、天然ガス22.2%)日本は化石燃料のほとんどを輸入に頼っているため、安定的なエネルギーの供給を受けられるかが大きな課題です。
出典:資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2022)」p4
2020年度における日本の再生可能エネルギーの割合
経済産業省の発表によると、日本のエネルギー自給率は2010年以降次のように推移しています。
日本は2011年に発生した東日本大震災後、国内のエネルギー自給率は6%まで低下したものの、2014年以降エネルギー自給率は高くなっています。しかし、2020年時点で11%と、諸外国と比較すると自給率は低いです。発電設備容量は世界第6位で、日本で最も導入が進んでいる太陽光発電は世界第3位です。
発電設備容量や太陽光発電の観点から見ると、世界から遅れをとっているわけではありません。しかし日本が2030年度までに目標とする再生可能エネルギーの割合を36〜38%にするためには、さらなる再生可能エネルギーの推進が求められます。
出典:資源エネルギー庁「エネルギーの今を知る10の質問」(2022/02)
3. 日本の再生可能エネルギーの見通し
2050年度の脱炭素化社会を実現するために、日本は再生可能エネルギーを最大限に活用していく方針です。ここでは再生可能エネルギーの導入に関して日本が掲げる目標と今後の普及の見通し、現在日本が実施している取り組みの事例をご紹介します。
日本が掲げる目標
2022年4月に資源エネルギー庁が発行した「今後の再生可能エネルギー政策について」の中で、エネルギーミックス改定において、2030年度の温室効果ガス46%削減に向けて野心的目標として電源構成36〜38%を発表しました。内訳は、太陽光発電が14〜16%程度、風力発電が5%程度、水力発電が11%程度、地熱発電が1%程度、バイオマスが5%程度になっています。
その他の電源構成については、原子力の割合を20〜22%、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の割合を56%にする方針です。
出典:資源エネルギー庁「今後の再生可能エネルギー政策について」(2022 /4/7)p5
日本の再生可能エネルギー普及の見通し
野心的目標ではあるものの、2022時点で日本における再生可能エネルギーの割合の最大目標は36〜38%ですが、経済同友会が国に再生可能エネルギーの割合を40%に引き上げることを提案するなどの動きが出ています。
2021年度の再生可能エネルギーの割合は20.3%なので、現行の目標を達成するためには最大約18%程度の取り組みが必要とされます。
出典:経済産業省『2030年再生可能エネルギーの電源構成比率を40%へ』(2021/3/16)
出典:一般社団法人共同通信社『再エネ比率、36〜38%を軸』(2021/5/11)
日本の取り組み事例
再生可能エネルギーの割合を36〜38%にするため、日本では2012年に固定価格買取(FIT)制度が施行されました。FIT制度は、再生可能エネルギーの普及を目的とし、太陽光発電や風力、水力、地熱、バイオマスを対象とし発電したエネルギーを電気事業者が国が定める料金で一定期間買い取るというものです。安定した利益を得ることができるため、日本では発電事業が急増しました。FIT制度が施行される前は約5GWだった太陽光発電の累積導入量が、2021年度には約60GWにまで伸びています。
また、2022年4月よりFIP制度という電力市場価格に補助金(プレミアム金)が上乗せされた金額が支払われる制度が始まったことからも、国が再生可能エネルギー増加に力を入れていることがわかります。
出典:資源エネルギー庁『再生可能エネルギーの歴史と未来』(2018/2/1)
4. 世界の再生可能エネルギーの割合に関する基本的な知識
2020年度の日本の再生可能エネルギーの発電設備容量は、再エネ全体で19.8%(内訳:水力7.8%、その他12%)と前年から1.8%増加して世界第6位です。ここでは世界トップ5の国別にエネルギーの割合と再生可能エネルギーの割合(内訳)をご紹介します。
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カナダ:再エネ割合67.9% (水力60.0%、その他7.9%)
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スペイン:再エネ割合43.6% (水力11.7%、その他31.9%)
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ドイツ:再エネ割合43.6% (水力3.2%、その他40.4%)
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イギリス:再エネ割合43.1% (水力2.1%、その他41.1%)
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イタリア:再エネ割合41.5% (水力16.7%、その他24.8%)
出典:資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案」(2022/10)p4
5. 世界の再生可能エネルギーの見通し
世界が共通に掲げる目標としてパリ協定があります。世界各国は、パリ協定を考慮した上で独自に目標を掲げ、目標を実現させるために再生可能エネルギーの普及を推進しています。経済産業省によると、世界全体の再生可能エネルギー発電設備の容量は、2015年には2000GW程度で、2020年には3000GW程度まで達しています。ここでは、アメリカと欧州の目標と取り組み事例をご紹介します。
出典:資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案」(2022/10)p3
アメリカの目標と取り組み事例
2021年時点のアメリカの再生可能エネルギーの発電量は全体の21%を占めており、中国に次いで第2位でした。バイデン大統領は、気候変動及び再生可能エネルギーに意欲的であり、2022年に約54兆円規模の気候変動対策が含まれたインフレ抑制法(IRA)を可決しています。また、新たに環境対策に取り組む企業への税控除措置が盛り込まれたクリーンエネルギー技術促進を新設するなど、積極的に環境問題に取り組んでいます。
出典:中間選挙終えたアメリカ、気候変動対策やエネルギー政策の行方は?(2022/11/29)
欧州の目標と取り組み事例
EUは、以前より気候変動問題や再生可能エネルギーにおいて積極的に取り組み世界を牽引しています。とくに2022年は、天然ガス最大の輸入国であるロシアのウクライナへの軍事侵攻もあり、天然ガス脱却に勢いが増しているのが現状です。
またエネルギー専門誌は、2022年11月14日にEU委員会において2030年の温室効果ガス排出削減目標を55%から57%への引き上げを発表したと伝えています。ここでは、ドイツとデンマークの現状や目標、取り組みなどをご紹介します。
出典:海外電力調査会「世界の電気事業の動き」(2022/11/14)
(1)ドイツ
ドイツは、2000年時点で7%だった再生可能エネルギーの割合が2020年には45%に達しています。2022年はロシアのウクライナ軍事侵攻もあり、これまで以上に天然ガス依存からの脱却に取り組んでいます。実際に、2022年の新たな再生可能エネルギー法(EEG法案)を可決して、2030年に80%以上、2035年には100%を目指すとしています。
出典:環境エネルギー政策研究所「2021年の自然エネルギー電力の割合」(2022/4/4)
(2)デンマーク
デンマークは、再生可能エネルギーを牽引している国の1つです。2030年までに再生可能エネルギーの割合を100%以上を目指しており、2000年時点で17%と高い割合でしたが、2021時点ですでに74%に達しています。デンマークでは、これまでに培ってきた電力システムの経験をもとに、風力・太陽光の変動性自然エネルギーVREで電力の50%以上を賄うソリューションが電力市場において実現しています。
出典:環境エネルギー政策研究所「2021年の自然エネルギー電力の割合」(2022/4/4)
6. まとめ:日本の再生可能エネルギーの割合を理解し、今後の導入につなげよう!
再生可能エネルギーの導入をご検討中の法人の皆さまが知っておくべき、日本の再生可能エネルギー普及の現状や今後の見通しなどについてお伝えしました。日本の現状と今後を理解した上で、企業がどのように取り組むかを検討してみてください。