世界的な意識の高まり。世界各国の環境問題と企業の対策事例とは

環境問題への取り組みは、世界的に取り組むべき大きな課題です。国家同士のさまざまな取り決めや、各国それぞれでの施策の実施、企業ごとの取り組みなど、環境問題への対策は全世界的に強化されています。

環境対策は、これから先ビジネス的な観点からも無視できないポイントとなります。そもそも世界の環境問題の現状や、ビジネスに与える影響、具体的な取り組み事例などをチェックして、ぜひ自社でのビジネスにお役立てください。

目次

  1. 今、世界の環境問題はどうなっているのか

  2. 世界の環境問題がビジネスに及ぼす影響とは

  3. 世界の環境問題とSDGsの関係

  4. 世界の環境問題対策を実行している企業の事例

  5. 世界の環境問題は今後どうなるか

  6. 世界の環境問題のまとめ

1. 今、世界の環境問題はどうなっているのか

現状、世界の環境問題はどうなっているのでしょうか。そもそも、全世界的に環境問題への対策を明確化したのは1997年の「京都議定書」と、2015年の「パリ協定」です。

京都議定書では、先進国に対して2008年から2012年の間に、地球温暖化の原因である二酸化炭素などの温室効果ガスの量を、1990年を基準として減少させるという目標が明確にされました。

結果としては、23カ国全てで目標達成という形となり、世界的な環境への取り組みとして良いスタートを切りました。

一方で、先進国以外の経済発展が著しいBRICsなどの国々での温室効果ガス排出量は増加しています。直近の傾向を鑑みて、先進国だけでなく、全世界的に環境問題への取り組みを強く求めたのがパリ協定です。

パリ協定では、世界150以上の国の同意のもと、産業革命以降の全世界の平均気温の上昇を2℃未満にすることが求められています。

パリ協定の目標は各国に委ねられていて、達成までの期間の縛りはありません。日本は2021年4月22日に、2030年の温室効果ガスの排出量を2013年と比べて46%削減することを目標と設定しています。

出典:地球環境ニュース『京都議定書の達成状況』(2014年7月)

出典:気候変動イニシアチブ『日本政府の2030年度46%目標への末吉JCI代表コメント』(2021年4月22日)

以前に比べて改善されているポイント

環境対策として、改善されているのは先進国の温室効果ガスの排出量です。

京都議定書の目標を達成しているように、先進国ではクリーンエネルギーの活用や新たな原料の開発など、環境問題への具体的な対策が進んでいます。

取り組みを強化すべきポイント

環境問題について、今後対策を強化すべきポイントは先進国以外の各国の取り組みです。

元々、先進国による経済発展が地球温暖化が進めてしまった一因であることは事実です。国連でも「共通だが差異ある責任」として、温室効果ガス排出による地球温暖化は全世界の課題だが、先進国はたくさん排出したのでその分取り組むハードルも高く設定するという考え方が基本でした。

しかし、2016年には温室効果ガスの歴史的累計排出量で、先進国が28%に対して61%と2倍以上の差が生まれています。特に経済発展が著しいBRICsは国土も広く温室効果ガスによって直ちに国家運営に影響が無いので、経済発展を優先させています。

出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所 『第15回 地球温暖化をめぐり途上国は先進国と対立しているのですか?』(2020年11月)

実際に、全世界の二酸化炭素排出量のトップ5には中国、インド、ロシアとBRICsに含まれる3カ国がランクインしています。特に中国の二酸化炭素排出量は、全世界の23.2%を占めており、2位のアメリカの14.5%の1.6倍となっています。

つまり、京都議定書で選定されていない途上国が著しい発展を遂げたことで、先進国よりも温室効果ガスの排出量が増えてしまっている状態です。

パリ協定によって初めて環境問題へ立ち向かう国の対策が、全世界の目標に対してどれだけ影響を及ぼすのかは注視すべきポイントです。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁 『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017年8月17日)

環境問題は、先進国だけでなく、全世界・全人類共通の課題です。個人はもちろん、企業としても日本のパリ協定における目標を達成するために、どんな取り組みができるかは、非常に重要なポイントとなります。

2. 世界の環境問題がビジネスに及ぼす影響とは

環境問題への対策は、企業にとって様々な部分に影響を与えます。例えば、環境への取り組みとして、再生可能エネルギーの利活用など温室効果ガスを生み出しにくいエネルギーが求められます。

一方で、そのせいで利益が削られて企業として立ち行かなくなるのは効果的とは言えません。環境への取り組みを単体で考えるのではなく、ビジネス面でも有効活用することで企業価値も同時に高めていきましょう。

企業ブランディングの強化につながる

企業にとって、環境へ配慮した取り組みはブランディングの要素として非常に重要です。どれだけ素晴らしい製品を作っても、環境破壊を伴う製造方法だと短期的な利益にしかつながりません。

地球環境を大切にして、中長期的な目線で事業を行っている企業の行動はブランディングに直結します。

例えば、スターバックスコーヒー社はサステナブルを意識して、2020年1月からプラスチックストローから紙ストローへの変更を行い、プラスチック削減に取り組んでいます。

出典:スターバックスコーヒー 『スターバックス国内店舗で、サステナブルな未来につながるFSC® 認証紙ストローでの提供を開始』(2019年11月26日)

環境への配慮が投資の基準として求められるように

ESG経営をご存じでしょうか?Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統制)の3つの頭文字を取った言葉で、企業の中長期的な成長には欠かせない指標となります。

今では財務状況と並んで、投資家の投資判断基準となるほど重要なポイントです。環境へ配慮した取り組みは、ESG経営としても高い評価を得られるので、投資を得られやすくなるといったメリットがあります。

近年では環境への取り組みのコストも安価になっている

環境問題への取り組みは、メリットだけでなくデメリットもあります。特に日本では、クリーンエネルギーや環境に配慮した原料や容器は通常のものに比べて高くコストが上がる場合がほとんどです。

一方で、世界的に見るとクリーンエネルギーのコストは、陸上風力発電で6セント/kWh、バイオ燃料で7セント/kWhとなっています。従来の化石燃料による火力発電は5〜17セント/kWhなので、同水準もしくはコスト削減としてで利用できます。

コストが抑えられる背景には、技術の進歩に加えて市場が発達してきたので安価で供給する仕組みが整ってきたことが挙げられます。今後、日本もクリーンエネルギーが強化されることで更に充実し、コストが下がっていくと考えられます。

出典:自然エネルギー財団 『世界の自然エネルギー発電コスト:陸上風力は6セント/kWhに低下』(2018年1月23日)

3. 世界の環境問題とSDGsの関係

世界の環境問題についての取り組みを考える上で、SDGsは切り離せません。SDGsは「Sustainable Development Goals」を略したもので、2015年の国連サミットで採択されました。

SDGsは「持続可能な開発」を念頭に、国連に加盟している193ヶ国が、2016年から2030年までの15年間で達成すべき17の目標を設定しています。

SDGsの中には「7番 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「13番 気候変動に具体的な対策を」など環境に関わる目標も多く含まれています。まさしく、環境への取り組みが全世界共通の課題として取り上げられた目標と言えるでしょう。

出典:外務省 『SDGsとは』

持続可能な開発とは

持続可能な開発は、「将来世代の欲求と現代の人々の欲求を同時に満たせるもの」として定義付けられています。現代の技術開発だけを考えて、環境破壊も行ってしまうと、将来世代に大きな負担をかけてしまいます。

逆に、将来の世代の事だけを考えると、現代で不便になってしまい欲求を満たせなくなるといったことに陥ることも考えられます。あくまで、現代から将来にも安定して実行できる技術開発が「持続可能な開発」に値します。

売上と環境問題対策のバランス

企業にとっては、売上や利益といったビジネス面を伸ばすことは非常に重要です。ボランティアではない以上、利益を生まなければ従業員の生活も守れず、倒産してしまいます。

環境対策へコストやリソースを割くことで利益を圧迫して企業運営がうまくいかなくなるのは本末転倒です。中長期的に安定して企業が成長する上でも、環境問題へ取り組む際には、売上とのバランスを意識しましょう。

ESGとの関連性

ESG経営は、透明性を持った経営層によって環境や社会にプラスの影響を与えるという経営方針です。

短期的な利益のみを追求せず、環境や社会に良い影響を与えながら企業も成長するという取り組みなので、持続的な発展で安定したリターンのが得られると投資家もESGへの取り組みを重要視しています。

ESGは企業の評価軸、SDGsは個人も含む目標という違いはありますが、ベースはほとんど同じ考え方と言えるでしょう。

4. 世界の環境問題対策を実行している企業の事例

世界の環境問題対策の実行企業は非常に増えています。今や国際的に高く評価されている企業は軒並み環境問題対策へ強く取り組んでいます。

業種や業界問わず、さまざまな事例をチェックしてみましょう。

世界的な企業の取り組み例とは

世界的にさまざまな企業が環境問題へ取り組んでいますが、代表的なものを2つ紹介します。まず1つ目は、重工業で世界的に有名なアメリカのゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)です。

ゼネラル・エレクトリック・カンパニーは2020年9月に主力事業の石炭火力発電のガスタービン事業から撤退することを明らかにし、再生可能エネルギー事業に注力することを発表しました。

また2つ目は、スポーツメーカーのadidas(アディダス)です。adidasは、環境汚染への意識が高く、プラスチックゴミをウェアやシューズに作り変えるという取り組みを進めています。

また、メイン商品でもあるスタンスミスは100%サステナブル素材で製造されるほど徹底されています。

出典:GE社プレスリリース 『GE、再生可能エネルギーへの累積投資額が100億ドルに クリーンな電力供給および雇用創出を実現』(2014年4月28日)

出典:アディダス社 『海洋プラスチック廃棄物を有益なものに変えるためのアディダスとパーレイの取り組み。』

日本企業の取り組み例とは

日本企業では、株式会社ユーグレナが「サステナビリティ・ファースト」を掲げて事業を通してSDGsの目標達成や、ESG経営を進めています。

メインであるスーパーフード「ミドリムシ」を軸とした健康食品事業だけでなく、バイオマス燃料事業や海外農家の生計向上や食品提供などを行っています。

出典:株式会社ユーグレナ 『サステナビリティ』

中小企業で取り組めること

環境対策へはさまざまな切り口からの取り組みがありますが、大掛かりな取り組みはコストもリソースもかかります。大企業で無い限り、環境対策へ大きな予算を確保するのは難易度が高いです。

だからこそ、まずはすぐに取り組めることからはじめていきましょう。例えばこまめな節電。クールビズやウォームビズの採用でエアコンの利用を控えることで温室効果ガスの排出を抑えられます。また、比較的取り組みやすい、使用電力の再生可能エネルギー化なども注目されています。

5. 世界の環境問題は今後どうなるか

世界的な環境問題への意識の高まりは、今後どのような方向性に進んでいくのでしょうか。企業側の意識はもちろん、ユーザーの意識も変わっていくことが想定されるので、合わせた施策を取っていくことが重要です。

2030年の目標を設定しているSDGsの達成が一つのポイントとなるので、関連するポイントをチェックしましょう。

エコ意識の増加

企業、ユーザーともにこれまで以上にエコ意識の増加が考えられます。コンビニやスーパーでもレジ袋はお金を払って買うものとなっており、エコバッグの利用率が上がっています。

レジ袋はプラスチック製なので、環境汚染の原因の一つとなってしまいます。エコバッグを使ってレジ袋の全体的な消費を抑えることで、ユーザーも環境対策を実行していると意識付けられ、エコなものを選ぶように意識が高まることが考えられます。

出典:経済産業省 『レジ袋有料化について』(2020年2月6日)

化石燃料から再生可能エネルギーへの転換

エネルギーもこれから大きく変わることが期待される分野です。

石油や石炭といった化石燃料による発電ではなく、再生可能エネルギーの利活用が更に進み、環境への負荷を減らしながら便利な生活との両立が期待されます。

環境対策企業が顧客から選ばれるように

ユーザーがエコに意識を向けていくと、商品を選ぶ上でも環境へ配慮しているかどうかがポイントになります。エシカル消費と呼ばれる、商品を製造する上で環境や人権に配慮されたものかといった判断基準も更に世の中に浸透していくと考えられます。

企業側も、SDGsやESG経営への取り組みがユーザーに選ばれる理由になることを念頭に、環境への取り組みを意識しないと、ユーザー離れに繋がってしまいます。

出典:消費者庁 『エシカル消費とは』

6. 世界の環境問題のまとめ

世界的に、環境問題への取り組みは大きな課題となっています。ビジネス面でも、エシカル消費やユーザーのエコ意識の高まりによって「環境に配慮している商品を選ぶ」といった判断基準が定着しつつあります。

2015年に国連で採択されたSDGsや、投資家の投資基準となっているESGへの取り組みなど、環境への取り組みがそのまま企業価値のアップにつながる時代になっています。企業として、ユーザーのエコ意識に耐えられる製品の開発やサステナビリティの実践など大きなポイントも意識する必要があります。

ただ、大きなポイントでなくともエアコンの利用を控えたり、物品購入時にエコな製品を選ぶなど、すぐに取りかかることができる地道な活動も充分に環境対策と言えます。

まずは、目の前のできることから環境対策をはじめてみましょう。

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