Scope3 カテゴリ12の算定にチャレンジ

世界で脱炭素化が加速する中、Scope3の算定が企業に当たり前のように求められる時代になりました。この記事では、15個あるカテゴリのうちカテゴリ12に注目します。販売した製品の廃棄に伴うCO2排出量ですが、どのような計算式で求めることができるのでしょうか。

この記事では、Scope3全体における基本的な知識と、カテゴリ12の定義と算定方法、企業の算定事例と削減する取り組み例についてご紹介します。

目次

  1. Scope3とは

  2. Scope3「カテゴリ12」とは?

  3. Scope3「カテゴリ12」の算定方法

  4. Scope3「カテゴリ12」の企業事例と取り組み例

  5. まとめ:Scope3 カテゴリ12を算定し、CO2排出量を把握しよう!

1. Scope3とは

企業の脱炭素化が加速する中、Scope3という用語をよく耳にするようになりました。ここではそもそもScopeとはどのような概念なのかや、Scope3の算定が重視される背景についてご紹介します。

そもそもScopeとは?

Scopeとは、1998年に設立された温室効果ガスプロトコルにおいて定められている排出量の区分のことで、Scope1・2・3があります。加えて、Scope3は15のカテゴリに分類されています。

  • Scope1:事業者自らによるCO2の直接排出量

  • Scope2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出量

  • Scope3:Scope1と2以外の間接排出量

Scope3はサプライチェーン排出量とも呼ばれており、事業者の活動に関連する他社からのCO2排出量を指しています。

上流・自社・下流

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ』

出典:環境省『温室効果ガス(GHG)プロトコル』(p. 2)

Scope3の算定が重視される背景

自社からのCO2排出量よりもサプライチェーンからのCO2排出量の方が多いです。企業が脱炭素化を実現させるためには、Scope3を算定することにより全体のCO2排出量を把握し、どのように削減するかを検討することが求められます。

出典:環境省『サプライチェーン連携の重要性』(p. 8)

2. Scope3「カテゴリ12」とは?

ここではScope3のカテゴリという概念に注目します。そもそもScope3のカテゴリとは何かやカテゴリ12の定義についてご紹介します。

Scope3のカテゴリとは

Scope3は原料調達から廃棄に至るまで組織活動に伴うCO2排出量です。Scope3を算定するために、事業活動をカテゴリに分類し、それぞれのCO2排出量を求める必要があります。15個のカテゴリはお金の流れで、大きく上流と下流に分類されています。上流と下流は以下のように定義されています。

  • 上流(カテゴリ1〜8)

原則的に購入した製品またはサービスに関する活動

  • 下流(カテゴリ9〜15)

原則的に販売した製品またはサービスに関する活動

出典:環境省『サプライチェーン算定をはじめる方へ』

Scope3 カテゴリ12販売した製品の廃棄

Scope3カテゴリ12は、企業が報告対象年に販売した製品と容器包装の廃棄と処理に伴うCO2排出量です。販売した製品に関する活動であるため、下流に分類されます。使用者が廃棄する時に使用した輸送から排出されるCO2に関してはScope3基準及びガイドラインでは算定対象外とされていますが、算定する際に含めてもかまいません。

出典:環境省『Scope3 〜算定編〜』(p. 125)

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 10)

3. Scope3「カテゴリ12」の算定方法

ここではScope3カテゴリ12の簡易な計算式と、算定するために必要となるデータの収集先についてご紹介します。

Scope3 カテゴリ12の簡易な計算式

Scope3の各カテゴリの基本的な計算式は「活動量×排出原単位」です。カテゴリ12に関しては、製品ごとの廃棄物量や製品出荷量などを活動量とし、廃棄物種別ごとの処理時の排出原単位を乗じます。

販売した製品の廃棄出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 15)

算定に必要なデータの収集方法

Scope3カテゴリ12を算定するために必要なデータは、製品統計データや容器リサイクル法における再商品化義務量などから収集することができます。排出原単位のデータは、環境省が公表している原単位データベース【1】を活用することができます。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 11)

4. Scope3「カテゴリ12」の企業事例と取り組み例

Scope3を算定している企業事例と、カテゴリ12を削減するための取り組み例についてご紹介します。

日清食品グループ

日清食品グループは、国内・海外グループ会社のサプライチェーンを算定対象とし、Scopeを算定し結果を公表しています。2018年度のScope3排出量は3,655(千t)で、2019年度は3,601(千t)と減少しています。そのうちカテゴリ12は89(千t)から119(千t)に増加しています。

出典:NISSIN FOODS GROUP『データ集 | 日清食品グループ』

Scope3 カテゴリ12の削減取り組み

カテゴリ12に計上するCO2排出量は、最終製品のうち自社製品分の廃棄処理に関わる排出量です。食品の場合は、容器包装のみを計上します。容器包装の軽量・簡素化、容器の素材を環境に配慮したものに変えることなどによりカテゴリ12を削減することができます。

日清食品グループは、環境に配慮したバイオマスECOカップに切り替えることで、ライフサイクルCO2排出量を約16%削減しています。この他に麺類の冷凍食品のプラスチックトレーを使わない取り組みを行っています。

出典:環境省『Scope3 〜算定編〜』(p. 125)

出典:NISSIN FOODS GROUP『製品を通じた環境配慮 | 日清食品グループ』

5. まとめ:Scope3 カテゴリ12を算定し、CO2排出量を把握しよう!

この記事では、Scope3カテゴリ12に注目し、法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。カテゴリ12は販売した製品の廃棄に伴うCO2排出量であることから、企業は廃棄時に排出されるCO2排出量を抑える取り組みを行う必要があります。Scope3カテゴリ12を算定し、CO2排出量を把握し削減に取り組みましょう。

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