カーボンフットプリントとは?企業による取り組み事例とともに解説

企業における環境問題への取り組みとしてカーボンフットプリントがあることをご存知ですか?

現在世界では異常気象が続いており、CO2排出に起因する環境問題がG7、G20などにおいても重要な問題として討議されています。欧米諸国ではCO2排出量削減に対する取り組みが進んでいます。日本でも菅政権に変わり環境問題へ積極的な姿勢になり、企業においても今後大きな社会的使命となってくることが予測されています。

企業における環境問題への取り組みのひとつとしてカーボンフットプリントという手段があります。この記事では、法人の皆さまが知っておくべきカーボンフットプリントの基本的な知識について解説します。

目次

  1. カーボンフットプリントとは
  2. カーボンフットプリントはなぜ今重要なのか
  3. 世界的な地球温暖化対策の進展
  4. 事業者にとっての環境問題への取り組みとカーボンフットプリント
  5. カーボンフットプリントのまとめ

1. カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリントとは、商品もしくはサービスの原材料調達から製造、輸送、廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体で排出されたCO2をCO2排出量に換算して「見える化」し、商品やサービスに表示する仕組みです。

ご存じのように二酸化炭素は地球温暖化をもたらすCO2といわれるものであり、その出所を把握し、発生を減らしていくことがその最終的な目標となっています。

企業においてもCO2がどの工程で発生しているかを把握して、それらを抑える対策を打つことが求められているのです。

今後企業のカーボンフットプリントへの取り組みは、CSRの取り組みとして評価されるのが当たり前になるでしょう。

2. カーボンフットプリントはなぜ今重要なのか

現在の日本でも、毎年大きな台風や集中豪雨が発生したり、猛暑日の発生が毎年新記録を更新し続けています。

環境省の環境白書によると、1998年から2017年の直近20年間の気候関連の災害による被害額は2兆2,450億ドル(全体の被害額2兆9,080億ドルの77%)と報告されていますが、これは、1978年から1997年の20年間に生じた気候関連の災害による被害額8,950億ドル(全体被害額1兆3,130億ドルの68%)に比べて約2.5倍です。

出典:環境省『令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書\状況\第1部\第1章\第2節\3 国際的な議論の潮流』

このように環境変化による温暖化現象は確実に日本においても発生しており、カーボンフットプリントによってCO2の発生状況を調べて、その対策を打つことは非常に重要になっています。 

3. 世界的な地球温暖化対策の進展

アメリカ新政権の方向転換とカーボンフットプリント

CO2による環境への影響については、世界における環境問題、とくに地球温暖化問題として、世界的に重要な課題となっています。G7サミットやG20などの首脳会議においても、重要な議題として論じられています。

国連においても論じられており、現在ではパリ議定書に日本を含む175ヵ国がが批准して取り組んでいるのです。

米国も、環境よりも国内の経済問題を重視したトランプ大統領はパリ議定書から離脱を宣言しましたが、現在のバイデン新政権では方向転換がおこなわれ、米国においても重要な課題として認識されています。したがって、このような世界的な環境問題に対する取り組みの中で、日本だけでなく 、世界でもカーボンフットプリントは非常に重要な課題になっているのです。

事業者の環境面でのカーボンフットプリントなどの社会貢献が必要になっている

世界的に環境問題が重視されるようになっている今、日本においても事業者の環境政策としてカーボンフットプリントは注目されています

カーボンフットプリントは、事業者だけでおこなうものではなく、実際に最終需要者としての消費者とともに、CO2の排出量を見える化することが重要になっています。

したがって、このカーボンフットプリントは、大企業だけの問題ではなく、中小企業も含めてすべての事業者が取り組むべき社会貢献として重要な課題となってきます

具体的なカーボンフットプリントの企業事例

カーボンフットプリントの実施例として「Allbirds」というアメリカ・サンフランシスコのシューズメーカーがあります。世界的なスニーカ―ブランドで、ハリウッドの俳優であるレオナルド・ディカプリオも出資していることで有名です。 

このAllbirdsは、カーボンフットプリントに積極的に取り組んでおり、6ページにわたる二酸化炭素算出方法を発表して注目を集めています。

彼らは、独自に開発したライフサイクルアセスメント(LCA)というソフトツールを作って、Allbirds自身のカーボンフットプリントを推定し排出量削減を推進しています。

出典:PRTIMES『Allbirdsニュースリリース』(2020年4月20日)
出典:ALLBIRDS公式サイト『製品のカーボンフットプリントの計算方法について』2020年4月

また、日本の事例としては、野安製瓦株式会社という瓦製造会社がプレカットによるCO2削減について「野安製瓦株式会社の環境への取り組み理念 」を公開しています。

社内の仕入段階、流通段階などさまざまな業務の中でカーボンカットが可能なものを抽出してそれぞれにおいて二酸化炭素の削減可能量を算出しています。

出典:野安製瓦株式会社『カーボンフットプリント取り組み事例』2008年9月5日

4. 事業者にとっての環境問題への取り組みとカーボンフットプリント

もはや事業者、とくに中小企業にとっても、社会貢献としての環境問題への取り組みが他人事ではなくなっています。「気候変動」から「気候危機」へと言われているように、現在の温暖化が続けば、大型台風の上陸、集中豪雨の多発などによって、私たちの住む地球環境は悪化が避けられず、将来世代にわたる影響が強く懸念されています。

写真1-2-1 平成30年7月豪雨の被害の様子写真1-2-3 令和元年東日本台風による被害の様子

出典:環境省『令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書\状況\第1部\第1章\第2節\3 国際的な議論の潮流』

したがって中小企業といえども、CO2排出量を可視化し改善していくためのカーボンフットプリントの取り組みがより求められる可能性があります。

事業者はカーボンフットプリントにどう取り組むべきか

では、事業者は、実際にカーボンフットプリントに対してどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。

すでに事例でご紹介したように、まず自社においてどの工程CO2を発生させているのか、また、CO2を発生させたエネルギーをどれくらい使っているのかを把握する必要があります。

サービス業で事務所作業が中心といっても、CO2をまったく出していないわけではありません。照明、空調設備にはCO2含んだ電力を使用しており、管理システムなどで使っている電子機器にはプラスチックなどの石油資源が使われており、CO2がゼロということはほぼあり得ません。

自社で発生させているCO2はどれくらいであるかを把握するのがカーボンフットプリントであり、それらを減らすためにはどうすればよいのかを考えていくことは重要なのです。

カーボンフットプリントは事業者と消費者がともに取り組む必要がある

カーボンフットプリントは、単に事業者だけがおこなう政策ではありません。わが社が提供した商品を消費者や得意先などがどのように使用しているかを把握して、商品の使用全体においてどうすればCO2を減らすことができるかを提案していくことが社会貢献につながるのです。 

カーボンフットプリントの先にあるもの

このように、今後カーボンフットプリントによってCO2の見える化をおこなった後には、さらにそのCO2をいかに削減していくかという課題に消費者と一緒に取り組んでいくことが求められるでしょう。

単にCO2の発生を見える化するだけでは、CO2削減にはつながりません。測定したCO2の排出量をどうすれば削減できるかにつなげてこそ、温暖化対策という環境問題の課題を解消できるといえます。

5. カーボンフットプリントのまとめ

現代の世界・日本では、将来に対する大きな環境課題であるCO2対策はすでに身近に迫った問題となっており、中小企業においても避けては通れないすぐにでも取り組まなければならない課題となっています。

その意味で、これまでもCO2の削減対策をおこなっている中小企業もありますが、今後はさらにカーボンフットプリントなどによって排出量ゼロを目指した対応に進んでいく必要があるのです。

カーボンフットプリントによって、自社のCO2の排出量を把握するだけでなく、消費者や得意先と共に実際にどのように排出量を減らすのかについて抜本的な対応をしていくことが大切です。

 

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