再生可能エネルギー普及に向けた日本の方針と今後の課題

日本は2050年度の二酸化炭素排出量実質ゼロ社会を目指すために、再生可能エネルギーの比率を今後2030年度までに36〜38%に引き上げる可能性が報道されています。

この記事では、再生可能エネルギーの導入を検討されている法人の皆さまが知っておくべき、日本のエネルギー政策に関する基本的な方針や、日本の再生可能エネルギーの状況と今後の見通しと課題などについてご紹介します。日本の今後の再生可能エネルギーの見通しを理解した上で、企業の取り組みについて考えていただければと思います。

目次

  1. 今後の再生可能エネルギーに関する日本の方針

  2. 日本の再生可能エネルギーの現状と今後

  3. 日本の再生可能エネルギーの今後の課題

  4. まとめ:日本の再生可能エネルギーの今後を見通した取り組みを行おう!

1. 今後の再生可能エネルギーに関する日本の方針

日本はエネルギー政策の基本的な方針として「3E+S」を打ち出し、2030年度と2050年度に達成すべき目標を掲げています。ここでは「3E+S」の内容や、日本が掲げる2030年度と2050年度の発電電力量における再生エネルギーの比率をご紹介します。

日本のエネルギーに関する基本的な方針「3E+S」

日本は「3E+S」を基本的な考え方として、エネルギー政策を進めていく方針です。Safety(安全性)を大前提として、3つのEを同時に達成することを目標としています。

(1)Energy Security(自給率)

2030年度に東日本大震災前の約20%を上回る25%程度のエネルギー自給率を実現させること。

(2)Economic Efficiency(経済効率性)

電力コストを2013年度の9.7兆円から2030年度に9.5兆円まで引き下げること。

(3)Environment(環境適合)

2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減すること。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2019年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

2030年度に向けた日本の方針

経済産業省・資源エネルギー庁の発表によると、日本は2030年度に発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を2019年度の18%から22〜24%程度にすることを目標に設定しています。再生可能エネルギーの内訳は、水力が最も多く8.8〜9.2%程度、太陽光が7.0%程度、バイオマスが3.7〜4.6%、地熱が1.0〜1.1%程度とされています。

出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』(2021/3/1)(p.19)

2050年度に向けた日本の方針

経済産業省によると、刻々と変化する状況に対応するために2050年度の目標は1本化されておらず、複数の野心的なシナリオが用意されています。再生可能エネルギーに関しては、経済的に自立し、脱炭素化した主力電源化を目指す方針を固めています。

出典:『新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?』(2018/7/ 3)

2. 日本の再生可能エネルギーの現状と今後

日本は2030年度の再生エネルギーの電源比率を22〜24%程度にすることを目標にしています。具体的には水力を8.8〜9.2%程度、太陽光を7.0%程度、バイオマスを3.7〜4.6%、地熱を1.0〜1.1%程度にする方針です。ここでは再生可能エネルギーの種類別に日本の現在の普及状況と今後の課題についてご紹介します。

太陽光発電の普及状況と今後

日本は2030年度の再生エネルギーの電源比率を22〜24%程度とし、そのうち太陽光の比率を7.0%にすることを目標にしています。しかし共同通信社によると、経済産業省が2030年度の再生可能エネルギー比率を36~38%を軸に検討しているとされています。比率目標の引き上げは日本が2030年度の目標として掲げる温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減するという目標を達成するためです。

固定価格買取制度(FIT制度)が施行された2012年以降、日本では太陽光発電の導入件数が急増しています。経済産業省の発表によると、2011年度にはわずか0.4%だった太陽光発電が、2018年度には6.0%にまで伸びています。

出典:経済産業省『国内外の再生エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020/9)(p.6)

経済産業省は、現行の対策を継続し年間1.5GW程度の認定量を得られれば、新規案件の2030年度の導入量は14GWになり、既導入量と既認定未稼働分の74GWと併せると88GWになるとの見込みを発表しています。


出典:資源エネルギー庁『2030年度における再生可能エネルギーについて』(2021/4/7)(p.13)
出典:一般社団法人共同通信社『再エネ比率、36〜38%を軸』(2021/5/11)

水力発電の普及状況と今後

日本は2030年度の水力発電の比率を8.8〜9.2%程度にすることを目標にしています。経済産業省の発表によると、2011年に7.8%だった水力発電は、2018年には7.7%とわずかに減少しています。

2030年度の水力の導入見込みは、1094〜1165万kWです。経済産業省は、今後も現在の政策を継続し10万kW程度で認定が進むと、2030年度までの中小水力発電の増加見込み量が0.8GW(80.8万kW)になると発表しています。

出典:資源エネルギー庁『2030年度における再生可能エネルギーについて』(2021/4/7)(p.75)
出典:経済産業省『国内外の再生エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020/9)(p.6)

バイオマス発電の普及状況と今後

日本は2030年度のバイオマス発電の比率を3.7〜4.6%程度にすることを目標にしています。経済産業省の発表によると、バイオマス発電は2011年の1.5%から2018年には2.3%に増加しています。

2030年度におけるバイオマス発電の導入見込み量は、6〜7GW(602〜728万kW)です。

出典:経済産業省『国内外の再生エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020/9)(p.6)
出典:資源エネルギー庁『2030年度における再生可能エネルギーについて』(2021/4/7)(p.85)

地熱発電の普及状況と今後

日本は2030年度の地熱発電の比率目標を1.0〜1.1%程度にしていますが、経済産業省の発表によると、2011年の比率が0.2%で2018年も0.2%と横ばいです。

日本の2030年度における地熱発電の導入見込み量は、1.4〜1.6GW(140〜155万kW)です。

出典:経済産業省『国内外の再生エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020/9)(p.6)
出典:資源エネルギー庁『2030年度における再生可能エネルギーについて』(2021/4/7)(p.2)

3. 日本の再生可能エネルギーの今後の課題

日本は2050年度に二酸化炭素排出量実質ゼロのカーボンニュートラルの社会になることを目指しています。カーボンニュートラルの社会になるために、日本では2030年度と2050年度に具体的に再生可能エネルギー比率の目標を定めています。今後この目標を達成するためには、日本は現在抱える課題を解決する必要があります。ここでは、日本における再生可能エネルギーが抱える課題についてご紹介します。

発電コストを安くする

日本の再生可能エネルギーの導入比率は、世界から遅れていると言われています。その原因の1つとされるのが、発電コストの高さです。経済産業省の発表によると、世界の太陽光発電にかかるコストは、2009年の約35円kWhから2017年には約10円kWhにまでコストが下がっています。世界ではこうしたコストの安さが、さらに再生可能エネルギーの導入増加につながっています。

出典:資源エネルギー庁『再エネのコストを考える』(2017/9/14)

需要と供給バランスの制御

二酸化炭素を排出せずに環境に優しい再生可能エネルギーですが、天候や季節などに左右されるため、発電量が安定しないという課題があります。需要と供給のバランスが崩れると大規模停電のリスクがあります。日本は、今後需要と供給のバランスを保つシステムなどを開発する必要があります。

4. まとめ:日本の再生可能エネルギーの今後を見通した取り組みを行おう!

再生可能エネルギーの導入を検討されている法人の皆さまが知っておくべき日本の再生可能エネルギーの現状や今後の見通し、課題などについてお伝えしました。

日本の今後の再生可能エネルギーの動向を把握した上で、企業での取り組みを始めていただければと思います!

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