世界に深刻な影響を与える気候変動。今と未来に起こること

気温の上昇、海水温の上昇、北極海の海氷の減少などの気候変動が現在世界に深刻な影響を与えています。世界の気候変動を食い止める鍵となるのが、二酸化炭素排出量の削減です。このまま食い止めることができなければ、世界で今起きていることはますます深刻化します。世界で今起きていることを理解し、企業が二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みを始めるきっかけにつなげていただけたらと思います!

目次

  1. 気候変動が世界に与える影響

  2. 世界で気候変動が続くと未来でどんなことが起こる?

  3. 気候変動を食い止めるための世界の取り組み

  4. まとめ:気候変動が世界に与える影響を理解し、取り組みを始めよう!

1. 気候変動が世界に与える影響

温室効果ガス排出量の増加により世界では、気温の上昇、海水温の上昇、北極海における海氷現象など様々な気候変動が起きています。世界は今どのような状況下にあり、気候変動によりどのようなことが実際に起きているかについてご紹介します。

気温の上昇

気象庁の発表によると、1891年の統計開始以降、世界の年平均気温は100年あたり0.72℃の割合で高くなっています。気温の上昇は北半球と南半球ともに深刻な影響を与えています。気温の上昇が世界にもたらす影響として、深刻な干ばつや山火事の発生などがあります。実際に今、世界で気温の上昇によりどのようなことが起きているのか事例をご紹介します。

出典:気象庁『世界の年平均気温』
細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の30年平均値)

(1)アメリカ・カリフォルニア州

2020年8月16日にアメリカのカリフォルニア州にあるデス・ヴァリー国立公園で気温が摂氏54.4℃に達したことをBBCニュースが報じました。この異常とも言える猛暑によりカリフォルニア州にある発電所が機能しなくなり、停電が2日間続きました。またカリフォルニア州では翌月の9月に大規模な山火事が発生し、30人以上が亡くなっています。

出典:BBCニュース『アメリカの「死の谷」で54.4度、8月の世界最高気温か』(2020/8/18)
出典:BBCニュース『カリフォルニアの山火事、「気候変動で加速」科学者が警告』(2020/9/25)

(2)オーストラリア

2019年9月から2020年2月までオーストラリアで大規模森林火災が発生し、多くの野生動物が犠牲になりました。オーストラリアでの山火事を長引かせた原因とされているのが気温上昇による猛暑と乾燥です。オーストラリアは12月に史上最高気温となる40.9℃を記録しています。

出典:BBC『豪森林火災、温暖化で将来は「当たり前」に=英研究チーム』(2020/1/16)

海水温の上昇

気象庁の発表によると、1891年の統計開始以降、年平均海水温は増減を繰り返しながらも上昇しています。海水温の100年あたりの上昇は0.56℃で、2020年度の平年差は+0.31℃、1891年度以降で3番目に高い海水温を記録しています。海水温の上昇が世界に与える影響としては、洪水や台風などによる甚大な被害があります。実際に海水温の上昇により、世界で今起きている事例をご紹介します。

出典:気象庁『海面水温の長期変化傾向(全球平均)』(2021/2/15)
各年の値を黒い実線、5年移動平均値を青い実線、長期変化傾向を赤い実線で示している。平年値は1981〜2010年の30年平均値

(1)中国・江蘇省/湖北省

中国の江蘇省と湖北省地方では、2021年の4月末頃から気候変動による異常気象が続いており、両地方において5月に竜巻被害で12名が亡くなっています。

(2)アメリカ・北大西洋

海水温の上昇がハリケーンの勢力を強めていることを科学者が指摘しているとBBCが報じています。アメリカでは年々ハリケーンによる被害が深刻化していて、2020年11月には、北大西洋では過去最多となる29個目のハリケーンが発生しています。

出典:dmenuニュース『中国 竜巻相次ぎ12人死亡4月末から“異常気象”』(2021/05/15)
出典:BBCニュース『ハリケーン、温暖化の影響で上陸後も勢力維持 被害増大も』(2020/11/12)

北極海における海氷の減少

気象庁の発表によると、1979年以降、北極域の海氷域面積は減少傾向にあり1年あたりの減少量は北海道の面積に匹敵しています。

北極海の海氷が減少することが世界に与える影響としては、温暖化の加速や海洋生態系への影響などがあります。北極海の海氷が減少することで、実際に今北極海で起きている事例をご紹介します。

BBCニュースは、北極海の海氷が減少したことにより、ホッキョクグマの活動が限界にまで追い込まれており、このまま気候変動への対策を講じなければ、2100年にはホッキョクグマが絶滅する可能性があると報じています。ホッキョクグマには北極海に浮かぶ大きな海氷に乗ってアザラシを狩る習性があるためです。

出典:BBCニュース『ホッキョクグマ、2100年までに絶滅の恐れ 気候変動で』(2020/7/21)

2. 世界で気候変動が続くと未来でどんなことが起こる?

気候変動はすでに世界に様々な深刻な影響を与えます。このまま進むと、気温や海水温はどこまで上昇し、その結果どのようなことが起こるのかについてご紹介します。

2100年末の平均気温の上昇と平均海面水位の上昇

環境省の発表によると、2100年末に世界の平均気温は約1.8〜4.0℃上昇します。環境の保全と経済の発展が両立する世界では約1.8℃、化石エネルギー源と経済発展を重視した世界では約4.0℃の気温上昇が予測されています。平均海面水位についても予測されており、環境の保全と経済の発展が両立する世界では0.18〜0.38m、そうでない場合は0.26〜0.59m上昇するとされています。

出典:環境省『100年後の地球は?』(p.1)

平均気温の上昇と平均海面水位の上昇で起こること

IPPC (気候変動に関する政府間パネル)は、このまま世界で気候変動が続くと、2100年末には次のようなことが起こると予測しています。

(1)極端に暑い日が増加する可能性

2000年末に20年に1度しか発生しない最高気温が、2100年末には約2年に1度発生する。

(2)大雨の頻度が増加する可能性

2000年末に20年に1度しか上回らない降水量が、2100年末には約8年に1度発生する。

(3)短時間強雨の増加

2100年末には1時間の降水量が50mm以上の年平均発生回数が増加する。

出典:環境省『IPCC 第5次評価報告書の概要-第1作業部会(自然科学的根拠)-』(2014年12月版)(p.49〜51)

3. 気候変動を食い止めるための世界の取り組み

上記でご紹介したように、気候変動は世界に様々な深刻な影響を与えています。この気候変動を食い止めるための世界共通の目標として掲げられているのが、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」です。目標13の具体的な内容や、世界で今取り組まれている気候変動を食い止めるための事例についてご紹介します。

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」の設定

SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標の1つに、気候変動に対する取り組みが盛り込まれています。SDGsは2015年9月に、国連のサミットで国連加盟国全会一致で採択された世界共通の目標です。気候変動に対する目標は「13.気候変動に具体的な対策を」で、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じることが世界に求められています。

出典:外務省『JAPAN SDGs Action Platform』

二酸化炭素排出量削減に向けた世界の取り組み事例

気候変動の主な原因である二酸化炭素排出量削減に向けた世界での取り組み事例をいくつかご紹介します。

(1)ドイツ

2050年度までに、90年比で二酸化炭素排出量を80〜95%削減することを目標に掲げています。この目標を達成するための対策として、全ての部門でエネルギー需要を大幅に削減することや、電力発電をほぼ再生可能エネルギーにすることなどをあげています。

(2)アメリカ

2050年度までに2005年比で、二酸化炭素排出量を80%以上削減することを目標として掲げています。具体的な取り組みとしては、電源構成を再生エネルギー55%、原子力17%、CCUS付き火力を20%にすること、化石燃料の利用を削減することをあげています。CCUS付き火力とは、分離・貯留した二酸化炭素を他の経済活動に使うことで、二酸化炭素の量を削減させるものです。

出典:環境省『各国の長期戦略について』(p.2)
出典:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」』(2017/11/14)

二酸化炭素排出量削減に向けた日本の取り組み事例

日本は、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年比で46%削減し、2050年には二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げています。この目的を達成するために、様々な自治体や企業が二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みを行っています。

(1)ブラザー工業株式会社

ブラザー工業株式会社は、2030年度までに二酸化炭素排出量を2015年比で30%削減することを目標に掲げています。全体の目標の他に工場ごとでも目標を設定しています。具体的な取り組みとしては、最新の省エネ設備導入や照明のLED化の推進などを行っています。

(2)共立印刷株式会社

生産ラインの設計や電気やガスの使用を削減するなど印刷工程を1つ1つ見直すことで、2021年度に2004年比で、電気にかかる二酸化炭素排出量を43.9%削減、ガスにかかる二酸化炭素排出量を47.0%削減しています。

出典:ブラザー工業株式会社『気候変動イニシアティブ』
出典:共立印刷株式会社『地球環境の考え方』

4. まとめ:気候変動が世界に与える状況を理解し、取り組みを始めよう!

この記事では、企業の皆さまが知っておくべき、気候変動が世界に与えている影響についてお伝えしました。これ以上、異常気象を進行させないためには、企業を中心とする二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みが欠かせません。世界で今起きていることを正しく理解し、企業で二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みを始めましょう!

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