日本を金属リサイクルの拠点に?日本の戦略と補助金事業について

将来的な天然資源の枯渇リスクや、日本ではレアメタルの安定供給の確保が課題とされることから、日本では金属リサイクルの議論が活発化しています。金属リサイクルはEV車普及の鍵を握るとも言われており、今後さらにリサイクルへの取り組みが進むものと考えられます。

この記事では、レアアースやリチウムなど金属のリサイクルに関心がある法人の皆さまが、金属リサイクルについて知っておくべき基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. 金属リサイクルが重視される背景

  2. リサイクルできる金属の種類

  3. 金属リサイクル促進を目指す補助金事業

  4. まとめ:金属リサイクルに取り組み、脱炭素に貢献しよう!

1. 金属リサイクルが重視される背景

日本では金属リサイクルについての議論が活発化しています。なぜ金属リサイクルをする必要があるのかや、日本が抱える課題についてご紹介します。

なぜ金属リサイクルをする必要があるのか?

金属リサイクルが重視されている背景にあるのが、天然資源の枯渇リスクとレアメタルの安定供給の確保です。レアメタルはPCや携帯電話など精密機器に使用される他、EV車のバッテリーの原材料でもあるため、日本ではレアメタルを確保しようとする動きが出ています。

出典:環境省『第 3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用』

日本が抱える課題

日本はベースメタルとレアメタルの両方をほぼ輸入に頼っています。レアメタルの1つであるレアアースの58%を中国から輸入しています。必要な資源を自国で生産することができず、輸入する国に偏りがあることは、情勢に左右されることを意味しています。日本でこれらの金属が採掘できないというわけではありませんが、生産量が少なく生産コストが見合わないことから活用されていません。

日本のレアアース輸入における中国への依存度(2018年度)

日本のレアアース輸入における中国依存度 2018年

出典:経済産業省『日本の新たな国際資源戦略③レアメタルを戦略的に確保するために』(2020/7/31)

2. リサイクルできる金属の種類・日本の取り組み

金属はベースメタルとレアメタルに分類されており、製品別に定められた法律に基づき金属のリサイクルが実施されています。ここではベースメタルとレアメタルの違いや、日本ではどのように金属のリサイクルが実施されているのかをご紹介します。

リサイクルできる金属の種類

金属は市場での取引量により大きくベースメタルとレアメタルに分類されています。取引量の多い金属はベースメタルと呼ばれており銅や鉛、亜鉛、アルミニウムなどがあります。一方、採掘できる量が少ないまたは量はあっても採掘が難しい金属はレアメタルと呼ばれています。レアメタルの種類には、レアアースやリチウム、ニッケル、クロムなどがあります。

金属の分類

出典:外務省『金属鉱物資源をめぐる外交的取組~ベースメタルとレアメタルの安定確保に向けて』(2011/2/25)

日本の金属リサイクルの現状

日本では製品別に法律に基づき金属リサイクルを実施しています。エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機を廃棄する時は、家電リサイクル法によりリサイクルをすることが義務化されています。廃棄された家電から鉄と銅、アルミニウムなどの金属が回収され、再び商品化され市場に出回ります。パソコンや自動車用バッテリーは資源有効利用促進法、自動車は自動車リサイクル法によりリサイクルが義務化されており、金属の回収が行われています。

金属資源のリサイクルの流れ

出典:環境省『第 3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用』

3. 金属リサイクル促進を目指す補助金事業

日本は金属リサイクルの促進を目指し、環境省が主体となる補助金事業を実施しています。ここでは補助金事業の目的や概要についてご紹介します。

脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業の目的・概要

環境省が主体となり、金属リサイクルシステムの実証事業が2020年度から2022年度まで実施されます。令和2年度予算額は 500百万円です。また、脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業の目的は大きく3つ設定されています。

  • 金属リサイクルシステムの脱炭素化

  • 社会全体での資源生産性の向上・各種リサイクル法の政策効果向上

  • AIを活用したリサイクル業における人手不足の解消 など

出典:環境省『脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業』(p.1)

脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業の取り組み事例

(1)株式会社アステック入江

プラチナなど資源確保が困難な白金族金属の確保を目的とし、既に構築されている電子基板の回収・リサイクルシステムにAI画像認識選別システムを導入することで、白金族金属をターゲットとするシステムの構築を目指す実証実験を進めています。

出典:株式会社アステック入江『電子基板及び自動車部品の未回収白金族 リサイクルシステム実証事業(その2)』(2021年3月)(p. 1.2)

(2)三菱マテリアル株式会社

三菱マテリアル株式会社は、金属リサイクルの日本磁力選鉱と共同でEV車に搭載されているリチウムイオン電池からニッケルやコバルトを回収する技術を開発するための実証実験を進めています。

出典:日本経済新聞『車載電池からレアメタル回収 三菱マテ・日本磁力が技術開発』(2018/8/20)

4. まとめ:金属リサイクルに取り組み、脱炭素に貢献しよう!

この記事では、金属リサイクルが重視される理由や日本が抱える課題、金属リサイクルの取り組みなど法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。金属リサイクルに取り組み、脱炭素に貢献しましょう。

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