自然エネルギーとは?電力の調達方法と日本における現状・課題

近年、温暖化対策や環境問題への関心の高まりと共に、自然エネルギーによる電力への注目度も増しています。企業のCSRの取り組みの一環にもなり、大企業や自治体で導入する事例も増えていますが、まだまだ自然エネルギーについてよくわからないという方も多いと思います。

本記事では、そもそも自然エネルギーとは何か?どのような種類があるのか?電力の調達方法は?などの基本的なところを解説していきます。

目次

  1. 自然エネルギーとは?

  2. 自然エネルギーの電力調達方法

  3. 日本における自然エネルギーの課題

  4. まとめ:自社に合った方法を取り入れてみよう

1. 自然エネルギーとは?

「自然エネルギー」とは、太陽、地熱、風、中小水力、バイオエネルギー(生物由来の燃料)といった自然現象から得られるエネルギーの総称です。温室効果ガスを排出せず、再利用できるエネルギーを指します。

2020年時点での日本国内における自然エネルギーの比率は20.8%となっており、うち7.9%が水力、8.5%が太陽光となっています。一部の報道では、経産省が2030年までの自然エネルギー比率の目標を36~38%に引き上げる方針で検討していると発表しています。

出典:一般社団法人共同通信社『再エネ比率、36〜38%を軸』(2021/5/11)

出典:環境エネルギー政策研究所(iSEP)「2020年の自然エネルギー電力の割合(暦年速報)」を元にアスエネが作成

自然エネルギーのメリット

自然エネルギーの大きなメリットは、国内のエネルギー自給率を上げられることです。

元々日本はエネルギー自給率が低く、2018年で11.8%、低いときは2014年で6.4%でした。資源エネルギー庁によると、2018年度の一次エネルギー供給構成は85.5%が石油や天然ガスといった化石燃料に頼っています。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

エネルギー源を輸入に頼りすぎると、2021年1月にLNGの供給不足が一因で起こった電力逼迫のように、有事の際にエネルギーが不足するリスクがあります。

出典:電気新聞『長引く電力需給逼迫。ベストミックスの重要性が改めて認識される時』(2021/1/18)

他にも、自然エネルギーには様々なメリットがあります。

  1. エネルギー源が枯渇しない

  2. 二酸化炭素や放射性廃棄物を排出しない

  3. 燃料が不要である(バイオエネルギーを除いて)

  4. 長期間の発電コストを予測できる

  5. 地域の資源を利用して小規模でも発電できる

出典:自然エネルギー財団『企業・自治体向け電力調達ガイドブック第4版(2021年版)』

2. 自然エネルギーの電力調達方法

では、自然エネルギーの調達方法にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、以下3つの電力調達方法をご紹介します。

  1. 自家発電・自家消費

  2. 小売電力事業所から「FIT電気」を購入する

  3. 小売電力事業所から「非FIT電気」を購入する

1)自家発電・自家消費

自然エネルギーの電力を調達する方法の1つとして、自前で発電設備を建設し、その電力を自家消費する方法があり、多くの場合、太陽光発電が採用されています。

自然エネルギーの電力を自家発電、自家消費することのメリットは、電気代を大きく節約できることです。

法人の契約電力は、「最大デマンド」という過去1年間で最も電気使用量が多い月(最大需要電力値)で料金が決まります。これは、例えば冷房の使用料が多い夏や、工場が最も稼働する年度末などの最大電力が基本となるので、電気使用量が多くない月があったとしても高い料金を払わなければなりません。

しかし、電力の自家発電・自家消費を行えば、電力の購入量を低く抑えることができ、コスト削減が期待できます。また、自社で自家発電を行っておけば、災害や停電などの非常用電源にもなります。

日本の太陽光発電のコストは年々低下を続けており、2023年に10円/kWhを切り、2030年までには5円前後まで下がる見通しです。太陽光発電のコストが下がれば、自家発電・自家消費のメリットもますます増えることになります。

出典:資源エネルギー庁「コストダウンの加速化について※2018年」を元にアスエネが作成

企業例では、イケア・ジャパン株式会社では店舗の屋上に太陽光パネルを設置し、太陽光発電の電力を自家発電・自家消費しています。

出典:自然エネルギー財団『イケアグループ、自然エネルギー100%を2020年に達成』(2018/11)

2)小売電気事業者から「FIT電気」を購入する

日本では、2012年から「FIT制度(固定価格買取制度)」が始まりました。自然エネルギーを促進するため、電力会社が一定価格によって一定期間買い取ることを国が約束している制度で、この制度を使って発電された電気のことを「FIT電気」と呼びます。

FIT制度では、電力会社が電気を買い取るための費用の一部は、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)として、私たち消費者が毎月支払う電気代に含まれています。化石エネルギーと比べて、再生可能エネルギーはまだコストが高いのでその分を補うことによって、再エネ電力を普及させることが狙いです。

しかし、「FIT電気の非化石価値は、再エネ賦課金を負担している消費者にある」という考えから、FIT電気は環境価値のない電力として扱われます。

小売電気事業者は、この環境価値のないFIT電気に、非化石証書を購入して組み合わせることで、「自然エネルギー100%の電気」として販売することができます。

FIT電気(環境価値が除かれた再生可能エネルギー)+非化石証書=自然エネルギー100%の電気

小売電気事業者はこのようなセットで、「自然エネルギー」として販売しているのです。2019年には、FIT電気は903億kWh(キロワット時)に達し、これは日本の総発電量の約1割に相当します。

出典:自然エネルギー財団『企業・自治体向け電力調達ガイドブック第4版(2021年版)』(p.18)

3)小売事業者から「非FIT電気」を購入する

自然エネルギーの発電設備で、20年以上経過しているとFITの対象から外れます。FITの買い取り期間を終了した「卒FIT」の発電設備も増えてきました。自然エネルギー財団によると、現在非FIT電気の多くは風力発電かバイオマス発電といわれています。

出典:自然エネルギー財団『企業・自治体向け電力調達ガイドブック第4版(2021年版)』(p.23)

<FITと非FITの違い>

  • FIT電気の環境価値=再生可能エネルギー100%の電気として認められない

  • 非FIT電気の環境価値=再生可能エネルギー100%の電気として認められる

FIT電気はFIT法で認められた電気で、国が固定価格で買い取ることを約束している電気です。その費用の一部は賦課金として電力を使う国民が支払っているため、FIT電気は環境価値のない電気として扱われます。

一方、非FIT電気はFIT法に属さない電気で、誰かが買い取る義務は発生しないため、電気の環境価値は、電気を買い取った人に属すことになります。

非FIT電気導入の事例として、地域金融機関の城南信用金庫は、2019年から廃棄物発電の自然エネルギー電力を導入しています。製紙会社がパルプを製造する過程で排出された、生物由来の廃液を使ったバイオマス発電による電力です。

出典:城南信用金庫『国内金融機関では日本初となる「RE100」に加盟』

3. 日本における自然エネルギーの課題

自然エネルギーの割合はわずか2割

日本国内において、自然エネルギーは徐々に普及してきてはいますが、全体のエネルギーに占める割合は18%(2018年時点)に過ぎません。自然エネルギーの普及が進む欧州では、既に自然エネルギーの年間発電量の割合が30%を超える国も多くあります。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

日本で自然エネルギーがなかなか進まない背景にはコスト面が影響しています。日本ではコスト削減が進んできたとは言え、太陽光発電は国際的な水準の約2倍とも言われています。自然エネルギーのコストを欧州のレベルまで削減することができれば、日本でもさらに普及が進むでしょう。

出典:資源エネルギー庁『再エネのコストを考える』(2017/9/14)

発電源のトラッキングシステムがない

トラッキングシステムとは、利用する電力が住宅用の太陽光か、大型水力か、別の種類の自然エネルギーなのか、発電設備を特定できることを指します。日本では、この自然エネルギーの電源を管理するトラッキングシステムの整備が遅れています。

FIT電気は非化石証書とセットで自然エネルギーとして販売しているとお伝えしましたが、非化石証書では太陽光や風力などの発電方法を選択することができず、どのような方法で発電された電力なのか不透明です。

国際イニシアティブの「RE100」では、発電設備を特定できない非化石証書は自然エネルギーの利用手段として認めていません。これを受けて、日本政府は2019年からトラッキングシステムの実験的導入を始めています。

出典:自然エネルギー財団『非化石証書の販売量が急増、電源不明の再エネ電力とCO2フリー電力に注意』(2020/11)

4. まとめ:自社に合った方法を取り入れてみよう

自然エネルギーの定義、日本や世界における状況、課題などをお伝えしました。自然エネルギーの電力調達方法としては以下の3つがあります。

  1. 自家発電・自家消費

  2. FIT電気

  3. 非FIT電気

企業や自治体によって、電力の調達方法は様々です。地域性や組織の状況によっても異なるでしょう。自然エネルギーを取り巻く環境は日々変化しています。

最新の情報を入手して、自社に合った自然エネルギーの電力導入を検討してみてください。本記事がその参考となれば幸いです。

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