ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?意味と活用方法を解説

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは何かをご存じでしょうか。SDGsをはじめとして世界の環境問題への取り組みは加速しています。個人も企業も今までのライフスタイルを見直さなければならない時代になりました。ライフサイクルアセスメント(LCA)は、環境負荷を軽減するための手法であり、CO2削減に大いに関係があります。

この記事では、ライフサイクルアセスメント(LCA)の言葉の意味から重要性、活用方法まで企業の取組み事例と併せて解説します。

目次

  1. ライフサイクルアセスメント(LCA)とはなにか

  2. LCAの背景と重要性

  3. LCAの活用方法とは

  4. LCAのメリット

  5. LCAの企業取組事例

  6. まとめ:LCAを導入し環境負荷を軽減する努力を!

1. ライフサイクルアセスメント(LCA)とはなにか

LCAの言葉の意味

ライフサイクルアセスメントは英語で「Life Cycle Assessment」(以下LCA)です。ライフサイクルとは本来生物の一生を表す言葉で、アセスメントは「評価」という意味です。つまりLCAは簡単に言うと「製品やサービスの一生を評価するということ」になります。

具体的にいうと、生産された工業製品や各サービスの資材調達から、製造、流通、廃棄や再生まで含めたすべての流れ(ライフサイクル)に発生する環境負荷を統括的、定量的に評価や査定を行う方法です。

LCAの特徴を解説

LCAの特徴は、従来の環境負荷評価と比較して定量的なデータで示される点です。LCAでは、国際的な環境マネジメント規格を活用することで、環境負荷やCO2削減の数字が可視化されるため、具体的な改善策を打ち立てることが可能となります。また、製品だけではなくサービスなども対象となっていることも特徴の一つです。

LCAの概要と代表的な温室効果ガス排出量の算定方法出典:環境省「LCAの概要と代表的な温室効果ガス排出量の算定方法」

2. LCAの背景と重要性

企業の環境負荷低減

LCAが注目される背景には企業の環境負荷低減や脱炭素への流れがあります。温室効果ガスの影響による地球温暖化の気温上昇や異常気象はいまや世界的な問題です。グローバル企業をはじめとしてビジネスの世界では脱炭素への取り組みが加速しており、企業においての環境負荷低減への取り組みはもはや必須と言っても過言ではありません。2018年の世界の温室効果ガスの排出量は約335億トンにも昇ります。

世界の温室効果ガス排出量

出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」(2018)

2050カーボンニュートラルに向けて

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。カーボンニュートラルに取り組むことによって、温室効果ガスを全体でゼロにするという考え方です。日本では「2050カーボンニュートラル」を宣言し、2030年度までに温室効果ガスの発生を、2013年度と比較して46%削減し、2050年までにはゼロにすることを掲げています。企業のCO2を可視化するためにもLCAでの取り組みは重要と言えます。

 カーボンニュートラルとは

出典:環境省「脱炭素ポータル」

https://earthene.com/form/download/general

3. LCAの活用方法とは

ISO(国際標準化機構)による実施方法

LCAは国際的なマネジメントシステム規格であるISOによって、実施することができます。マネジメントシステム規格とは、企業のマネジメントシステムを標準化することで、問題解決や組織管理を行う国際的な基準です。

LCAはISO14000シリーズの一つとされ、国際規格ISO14040〜14049により標準化が行われました。ISOによる評価の手順は以下になります。

  • ISO14040:原則及び枠組みを決める

  • ISO14041:目的・調査範囲を設定しインベントリ分析を行う

  • ISO14042:ライフサイクルにおける影響評価を行う

  • ISO14043:ライフサイクルを解釈する

環境ラベル

環境ラベルとは、LCAが準拠するISOの中にあるISO14020シリーズになり、エコマークやグリーンマーク、エコリーフなどさまざまなものがあります。環境ラベル活用は、消費者にとって企業への信頼感が高まり、企業にとっては社会的な環境価値を高めることに繋がります。

環境ラベルには大きく分けると以下の3タイプになります。

  • タイプI(ISO14024)「第三者認証」

  • タイプⅡ(ISO14021)「自己宣言」

  • タイプⅢ(ISO14025)「環境情報表示」

出典:環境ラベル等データベース「ISOの環境ラベルに関する規格」

カーボンフットプリント

カーボンフットプリントとは、英語で「Carbon Footprint of Products」(以下CFP)で、ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量をCO2に換算し、商品や各サービスに表示する方法です。CFPはLCAを活用した気候変動に特化した環境ラベルであることが特徴です。

4. LCAのメリット

企業の製品やサービスへの改善効果

LCAを活用することは、生産過程・活動の見直しを図れます。ライフサイクルを通して環境負荷を評価することは、製品の設計やプロセスの細かい弱点を見つけることを可能にし、大きな改善への足がかりになります。資材の無駄や職場環境の属人化を防ぐことにも繋がるでしょう。

環境負荷を可視化することで社会的信用を向上

LCAは企業の環境負荷をデータとして可視化できます。一般の消費者にも見えることで企業としての信頼度や環境価値を高めることができます。SDGsの流れをはじめとして、消費者は環境問題に非常に敏感となりました。情報を可視化し共有することは企業としての社会的責任であると言えます。

LCAの課題

メリットの多いLCAではありますが、課題もあります。LCAは商品やサービスのすべてのライフサイクルにおける環境負荷のデータを収集しなくてはいけません。そのため、膨大な量のデータを蓄積することが求められ、企業によっては負担となる可能性があります。また業種により評価の方法も分かれるため、各業種に応じた評価方法の確立も必要です。

5. LCAの企業取組事例

テスラ

EVの世界トップメーカーであるテスラはEVの製造段階および走行段階のLCAの詳細な分析を行っています。「Impact Report 2019」においてCO2排出量のグラフを公開しており、さらには報告書の中で再生可能エネルギーの導入にまで言及しています。

出典:「Impact Report 2019」

富士通グループ

富士通グループでは、「グリーン製品」評価制度を1998年から導入しており、製品に対してLCAを活用しています。公式サイトでは富士通グループの製品のライフサイクルにおけるCO2排出のグラフも掲載されており、消費者に情報の可視化を行っています。その他サービスにおけるLCAの実施にも積極的に取り組んでいます。

出典:富士通グループ「製品LCAの取り組み」

東芝テック株式会社

店舗のレジで商品の管理システムとして使用されているPOSターミナルの使用段階におけるCO2排出量(電力による)が多いため、その改善に取り組んでおり、算出したCO2の排出量の情報をサイトに掲載しています。

出典:東芝テック株式会社「LCAの取り組み」

6. まとめ:LCAを導入し環境負荷を軽減する努力を!

ライフサイクルアセスメント(LCA)についてさまざまな角度から解説しました。ビジネスにおいて製品やサービスを提供するだけではなく、その製品がどのように使用され環境に対してどのような影響を及ぼすのかを考慮することは重要です。またそれを社会に共有することはいまや当然の時代になりました。

LCAを導入して自社の環境負荷情報を可視化して、消費者への信頼と環境価値を高めることを、ぜひ検討してはいかがでしょうか。

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