電力分野は脱炭素へどう取り組む?CO2排出係数の目標とは

日本のCO2排出量は、CO2排出係数と活動量をもとに算定されていますが、CO2排出量のうち最も大きい割合を占めているのが電力分野からの排出です。電力分野の脱炭素への取り組みなくして、2050年までのカーボンニュートラルを実現することはできません。

この記事では、電力分野のCO2排出状況や脱炭素の取り組み例、電力分野の脱炭素の鍵を握るCO2排出係数など、法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. 電力分野におけるCO2排出量はどのくらい?

  2. 電力分野における脱炭素への取り組み

  3. 電力分野の脱炭素の鍵を握るCO2排出係数

  4. まとめ:電力分野のCO2削減は重要な課題!脱炭素に取り組もう。

1. 電力分野におけるCO2排出量はどのくらい?

日本から排出されるCO2のうち、電力分野からの排出はどのくらいの割合を占めているのでしょうか。ここでは、電力分野におけるCO2排出量の割合やCO2排出係数を用いてCO2排出量を算定する方法についてご紹介します。

電力分野におけるCO2排出量

日本における2020年度の直接排出量にあたるCO2は約10億4400万トンです。全体に占める割合が大きい順に並べると、以下のようになります。

  • エネルギー転換部門 40.4%

  • 産業部門 24.3%

  • 運輸部門 17.0%

  • 業務その他部門 5.5%

  • 家庭部門 5.3%

  • 工業プロセス 4.1%

  • 廃棄物 3.0%

日本におけるCO2排出量の約4割をエネルギー転換部門が占めていることから、電力分野は脱炭素に取り組む必要があります。

日本の部門別二酸化炭素排出量の割合 直接排出量

出典:JCCCA『4-4日本の部門別二酸化炭素排出量(2020年度)』

CO2排出量の算定方法

企業が事業活動を通して排出するCO2の量は、CO2排出係数に活動量を乗じることで算定することができます。電力会社も活動量にCO2排出係数を乗じることでCO2排出量を算定します。

活動量とは事業者の活動の規模に関する量を表す指標で、CO2排出係数とは活動に伴い排出されるCO2を表す指標です。活動量のデータ収集は、社内の各種データや文献データ、業界平均データなどを活用することができます。CO2排出係数は、環境省が公表しているデータベースを用いるのが一般的です。

出典:環境省『Scope3 〜算定編〜』(p.4)

2. 電力分野における脱炭素への取り組み

国は電力分野における脱炭素をどのように捉えているのでしょうか。ここでは、電力分野における国の方針や電力会社ができる脱炭素の取り組み例などについてご紹介します。

電力分野における国の方針

国は電力分野におけるトランジション・ロードマップを策定し、日本のCO2排出量のうち電力由来の間接排出が約4割を占めることから、電力分野におけるCO2排出量の削減は解決すべき差し迫った課題と捉えています。日本は電源構成の約8割を火力発電が占めていることから、電源の脱炭素化を促進する方針を固めています。

出典:経済産業省『電力分野のトランジション・ロードマップ』(2022年2月)(p.8)

電力会社の脱炭素の取り組み事例

電力会社ができる脱炭素の取り組み例として、CO2排出係数の数値を小さくすることなどがあります。CO2排出係数の値はCO2排出量と関係があり、CO2排出係数の値が小さいほどCO2排出量が少なくなります。この他に、再生可能エネルギー由来の電力を活用することも脱炭素の重要な取り組みになります。再生可能エネルギー由来の電力はライフサイクルにおいてCO2が排出されますが、発電時にはCO2を排出しません。

各種発電技術のライフサイクルCO2排出量出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)

3. 電力分野の脱炭素の鍵を握るCO2排出係数

CO2排出係数の値を小さくすることが電力分野の重要な脱炭素の取り組みになります。ここでは、日本の平均CO2排出係数の値や今後の目標値についてご紹介します。

日本のCO2排出係数状況

CO2排出係数は、電力会社が電力を作る時に排出する電力1kWhあたりのCO2排出量を表す指標です。CO2排出係数の値を小さくすることで、CO2排出量を削減することができます。CO2排出係数は電力会社により異なりますが、日本におけるCO2排出係数の平均は0.44kg-CO2/kWhです。CO2排出係数が0.04kg-CO2/kWhのフランスと比較すると値は非常に大きいです。

CO2排出係数・発電端の各国比較

出典:エネ百科『CO2排出係数(発電端)の各国比較』(2022/2/16)

各電力会社によるCO2排出係数目標

日本では2007年以降、ゆるやかではありますがCO2排出係数の値は小さくなっていました。しかし東日本大震災後の原子力発電の停止などの影響を受け、2011〜2013年にかけCO2排出係数の値が大きくなっています。電力会社の取り組みなどにより値は小さくなっており、2030年度までにCO2排出係数を0.37kg-CO2/kWh程度に下げる目標を設定しています。

【第133-1-2】各国のCO2排出係数実績と日本の2030年度目標

出典:環境省『第3節 電力分野の新たな仕組み~電力分野の革新~』

4. まとめ:電力分野のCO2削減は重要な課題!脱炭素に取り組もう。

この記事では、日本の電力分野におけるCO2排出状況や脱炭素の取り組み例などについてご紹介しました。日本のCO2排出量の多くを電力分野からの排出が占めていることから、電力分野の脱炭素の取り組みは欠かせません。CO2排出係数などへの理解を深め、脱炭素に取り組みましょう!

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