CO₂の排出原因とは|人間活動と地球温暖化の関係

CO2の排出の原因について解説します。2015年、フランス・パリにおいて開催されたCOP21で、新たな国際的枠組みとなる「パリ協定」が採択されました。パリ協定は、加盟する全ての国においてCO2をはじめとする温室効果ガスの削減に向けて、目標・行動をもって参加することをルール化しています。

そして、世界共通の長期目標として、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前 に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」 が掲げられました。まずは、世界中で削減を目指している、CO2排出の原因を知ることから始めましょう。

目次 

  1. 地球温暖化とCO2排出量との関係

  2. 人間による活動が原因?CO2の排出量増加の原因

  3. 各国におけるCO2排出量の比較

  4. CO2排出量増加がもたらす弊害

  5. CO2排出量を減らすために企業ができること

  6. まとめ:CO2排出抑制を目指し、動き出そう

1. 地球温暖化とCO2排出量との関係

地球温暖化対策のひとつとして、CO2の削減は急務となっています。ここでは、CO2排出と地球温暖化にどのような関係があるのかを見ていきます。

CO2はどのような特徴を持つ気体か

CO2(二酸化炭素)は、色やにおいがない気体で、大気の0.04%を占めます。「温室効果」という地球を暖める力を持つため、適度な気温を保つのに必要な気体です。しかし現在、人間が化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃やすことで、CO2は大気中に大量に排出されています。

これにより、過度にCO2濃度が上がり、温室効果が高まっている状態が「地球温暖化」です。温室効果ガスには、CO2やメタン、一酸化二窒素、フロン類がありますが、その中でも、地球温暖化に最も大きな影響を及ぼしているのはCO2です。

出典:独立行政法人 環境再生保全機構『排出物質:二酸化炭素

これまでにどれだけCO2濃度が増加したのか

大気中のCO2濃度は季節変動を伴いながら経年増加しています。

IPCC第6次評価報告書によると、2019年の大気中のCO2濃度は410ppmで、産業革命前より約47%高くなっています。それに伴い、世界平均気温(2011~2020年)は、産業革命前と比べて約1.09℃上昇したと報告されています。また、第6次評価報告書では、「人間活動が大気・海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」といった以前よりも確信度を引き上げた表現がされています。

世界平均気温の変化(1950~2020)

出典:環境省『IPCC AR6/WG1報告書の政策決定者向け要約(SPM)の概要 (p.3)(2021/08//09)

出典:IPCC第6次評価報告書

出典:JCCCA『WG1 第1作業部会(自然科学的根拠)

2100年までの地球の平均気温の変化予測

人間がこのままの生活を続けていくと、最悪のシナリオでは2100年には産業革命前と比較して最大5.7℃も気温が上昇してしまうという予測があります。

一方SSP1-2.6によると、2050年までにCO2排出量がマイナス50%、2100年までに正味ゼロが達成できれば、気温上昇は2℃程度にまで抑えられる予測です。しかし、パリ協定ではより厳しい目標の1.5℃未満に抑えることを掲げました。そのため、早急なCO2の削減が全世界で求められています。

2100年までの世界平均気温の変化予測(1950~2100年・観測と予測)

出典:環境省『IPCC AR6/WG1報告書の政策決定者向け要約(SPM)の概要 (2021/08//09)

気温変化・2100年に向けての2つのシナリオ

出典:気象庁『これからの世界の気候の変化』

2. 人間による活動が原因?CO2の排出量増加の原因

人間の活動が地球温暖化の進展に重大な影響を与えたのは明らかですが、主にどのような活動が影響を与えているのでしょうか?

(1)産業革命以降の急速な発展

18世紀後半、産業革命以降が起き、化石燃料(石油、石炭、天然ガス)がメインのエネルギー源として使用されるようになりました。また、大量生産・大量消費型の産業が定着したことも相まって、産業革命以降、大気中のCO2の量は急激に増えました。日本では、明治以降の高度経済成長期にCO2排出量が増加しています。

人為起源のCO2排出量

出典:環境省『学ぼう!地球温暖化:WG3 緩和

(2)豊かな日常生活

産業革命以降、産業のみならず、普通の人間生活にも化石燃料が使われ始め、人間の生活はどんどん豊かになっていきました。大量生産・大量消費の文化が生まれたことで、産業拡大に拍車がかかり、さらに地球上の「ゴミ」問題も顕在化しています。

(3)減少する森林

森林は、「光合成」(光によって水を分解して酸素を発生し、CO2を有機物に固定する反応)をする性質があるため、地球温暖化防止に大きく寄与します。しかし、人間が自然現象の範疇を超えた森林伐採を進めるために、世界中の森林は減少しています。例えば、土地を耕作や放牧に利用するために森林を伐採したり、伐採した木を燃料としてたくさん燃やしたりしています。

「世界森林資源評価2020主な調査結果」では、1990年以降、世界の森林は1億7800万ha(リビアの面積くらい)減少したと報告されています。

出典:林野庁『森林・林業分野の国際的取組』(2022/2/22)

出典:JCCCA『1-4 二酸化炭素はなぜ増えたのか

3. 各国におけるCO2排出量の比較

現在の全世界におけるCO2の排出について、比較します。CO2排出量が最も多い国は中国で全体の29.4%、次にアメリカで全体の14.1%、続いてインドで6.9%であり、排出国上位3カ国で全体の排出量の半分を占めていることがわかります。また、日本は5番目に多く、全体の3.1%を占めます。

CO2排出の多い国は、主に北半球にある先進国や工業国であり、とりわけ重い責任を担っているといえます。一方、途上国では一人あたりの排出量は少ないけれど、経済の発展とともに増加傾向です。CO2排出のバランスを世界中でとることと、減少に向けて舵を切っていくことが迫られています。

世界の二酸化炭素排出量

世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2019年)

出典:環境省『世界のエネルギー起源CO2排出量(2019年)

出典:環境省『主な国別一人当たりエネルギー起源CO2排出量(2019年)

4. CO2の排出増加がもたらす弊害

(1)北極海の海氷の減少

CO2の増加による地球温暖化の影響で、北極海の海氷面積が減少しています。特に、春季から夏季にかけて海氷が急激に減少するため、海氷全体が薄くなってきています。また、海氷面積が減少することにより、北極海に生息するホッキョクグマやアザラシなどが絶滅してしまう可能性など、生態系への影響もあります。

出典:環境省『IPCC 第5次評価報告書 第1作業部会 第12章』(2017/12)(p46)

出典:環境省『おしえて!地球温暖化』(2019/3/29)(p3,p5)

(2)国土の浸食被害を受けるツバル

サンゴ礁でできた島「ツバル」は、平均海抜が1.5mしかなく、満潮時に海面が上昇して浸水被害を受けています。「海に沈む国」として海面上昇に深刻に向き合うツバルでは、2002年から、ニュージーランドへの移民も始まりました。

ツバルは発展途上国であり、CO2排出量が少ない国のひとつです。しかし、先進国や工業国によって大量に排出されたCO2が引き起こした地球温暖化の影響を最も受けています。

満潮時に浸水するツバルの町

出典:資源エネルギー庁パンフレット『かがやけ!みんなのエネルギー』(2019/12)(p24)

(3)食料問題

CO2の排出量が増えて地球温暖化が進むと、洪水や干ばつが頻繁に起こるようになります。また、全体的に温帯となっていくため、農作物が育ちにくい地域が拡大していきます。例えば、小麦は世界の需要に対して収穫量が減っているので、価格が上昇傾向にあります。

出典:環境省『おしえて!地球温暖化』(2019/3/29)(p3,p5)

(4)増えている森林火災

欧州委員会の共同研究センターが作成したデータによると、2001年から2018年の間に、森林以外の土地も 含めて、推定72億ha、年間平均4億ha以上の火災が発生しています。近年世界各地で発生している大規模な森林火災は、熱波や干ばつに関連していて、気候変動による火災シーズンが長期化していたり、規模が大きいために消化が困難になってきています。

2001年から2018年の間の火災は2/3以上がアフリカで発生しています。ここでの火災は、周期的に発生する生態系にとって必要な自然攪乱も含まれていますが、なかには「地球の肺」と呼ばれるアマゾンで起こっている人為的な森林火災も含まれます。

出典:林野庁『森林・林業分野の国際的取組』(2022/2/22)

5. CO2排出量を減らすために企業ができること

世界中で排出削減を目指しているCO2ですが、各企業は何から取り組めばよいのでしょうか。

世界中で排出削減を目指しているCO2ですが、各企業は何から取り組めばよいのでしょうか。

(1)省エネに取り組む

省エネとは、「省エネルギー」の略です。石油や石炭、天然ガスなど、限りあるエネルギー資源がなくなってしまうことを防ぐため、エネルギーを効率よく使うことをいいます。

省エネに取り組むことは、CO2削減への具体的なアクションにもなり、結果、電気使用量を抑えることができるなど、コストダウンにも繋がります。

資源エネルギー庁が省エネに関するパンフレットを業種ごとにまとめているので、実施してみてはいかがでしょうか。

出典:資源エネルギー庁『省エネルギー政策について  パンフレット一覧』

(2)再生可能エネルギー由来の電力を使用する

自社の建物の屋根や空いている土地に太陽光発電設備を導入して、直接その電気を使うことを検討してみてはいかがでしょうか。設備コストが以前より下がってきているため、従来の電気代よりも安くなるケースもあるようです。

また、2016年より、電気の小売業への参入が全面自由化され、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。契約する電力会社を選択するときに、再生可能エネルギー由来の電気を使用している電力会社との契約を検討してみてはいかがでしょうか。

(3)サプライチェーン全体のCO2排出量を把握・削減する

CO2削減を具体的にしていくためには、まず、事業においてどの場面で多くCO2を排出しているかを知ることが大切です。

Scope1、Scope2、Scope3といった指標を用いて、社用車が年間に排出しているCO2の量を燃費から計算してみたり、電気使用量から事業所が使用している電気を発電する時のCO2排出量などを計算してみてはいかがでしょうか。数値化して「見える化」することによって、CO2を削減するための次なるアクションが見えてくるかもしれません。

5. まとめ:CO2排出抑制を目指し、動き出そう

人間の活動におけるCO2の排出原因を解説してきました。このままの生活を続けた結果の未来と、CO2排出をゼロにした未来、方向性を決めるのは、今を生きる私たちです。

1つの地球に住む一人の人間として、世界中の人が責任を担わなければなりません。ひとりひとりができる行動は限られていますが、大勢の人が継続的に行動することで未来は変えられます。CO2排出抑制を目指し、今すぐ動き出しましょう。

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024