Scope3 カテゴリ2資本財とは?算定方法や事例紹介

企業の脱炭素化への取り組みが加速する中、Scope3を算定する企業が増えています。この記事ではScope3の15あるカテゴリのうちカテゴリ2に注目します。

そもそもScope3とは何かやScope3 カテゴリ2の定義、算定方法、企業事例などをご紹介します。Scope3 カテゴリ2の簡易な算定方法を理解し、企業における資本財から排出されるCO2排出量の削減に取り組みましょう。

目次

  1. Scope3とは

  2. Scope3「カテゴリ2」とは?

  3. Scope3「カテゴリ2」の算定方法

  4. Scope3「カテゴリ2」の企業事例

  5. まとめ:資本財のCO2排出量を把握し、削減に取り組もう!

1. Scope3とは

企業の脱炭素化が進む中で、Scope3という用語を耳にすることが増えました。ここではScope3の定義や企業がScope3を算定するメリットについてご紹介します。

そもそもScopeとは?

ScopeはGHGプロトコルにおいて定められている排出量の区分のことで、1〜3に分類されています。サプライチェーン排出量はScope1+Scope2+Scope3の計算式で求めることができます。各Scopeは以下のように定義されています。

  • Scope1

自社からの直接排出

  • Scope2:

自社からのエネルギー起源の間接排出

  • Scope3

その他の間接排出で、15のカテゴリから構成されており、1〜8までが上流、9〜15が下流に分類されています。

上流・自社・下流

出典:環境省『サプライチェーン排出量の活用について』(p. 5)

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ』

Scope3を算定するメリット

多くの企業では、自社からの直接排出量よりも他事業者からの排出量の方が多い傾向にあります。Scope1と2だけでなくScope3も算定することで、サプライチェーン全体におけるCO2排出量を把握でき、削減対象を特定することができます。またサプライヤーと連携した削減への取り組みも可能になります。

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』(p. 1)

2. Scope3「カテゴリ2」とは?

Scope3 カテゴリ2の定義やScope3 カテゴリ2におけるCO2排出量を削減するためにできることをご紹介します。

Scope3 カテゴリ2・資本財とは?

Scope3 カテゴリ2は、資本財からのCO2排出量を指しています。具体的な活動には生産設備の増設が該当します。たとえば老朽化により3年かけて工事を行った場合、工事が完了した年にScope3 カテゴリ2として計上します。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 10)

資本財のCO2排出量を削減するためにできること

資本財からのCO2排出量を削減する手段として、環境に配慮したコンクリートなどの資材の使用や環境問題に関心の高い建設会社への依頼があります。環境問題に関心が高い大林組は環境配慮型コンクリートを開発し、普及拡大を推進しています。大林組では、クリーンクリートと言われる通常のコンクリートよりもCO2排出量が約60%削減されたものを開発しました。

出典:大林組『低炭素型のコンクリート向けにJIS適合低炭素型混合セメントを実用化(2015/4/16)』

3. Scope3「カテゴリ2」の算定方法

Scope3 カテゴリごとの基本的な計算式をもとに、Scope3 カテゴリ2を算定し、資本財から排出されるCO2を把握しましょう。

Scope3カテゴリごとの基本的な計算式

15カテゴリごとに計算し、合計することでScope3を求めることができます。カテゴリごとの基本的な計算式は活動量×排出原単位です。カテゴリ2を算定する時は、年間設備投資金額をもとに算定します。データは有価証券報告書から収集することができます。

scope3の基本的な計算式出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 5.11)

Scope3 カテゴリ2の簡易な算定方法

設備投資額を用いて簡単に算定することができます。資本財における活動量は、事業者全体もしくは事業別の年間設備投資金額です。排出原単位は、資本形成部門ごとの資本財価格当たり排出原単位を用います。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 14)

 

4. Scope3「カテゴリ2」の企業事例・削減取り組み例

Scope3 カテゴリ2を算定している企業事例とカテゴリ2を削減するための取り組み例を見ていきましょう。

YKK AP株式会社・製造業(金属製品)

YKK AP株式会社は、2018年4月〜2019年3月までを算定対象期間とし、カテゴリごとのCO2排出量を算定し、データを公表しています。

Scope3 カテゴリ2の算定は資本財の調達金額を活動量とし、原単位データベースを乗じることで行っています。カテゴリ2の算定結果は4.4%です。

出典:環境省『YKK AP株式会社』(p. 4)

大和ハウス工業株式会社・建設業

大和ハウス工業株式会社が公表している2017年度SBT成果報告によると、Scope3 カテゴリ2が全体に占める割合は1.0%です。Scope3をカテゴリごとに算定した結果、カテゴリ1と11が大きい割合を占めていることが明らかになり、カテゴリ1と11を優先的に削減する計画を示しています。

Scope1・2・3の排出量の状況

出典:環境省『大和ハウス工業株式会社』(p. 2)

・ヤマトホールディングス株式会社・運送業

ヤマトグループ連結会計で購入した車両や建物、荷役機器などの資本財をScope3 カテゴリ2の算定対象としています。資本財の価格を活動量とし排出原単位を乗じることでScope3 カテゴリ2を算定しています。

出典:ヤマトホールディングス株式会社『算定方法・係数』

Scope3 カテゴリ2を削減するためにできること

Scope3 カテゴリ2の資本財は固定資産に該当するため、他のカテゴリと比較すると削減が難しいですが、企業にできる取り組みがあります。その取り組みとは、省エネルギーで生産された資本財を購入することです。

ただしサプライヤーが資本財から排出されるCO2排出量を把握している必要があります。通常は、資本財の購入金額に比例してCO2排出量が増加しますが、省エネルギーで生産された資本財を購入した場合は、サプライヤーの削減努力を反映させることが可能になります。

CO2排出量の適切な削減方法ではないかもしれませんが、排出量の算定対象にならない資本財を購入するという方法もあります。

5. まとめ:資本財のCO2排出量を把握し、削減に取り組もう!

この記事ではScope3のうちカテゴリ2に注目して定義や算定方法、企業事例などについてご紹介しました。Scope3 カテゴリ2の算定方法を理解し、資本財から排出されるCO2がどのくらいあるのかを把握しましょう!

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