【グラフ解説】日本の再生可能エネルギーの割合は?現状と将来予測

菅総理の就任に伴い連日耳にするようになった「再生可能エネルギー」。理解に自信があるという方は少ないのではないでしょうか。ビジネス現場では、株主や取引先などから再エネの取り組みについて、問い合わせや要望を受け取る担当者も多いかと思います。

今や政府・企業・金融など、あらゆるところで再エネの取り組みが注目を浴びており、再エネについて正しく理解しておくことは必須課題となっています。今回は、再エネの定義から日本の普及率、世界の取り組みまでの基礎知識を、グラフを用いながら解説します。

目次

  1. 海外の化石燃料に頼らない、日本国産の再生可能エネルギー

  2. 「21.1%」日本における再生可能エネルギー割合の推移と予測

  3. 世界と比べる再生可能エネルギー割合の現状

  4. 再生可能エネルギーの日本普及のカギは発電コストの削減にあり

  5. まとめ:日本の再生可能エネルギーの割合と、企業の取り組み

1. 海外の化石燃料に頼らない、日本国産の再生可能エネルギー

最近、耳にする機会が増えた「再生可能エネルギー」とは一体どのようなエネルギーなのでしょうか。簡単に言えば、再生可能エネルギーとは、太陽光や風力など何度も繰り返し作ることのできるエネルギーのことです。

資源エネルギー庁『エネルギー供給構造高度化法』の定義では、下記のような解釈になります。

「再生可能エネルギー源」について、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。

つまり、再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスによって作られるエネルギーのことを指しています。

再生可能エネルギーの割合でいうと、下図の通り太陽光と水力が主な発電源であり、特に太陽光発電は成長著しいエネルギーとしてその存在感を高めています。

出典:ISEP『2020年(暦年)の自然エネルギー電力の割合』よりアスエネで作成

尚、よく混同される「自然エネルギー」とは、再生可能エネルギーの一部で、太陽光や風力、地熱など「自然現象」から得られるエネルギーのことを指します。つまり、廃棄物等を利用するバイオマスは再生可能エネルギーですが、自然エネルギーではないという解釈になります。

再エネが注目を浴びている理由の一つとして、環境に優しい側面があります。太陽光や風力で作られたエネルギーは地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出や、環境負荷がほとんど無く、設備さえあれば何度も繰り返し作ることが可能です。

現在日本における二酸化炭素の排出量のうち発電部門が40%を占めており、そのほとんどが火力発電によるものになります。そこで、日本全体としてカーボンニュートラルを目指すにあたり、再エネの導入が大きな注目を浴びているというわけです。

また、天然資源の乏しい日本において、再エネは自国で生産できる貴重なエネルギー源になります。再エネを普及させることで、環境負荷の低減に加えて日本のエネルギー自給率を高めることにも繋がるのです。

2. 日本における再生可能エネルギー割合の推移と予測

日本で使用されているエネルギーのうち、再生可能エネルギーでまかなわれている割合はどれくらいになるのでしょうか?

出典:経産省「2019年度電力調査統計表」資源エネルギー庁「エネルギーミックス実現レポート」を元にアスエネが作成

環境エネルギー政策研究所(iSEP)の発表によると、2020年度の再生可能エネルギーの比率は総発電量のうち、20.8%を占めます。2018年時点の政府計画(第5次エネルギー基本計画)では、2030年度に22~24%を目標とするとあり、現時点でほぼ達成水準にあります。

経産省の2050年の再エネ比率50~60%を目指すという表明や、2021年の第6次エネルギー基本計画策定に伴い、再エネ比率目標が30-40%前後に上方修正されることが予測されます。

菅首相が2020年10月26日に行った所信表明演説であったように、2050年の脱炭素社会の実現に向けて日本全体で再生可能エネルギーへの注目が高まってきています。それに伴い、企業が再エネ導入をする流れも進んできています。

とはいえ、火力発電に代表されるような化石燃料への依存度はいまだに高く、より再エネの比率を高めていくためにも、官民共同で再エネを推進していく必要があるといえそうです。

3. 世界と比べる再生可能エネルギー割合の現状

日本の再生可能エネルギーの現状は、諸外国と比較してどのような位置づけにあるのでしょうか。欧米と中国、日本の発電電力に占める再エネの割合の内訳は下記の通りになっています。

出典:資源エネルギー庁「2020-日本が抱えているエネルギー問題(後編)」(2020.12.10)

2018年のデータですが、ドイツなど欧州やカナダの再エネ比率が高いことがこのグラフから見て取れます。尚、このグラフには載っていませんが、デンマーク等の北欧の国では風力発電や水力発電など自然の力を利用して、80%を超える再エネ比率を達成している国もあり、再エネにおいては北欧が一丁目一番地であると言えます。

一方で、日本の再エネ割合が低く、まだ成長の余地があると言えます。現状、依然として再生可能エネルギー割合における諸外国との差があると分かりましたが、将来的な予測はどうでしょうか?

先に述べた通り、2020年時点の日本の将来目標は2030年に22%~24%です。一方、EUの国々では、フランスは2030年に40%、ドイツは2035年に65%をめざす等、日本を上回る高い目標を掲げています。

2060年のカーボンニュートラル、2050年には88%の再エネ比率を掲げた中国や、気候変動問題への具体的な政策を示したバイデン政権に移行したアメリカといった巨人国家でも、パリ協定の2度目標実現のために明確なアクションプランを策定しています。

日本政府が今後再エネ導入目標を高めるのは確実といっても過言ではなく、日本においても今後数年で再エネ需要がさらに高まってくるでしょう。

4. 再生可能エネルギーの日本普及のカギは発電コストの削減にあり

ここまでで再エネが社会的に必要なエネルギーであることは解説してきましたが、来るべき脱炭素社会の実現に向けて再エネをどのように普及させていけばいいのでしょうか?

ずばり結論から申し上げると、再エネ発電コストを下げていく必要があります。実際に再エネの発電コストは低下傾向にあり、太陽光発電に焦点を当ててみると、下記図のようになります。

2020年時点では14.6円/kWhとなっており、2025年には6.2円/kWhとコストが半減する予測で、今後も減少の見通しが立っています。

出典:資源エネルギー庁「コストダウンの加速化について※2018年」を元にアスエネが作成

再エネ普及を目的としたFIT制度の導入で、再エネ電源は増加した一方で、割高な固定価格での買い取りにより私たち消費者に負担としてのしかかっている側面もあります。「再生可能エネルギー発電促進賦課金」通称再エネ賦課金を毎月の電気料金に上乗せした形で負担しています。

再エネ賦課金の単価も2012年度の0.22円/kWhから、2019年度には2.98円/kWhと年々増加しており、今後も増加する見通しです。電力使用量の多い企業にとっては年間で約18万円負担する計算になります。このような背景もあり、消費者負担を軽減しながら再エネ普及するためには、再エネの発電コストをさらに下げていく必要があります。

最近では、コストも削減しつつ、再エネで発電された電力を供給している電力会社も増えてきており、企業においても様々な再エネ導入の方法を選択できるようになっています。

尚、電力事業者が企業の施設等に太陽光発電設備等を設置・所有した上で、電力を供給するとともに維持管理を行うPPA(Power Purchase Agreement/電力販売契約)と呼ばれるモデルも台頭してきており、今後より一層選択肢の幅が広がっていきます。

5. まとめ:日本の再生可能エネルギーの割合と、企業の取り組み

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力などの何度も繰り返し作ることができるエネルギーのことでした。

日本の再エネ割合は、2019年時点で21%とドイツやイギリスなどの欧州や隣国の中国と比べても低い水準にあり、脱炭素社会の実現に向けて今後、ペースを加速して比率を高めていく必要があります。

資源の乏しい日本において、他国の資源に頼る必要のない自然エネルギーはチャンスという見方もあります。石油や天然ガスといったエネルギー資源の大半を輸入に依存し、地政学リスクにさらされた状況からいち早く抜け出すという観点でも、日本で再エネ割合を高めていくことには大きな意義があるといえます。

再エネの普及が進んでいる諸外国に比べて、発電コストが高いといった改善すべき課題は依然として存在していますが、国を挙げて取り組みが加速していくことが確実視されています。そのような状況において、地球温暖化を助長する火力発電やリスクの大きな原子力発電の代替電源として、個人よりも影響力の大きな企業や自治体主導で普及を後押ししていく必要があるといえます。

 

再エネを積極的に利用した電気料金プランを取り揃えた電力会社も一段と増えてきた中で、環境に優しい電力プランを契約することで気候変動対策、ひいては、自社の企業イメージアップにつながる重要な一歩となります。

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