Scope3 カテゴリ5の算定方法と企業事例

SBT認定の取得を目標にするなど、企業の脱炭素化への取り組みが世界で加速する中、Scope3という用語をよく耳にするようになりました。

この記事では、廃棄物に関するCO2排出量を表すカテゴリ5に注目します。そもそもScope3とはどのようなものなのかやScope3 カテゴリ5の定義、算定方法や企業の算定事例などについてご紹介します。

目次

  1. Scope3とは

  2. Scope3「カテゴリ5」とは?

  3. Scope3「カテゴリ5」の算定方法

  4. Scope3「カテゴリ5」の企業事例

  5. まとめ:Scope3 カテゴリ5を算定して、事業から出る廃棄物の削減に取り組もう!

1. Scope3とは

Scope3 カテゴリ5に関する理解を深める前に、ScopeとScope3とはどのようなものか、基本的な知識を身につけておきましょう。

そもそもScopeとは

ScopeとはGHGプロトコルに定められているCO2排出量の区分のことで、3種類に大きく分類されています。各Scopeは以下のように定義されています。

  • Scope1:事業者または家庭が所有、管理する排出源から直接排出されるCO2

  • Scope2:電気や熱、蒸気の使用に伴い間接的に排出されるCO2

  • Scope3:Scope2を除く、間接排出されるCO2

Scope1・2・3のイメージ

出典:環境省『温室効果ガス「見える化」の役割について』(p. 9)

Scope3の算定がなぜ重要か?

Scope3の算定が重要な理由は、算定により以下にあげるような様々なメリットを得ることができるためです。

  • 削減対象の特定

  • 他事業者との連携による削減

  • 機関投資家などへの質問対応

  • 環境経営指標への活用

  • 削減貢献量の評価

  • CSR情報の開示

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』(p. 1)

2. Scope3「カテゴリ5」とは?

ここでは、Scope3 カテゴリ5に注目し、カテゴリ5の定義やScopeの上流と下流の区別についての理解を深めましょう。

Scope3 カテゴリ5とは?

Scope3 カテゴリ5に該当するのは、事業から出る廃棄物です。具体的には、有価のものを除く廃棄物の自社以外での輸送や処理の過程で発生するCO2などがあります。

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』(p. 10)

Scopeの上流・下流の区別

Scope3は、お金の流れにより上流と下流に分類されています。カテゴリ1〜8までが上流で、9〜15までが下流です。上流と下流はそれぞれ以下のように定義されています。

  • 上流:原則として購入した商品やサービスに関する活動

  • 下流:原則として販売した商品やサービスに関する活動

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』(p. 3)

3. Scope3「カテゴリ5」の算定方法

ここでは、Scope3のカテゴリごとの基本的な計算式とカテゴリ5の簡易な算定方法について整理しましょう。

Scope3 カテゴリごとの基本的な計算式

Scope3は15カテゴリと任意の項目から構成されています。各カテゴリは活動量に排出原単位を乗じることで算定することができます。

CO2排出量算定の基本式

出典:環境省『Scope3 〜算定編〜』(p. 4)

Scope3 カテゴリ5の簡易な算定方法

Scope3 カテゴリ5では、廃棄物種別ごとの廃棄物処理委託量を活動量とし、廃棄物種別ごとの処理時の排出原単位を乗じることで求めることができます。環境報告書用の集計値などからデータを収集することができます。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 11.14)

4. Scope3「カテゴリ5」の企業事例

Scope3 カテゴリ5を算定している企業の事例を見ていきましょう。

AGC株式会社・製造業(ガラス・土石製品)

社内の環境部門が調達や物流、製造、経理などから原子データを収集し、カテゴリごとにCO2排出量を算定しています。廃棄物の種類別排出量を活動量とし、CFP-DBを乗じることでScope3 カテゴリ5を算定しています。2020年度に公表されたデータによると、カテゴリ5のCO2排出量は29,807t-CO2で、全体に占める割合は0.3%です。

算定結果

出典:環境省『AGC株式会社』(p. 4)

大日本印刷株式会社・製造業(印刷業)

大日本印刷株式会社は、SBT認定の取得を目標にScope3をカテゴリごとに算定しています。2017年度に公表したデータによると、カテゴリ5が全体に占める割合は1%です。

Scope1・2・3の排出量の状況

出典:scope3 『大日本印刷株式会社』(p. 2)

花王株式会社・製造業(化学)

花王株式会社は、排出重量を活動量として、サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量参考のための排出原単位ベースを乗じることでScope3 カテゴリ5を算定しています。2019年度に公表したデータによるとカテゴリ5が占める割合は全体の1%です。

サプライチェーン排出量算定結果

出典:環境省『花王株式会』(p. 5)

5. まとめ:Scope3 カテゴリ5を算定して、事業から出る廃棄物の削減に取り組もう!

この記事ではScope3 カテゴリ5の算定方法や企業の算定事例などについてご紹介しました。Scope3 カテゴリ5を算定し、事業から出る廃棄物の削減に取り組みましょう。

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