Scope3 カテゴリ7はどう算定する?方法や企業事例をご紹介
- 2023年11月05日
- CO2算定
企業の脱炭素化への取り組みが加速する中、企業へのScope3の情報開示の要求は珍しいことではなくなりました。この記事ではScope3 カテゴリ7に着目します。
カテゴリ7は従業員の通勤により排出されるCO2排出量のことですが、どのように算定することができるのでしょうか。法人の皆さまが知っておくべきScope3 カテゴリ7の定義や算定方法、企業の算定事例など、基本的な知識についてご紹介します。
目次
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Scope3とは
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Scope3「カテゴリ7」とは?
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Scope3「カテゴリ7」の算定方法
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Scope3「カテゴリ7」の企業事例
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まとめ:Scope3 カテゴリ7を算定して、通勤によるCO2排出量を把握しよう!
1. Scope3とは
ここではScope3は1や2とどのように違うのか、Scope3を算定する企業が増加している理由についてご紹介します。
そもそもScopeとは?
ScopeとはGHGプロトコルに定められるCO2排出量区分で、Scope1とScope2、Scope3を合計することでサプライチェーン排出量を求めることができます。
Scope3の算定が普及した背景
Scope3の算定が普及した背景には様々な要因があります。
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SBT認定の取得を目指す企業の増加
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企業に対するScope3の情報開示要求の声の高まり
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企業の環境問題への意識の高まり
2. Scope3「カテゴリ7」とは?
ここでは、Scope3のカテゴリに注目します。そもそもどのようにカテゴリ分けされているのかや、Scope3 カテゴリ7の定義についてご紹介します。
Scope3のカテゴリとは?
Scope3は活動ごとに15のカテゴリと任意から構成されています。15カテゴリはお金の流れで上流と下流に分類されています。カテゴリ1〜8までが上流で、9〜15までが下流です。上流と下流は以下のように定義されています。
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上流:原則として購入した製品やサービスに関する活動
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下流:原則として販売した製品やサービスに関する活動
出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 3)
Scope3 カテゴリ7とは?
Scope3 カテゴリ7は、6とともに人の流れに関するCO2排出量のカテゴリです。カテゴリ7は、報告対象年度における従業員の職場への通勤時に使用する交通機関から排出されるCO2の排出量です。なお、報告企業が所有・管理する移動手段は除きます。
3. Scope3「カテゴリ7」の算定方法
Scope3 カテゴリごとの計算式
Scope3は15のカテゴリから構成されていますが、カテゴリごとの基本的な計算式は、「活動量×排出原単位」です。活動量は事業者の活動の規模に関する量のことで、排出原単位は活動量あたりのCO2排出量です。
参考:Alt属性(基本式)
出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 5.11)
Scope3 カテゴリ7の簡易な算定方法
Scope3 カテゴリ7の簡易な算定方法は2つあります。
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通勤費支給額をもとに算定
通勤費支給額を活動量とし、通勤費支給額当たりの排出原単位を乗じます。最新の排出原単位は、環境省が公表している排出原単位データベース【11】から確認することができます。
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従業員数をもとに算定
従業員数と勤務日数を活動量とし、従業員数と勤務日数当たりの排出原単位を乗じます。最新の排出原単位は、環境省が公表している原単位データベース【14】から確認することができます。
出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 14)
4. Scope3「カテゴリ7」の企業事例
Scope3 カテゴリ7を実際に算定している企業事例を見ていきましょう。
佐川急便株式会社
佐川急便株式会社は2020年4月1日〜2021年3月31日までを対象期間とし、サプライチェーン排出量を算定しています。全社の従業員を対象とし、Scope3カテゴリ7の算定を行っています。従業員の通勤に伴い排出されるCO2は増加傾向にあり、2020年度は16,924t-CO2です。カテゴリ7がScope3を占める割合は1.5%です。
出典:佐川急便株式会社『ESGデータ集E 環境に関するデータ』
三井金属鉱業株式会社
三井金属鉱業株式会社は、気候変動を最も重要な環境課題とし、サプライチェーン排出量を算定することでCO2排出量削減に取り組んでいます。カテゴリ7の削減への取り組みとして、三井金属アクトの横浜本牧センターにおいて従業員のマイカー通勤を中止にし、電車またはバスの利用を促しています。
出典:三井金属鉱業『気候変動への対応 環境 サステナビリティ』
ENEOS株式会社
ENEOS株式会社は、サプライチェーン全体のエネルギー消費が地球環境に与える影響を考慮し、サプライチェーン排出量を算定し、CO2排出量削減に取り組んでいます。2020年度におけるScope3 カテゴリ7のCO2排出量は106万トンで、0.5%を占めています。ENEOSは削減努力によりCO2排出量を2020年度に大幅に削減しています。
5. まとめ:Scope3 カテゴリ7を算定して、通勤によるCO2排出量を把握しよう!
この記事では、従業員の通勤に伴い排出されるCO2排出量であるScope3 カテゴリ7の算定方法や企業事例などについてご紹介しました。Scope3をカテゴリごとに算定し、Scope3の開示要求に答えられるよう準備を行いましょう。