CO2排出係数とは?算出方法は?企業が考えるべきポイントを解説

現在、地球温暖化が問題視され、企業のCO2排出削減への取り組みが注目されています。しかし、排出係数や削減目標などの数値に不透明な点も多く、どのように取り組めば良いかわかりづらいという声も多いようです。

ここではCO2排出削減に取り組むうえで知っておきたい「CO2排出係数」について解説していきます。CO2排出係数とは?その算出方法は?企業としてどのように活用すれば良いのか?を詳しくみていきましょう。

目次

  1. CO2排出係数とは?

  2. CO2排出係数の算出方法

  3. 企業が考えるべきCO2排出係数とは?

  4. CO2排出係数を正しく把握し、企業の活動に役立てよう

1. CO2排出係数とは?

CO2排出係数とは、「電力会社が電力を作り出す際に、どれだけのCO2を排出したかを指し示す数値」となります。本来は様々な事業活動での単位生産量・消費量等あたりの二酸化炭素の排出量を表す数値ですが、一般的には電力面に限った数値として使われることが多くなっています。

これは、発電のために使用される、石油・石炭・天然ガスなどの燃料の違いや地域の電力需要(沖縄などは、他地域に対して少ない需要を地域内で満たすため、CO2排出量の多い小規模発電施設に頼ざるを得ない)により差が発生します。

出典:環境省『各部門別の排出実態と対策の現状』

電気事業者別排出係数ー平成28年度実績(kg-co2/kwh)

出典:環境省『電気事業者別排出係数一覧』(平成29年12月21日)

近年話題となっている、風力や太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーによる発電については、CO2 の排出がないため、「CO2排出係数=0」となります。(実際の計算では地球温暖化対策推進法(温対法)に基づき、全国平均値の0.550kg/kwhに設定されています。)

環境省では、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、二酸化炭素等の温室効果ガスを一定量排出する電気事業者に排出量の報告・公表を義務付けています。

出典:環境省『電気事業者別排出係数令和元年実績』(令和3年1月)

では、実際にCO2排出係数についての算出方法について解説していきます。

2. CO2排出係数の算出方法

各電力会社のCO2排出係数は、

  • 二酸化炭素排出量÷販売電力量=「kg‐CO2/kwh」

出典:環境省『排出係数の算出方法について』

という計算式で表されます。一般的には、電力会社は、このCO2排出係数を下げるために再生可能エネルギーの利用や、再生可能エネルギー発電の固定価格買取制度(FIT)など、非化石証書による環境価値の償却を行っており、こちらを加味した「調整後排出係数」が使用されます。

※固定価格買取制度(FIT)とは、「FeedInTariffフィードインタリフ)」という、風力や太陽光からつくられた電気を国で定めた価格で買い取るよう、電力会社に義務づける制度です。買取費用の一部は「再エネ賦課金」という形で利用する消費者が負担しています。日本では2012年に制定され、2017年に改定されています。

企業がCO2排出量を算出する際はこのCO2排出係数が使用され、

  • CO2排出量=電力使用量(kwh)×CO2排出係数(kg-Co2/kwh)

となります。電力使用量が同じである場合、CO2排出係数が低い方がCO2排出量が少なくなりますので、このCO2排出係数の低い電力会社や、再生可能エネルギーなど排出係数が小さいプランの電力を選択することで、企業のCO2排出量の削減につながるわけです。

それでは、CO2排出削減に取り組む企業は、このCO2排出係数をどのように活用すれば良いのでしょうか。ここからは企業におけるCO2排出係数の考え方について解説していきます。

3. 企業が考えるべきCO2排出係数とは?

平成18年から、地球温暖化対策推進に関する法律(温対法)により、温室効果ガス排出量が規定値を超える事業者に対しての報告義務が定められています。

出典:環境省『温室効果ガス排出量算定・報告公表制度』

これにより、企業はCO2排出量の算出のため、CO2排出係数を利用する必要ができたのです。また、近年では排出量削減の取り組みとして、CO2排出係数の低い電力を利用して削減するという方法が増えています。

電気事業者によっては再生可能エネルギーの使用比率により、いくつかのメニューを用意している場合もあり、どのメニューを選ぶかによって、CO2排出係数に差がありますので、電力会社の選択だけでなく、メニューの選択も考えていきましょう。

出典:環境省『電気事業者別排出係数』(令和2年1月)

さらに、CO2排出係数をもっと数値として落とし込んで活用したい場合、2010年京都大学の論文にCO2排出係数を使用した企業における温室効果ガス削減費用計算の計算式なども発表されていますので、参考にしてみると良いでしょう。

出典:京都大学『企業における温室効果ガス削減費用計算の基本モデル

CO2 排出係数の見直しはCO2排出量の削減に直結します。CO2排出量の削減に取り組む上での優先度は非常に高くなるでしょう。

4. CO2排出係数を正しく把握し、企業の活動に役立てよう

  • CO2排出係数とは電力会社が電力を作り出す際に、どれだけのCO2を排出したかを指し示す数値である。

  • CO2排出係数は、発電の燃料や地域の電力需要により差が発生する。

  • 再生可能エネルギーによる発電は、CO2排出係数は0となる。

  • 企業の電力面のCO2排出量は電力使用料(kwh)×CO2排出係数(kg-Co2/kwh)で算出する。

  • CO2排出係数の低い電気事業者の選択により、温室効果ガスの排出量を削減できる。

いろいろなところでCO2排出削減に向けた行動内容は目にしますが、具体的な数値が見えにくいのが温室効果ガスの排出量となります。

このCO2排出係数を工夫することで、実質的にCO2排出量を削減できます。また、自社の排出係数を正しく理解することで、現状の環境負荷を把握でき、目標設定にも役立つでしょう。ここでは簡略化して解説していますが、興味のある方は様々な資料や論文に記述されていますので調べてみてはいかがでしょうか。

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