産業廃棄物のCO2をどう削減する?算定方法やCO2排出係数について
- 2023年11月05日
- CO2算定
産業廃棄物から排出されるCO2は、CO2排出係数と活動量により算定されています。産業廃棄物分野では紙おむつや紙くずなどにおいてCO2排出係数や活動量の変更が検討されています。この記事ではそもそもCO2排出係数とは何かやCO2の算定方法、産業廃棄物分野におけるCO2排出量を削減するための取り組みなどについてご紹介します。
目次
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CO2排出係数とは?
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産業廃棄物に関するCO2排出係数と活動量の変更点
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産業廃棄物によるCO2排出量を削減するための取り組み
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まとめ:算定方法やCO2排出係数を理解し、脱炭素に取り組もう!
1. CO2排出係数とは?
そもそもCO2排出係数とはどのようなものなのかや、CO2排出係数を用いてCO2排出量を算定する方法について整理しましょう。
そもそもCO2排出係数とは?
2006年4月から、CO2排出量が多い企業は特定排出者と位置づけられ、事業活動において排出されるCO2を算定し、国に報告することが義務づけられるようになりました。CO2排出係数とは、電力会社が電気を作る時に排出されるCO2の量を表す指標で、企業は契約している電力会社のCO2排出係数を用いてCO2排出量を算定します。
出典:環境省『制度概要 - 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度』
CO2排出量の算定方法
事業活動から排出されるCO2は、以下の手順で算定することができます。
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企業が行っている活動の抽出
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活動ごとのCO2排出量の算定
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活動ごとに算定したCO2排出量の合算
活動ごとのCO2排出量は、活動量にCO2排出係数を乗じることで求めることができます。Scope3をカテゴリごとに算定する時と考え方は基本的に同じです。
出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p.5)
出典:環境省『制度概要 - 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度』
2. 産業廃棄物に関するCO2排出係数と活動量の変更点
2020年度の温室効果ガス排出量算定方法検討会が開かれ、紙おむつ・紙くず・プラスチックごみに関するCO2排出係数や活動量の変更が議論されました。ここではどのような変更が検討されているのかについてご紹介します。
紙おむつの焼却に伴うCO2排出係数と活動量
紙おむつは国内焼却量の把握が困難であることから、国内生産量の全てが焼却されたとみなして活動量が設定されています。今後は「使用済み紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」に基づき、輸出入の紙おむつ量を考慮して活動量を設定することが検討されています。
CO2排出係数は、国内の知見不足を理由に、2006年のIPCCガイドラインのデフォルト値を用いて設定されています。今後は紙おむつの平均的な素材や素材構成比をもとに、日本独自のCO2排出係数を設定することが検討されています。
出典:環境省『廃棄物分野における排出量の算定方法について(案)』(2021/1/27)(p.1)
紙くずの焼却に伴うCO2排出係数
紙くずの焼却に伴うCO2排出量を算定する時に用いるCO2排出係数は、国内の知見不足のために2006年のIPCCガイドラインのデフォルト値を用いて設定されています。2017年度から2019年度に実施された「廃棄物の燃焼に伴うCO2排出削減対策効果の精緻化等に向けたCO2排出係数開発等調査委託業務」の調査に基づき、日本独自のCO2排出係数を設定することが検討されています。
出典:環境省『廃棄物分野における排出量の算定方法について(案)』(2021/1/27)(p.1)
プラスチックごみの焼却に伴うCO2排出係数と活動量
プラスチックごみの焼却に伴うCO2排出量は、プラスチックごみの焼却量にプラスチックごみの焼却に伴うCO2排出係数を乗じることで算定されています。2017年度から2019年度に実施された「廃棄物の燃焼に伴うCO2排出削減対策効果の精緻化等に向けたCO2排出係数開発等調査委託業務」の調査に基づき、実施調査に基づく水分割合と付着物重量割合を考慮した上で活動量を設定し、独自のCO2排出係数を設定することが検討されています。
出典:環境省『廃棄物分野における排出量の算定方法について(案)』(2021/1/27)(p.2)
3. 産業廃棄物によるCO2排出量を削減するための取り組み
産業廃棄物を燃やす時に多くのCO2が排出されます。ここでは、産業廃棄物によるCO2排出量の推移と産業廃棄物によるCO2排出量を削減するための取り組みについてご紹介します。
産業廃棄物によるCO2排出量の推移
2018年度における日本の廃棄物分野からのCO2排出量は3,782万トンで、日本の総排出量の約3.0%を占めています。廃棄物分野におけるCO2排出量を削減するための様々な取り組みにより、2005年度比で16.3%減っており、2013年度比では4.5%減っています。
出典:経済産業省『廃棄物分野における地球温暖化対策について』(2021/4/9)(p.2)
電気の使用に伴うCO2の削減
CO2排出係数が高いほどCO2排出量が多くなります。CO2排出係数が低い電力会社の電気を使用することで、産業廃棄物を焼却した時に排出されるCO2を削減することができます。
バイオプラスチック類の普及
バイオプラスチックとは、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの総称です。バイオプラスチックにはCO2排出量を削減するだけでなく、以下のような様々なメリットがあります。
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焼却から生物処理への転換による循環利用率の向上
リサイクル率が向上することで、廃棄物の焼却や最終処分量が削減し、廃棄物からのCO2排出量が削減します。
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枯渇性資源問題の解決
枯渇性資源である石油から再生可能資源に切り替えることで、枯渇性資源問題を解決することができます。
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海洋プラスチック問題の解決
プラスチックは生分解されないためそのまま海に蓄積していきます。海洋におけるプラスチック問題は深刻化しており、このままだと2050年には魚の量よりもプラスチック量の方が多くなると予測されています。
出典:環境省『バイオプラスチック概況』(2018/9/19)(p.4)
4. まとめ:算定方法やCO2排出係数を理解し、脱炭素に取り組もう!
産業廃棄物分野におけるCO2排出量の算定方法やCO2削減の取り組み例など法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。CO2の算定方法やCO2排出係数を理解し、脱炭素に取り組みましょう。