CO2排出削減に直結!?食品ロスと地球温暖化の関係とは
- 2022年06月15日
- 環境問題
まだ食べることができるのに捨てられてしまう食品のことを「食品ロス」と言います。飽食と言われる日本の令和元年度の食品ロスの推計は、約570万トンであり、多くの食糧が日本だけで廃棄されていることがわかります。
食品が大量に破棄されることは、CO2排出・地球温暖化とどのように関わってくるのでしょうか。ここでは、食品ロスを切り口に、CO2の排出や地球温暖化について考えていきます。
目次
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食品ロスの現状とCO2排出との関連
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CO2排出抑制のために企業が取り組む食品ロス削減事例
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食品ロスを削減するためにだれでもできること
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まとめ:食べることは生きること。身近な食品ロス問題から考えよう
1. 食品ロスの現状とCO2排出との関連
食品ロスはどこで発生するのか
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世界の食品ロス
国連環境計画(UNEP)が発表した世界の食品廃棄物の統計によると、2019年に推定9.3億トンの食品が、家庭・小売業者・レストラン・外食産業などによって廃棄されました。これは、消費者が利用できる食品(食品全体のうち、消費者の手元に届くまでに捨てられた食品ロスを除いた食品)の17%に相当する数値です。
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日本の食品ロス
日本では2019年に約570万トンの食品ロスが発生したと推計されており、うち家庭から約261万トン、事業所から約309万トンの食品が捨てられています。これは、国連WFPが1年間で途上国へ食料支援する量(約420万トン)の1.4倍の量にあたり、飢餓に苦しむ人々を救うための食料よりも、多くの食料が廃棄されているのが現状です。
出典:環境省『我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和元年度)の公表について』(2021/11/30)
事業所の食品ロスの内訳を見てみましょう。事業所での食品ロスは、4業種に分類できます。事業所から廃棄される約309万トンの食品ロスのうち、外食産業が103万トン、食品小売業が64万トン、食品卸売業が14万トン、食品製造業が128万トンです。
食品ロスとCO2排出の関係
食品ロスが発生するまでに「生産・保管・加工・輸送・消費・廃棄」の流れがあり、それら全ての過程でエネルギーが使用され、CO2が排出されています。つまり、食品ロスが多いということは、資源やエネルギーの無駄が多いということです。また、余分な食品を生産したことによるCO2排出だけでなく、食品ロスの焼却廃棄においてもCO2が排出されています。
食品ロスの発生は、結果として、生産者の苦労や生き物の命を無駄にするだけでなく調達に至るまでに利用されたエネルギーも無駄にし、それを廃棄するためにも余分なコスト・環境負荷がかかるのです。
2. CO2排出抑制のために企業が取り組む食品ロス削減事例
食品メーカー、小売業者、外食産業が取り組む食品ロス削減の事例をご紹介します。
食品メーカー
(1)日本水産株式会社
日本水産株式会社(ニッスイ)は、サプライチェーン全体を通したフードロスの削減に取り組んでいます。生産時に規格外品の削減、流通・消費過程では賞味期限の延長やフードバンクへの寄付を、消費者や社員に対しては意識向上のための活動を行うなどして、さまざまなアプローチで食品ロス削減を目指しています。
(2)江崎グリコ株式会社
江崎グリコ株式会社は、不揃い品をアウトレット販売したり、生産が余剰となってしまった食品をお菓子に加工して生産者の食品ロスを削減したりするなどの取り組みを行っています。また、保存期間が長く、忘れがちな保存食に関して、「賞味期限お知らせシステム」を導入し、消費者に知らせるサービスもしています。
小売業者
(3)株式会社ローソン
株式会社ローソン(以下ローソン)は、2018年と比較して、2030年までに50%削減、2050年までに100%削減を目標に、「製造」、「配送センター」、「店舗」、「商品」のそれぞれで食品ロスを削減する取り組みを行っています。例えば、製造過程では形の揃っていない食材はサラダや漬物に加工をしたり、店舗では温度管理で食べられる時間を長くし、値引きで売り切りをしたりしています。また、売れ残りはリサイクルをしています。
出典:ローソンHP『特集:環境ビジョン LawsonローソンBlueブルーChallengeチャレンジ 2050!2050年 食品ロス・CO2・プラスチックを減らすローソンの取り組み』
(4)無印良品
無印良品では、店舗ごとにさまざまな食品ロス削減の活動を行っています。横浜市の17店舗では、家庭で余っている食べ物を集め、それらをまとめて必要としているところに寄付する活動「フードドライブ」の取り組みを行っています。また、全国の限定127店舗にて、生産過程を見直して削減できる作業を省き、見た目にキズやシミ、色ムラがあってもおいしさは変わらない「不揃いりんご」を発売したりしています。
出典:無印良品『フードドライブ、はじめました』(2021/05/23)
出典:良品計画『今年も不揃いりんごの販売を始めました』(2021/12/14)
外食産業
(5)スターバックス
スターバックスでは、在庫状況に応じて、ドーナツやケーキなどをディスカウントし、売上の一部を「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」に寄付。子どもたちの食と未来づくりへ貢献する取り組みをしています。
出典:スターバックスHP『スターバックスのフードロス削減のためのプログラム、8月23日(月)からスタート』(2021/08/19)
(6)すかいらーくグループ
すかいらーくグループでは、食材の使用期限内に使い切ることのできる量の調達をコントロールしていたり、食材回転率が低い食材を入れ替えたり、食材を無駄なく効率的に使用しています。また、食べきれなかった料理の「お持ち帰り」を推奨する取り組みもしています。
3. 食品ロスを削減するためにだれもができること
消費者における食品ロスは、「直接廃棄」「過剰除去」「食べ残し」と、大きく3つに分類されます。それらに対して誰もが心がけができることをご紹介します。
(1)在庫管理
買い物をする時は、必ず在庫を確認し、無駄なものを購入しないようにしましょう。すぐに消費するものは、陳列順に手に取る、見切り品から選ぶことも食品ロスを削減することに結びつきます。
(2)保管・調理の工夫
食品を保管するときは、食品に適した保管方法を選び、食べられる期間を延ばす、保管したものを忘れないように配置を工夫しましょう。また、調理する時は、皮を厚くむくなど、ムダに廃棄をすることを避け、食べきる分のみ調理する意識を持ちましょう。
(3)食べきり
食べきる量を食卓に並べ、食卓にある食べ物は、基本的に食べきることを心がけましょう。外食先では、注文時に小盛りにしてもらう、あまったものは持ち帰らせてもらうなどの工夫をしましょう。
4. まとめ:身近な食品ロスから環境保護を考える
食品ロスの問題は、捨てようとしている目の前の食品が手元に届くまでの多くの過程と、捨てたあとの焼却処理を考えると、多くの資源をムダにし、多くのCO2を排出していることがわかります。世界で排出される温室効果ガスのうち3分の1は、食料システムによる排出が原因であるとICPPは推定しています。現在の食料システムを見直すことは、CO2排出削減に大きく貢献することに繋がるのです。
まずは、自分の生活を振り返り、身近な食品ロスをなくしていく取り組みから始めましょう。手の届く範囲内での食品ロスの削減をすると、職場、地域、社会における食品ロス削減のヒントが見えてくるかもしれません。