SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは?企業事例も紹介

現在、コロナウイルスの感染拡大や、温室効果ガスの排出による環境破壊の問題など、企業にとっても先行きが不透明で、未来予測の困難な時代になっています。そんな中、企業の持続可能性を重視する経営「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」に注目が集まっています。

ここでは、「SX」がどのようなものなのか詳しく解説していきます。今後の企業経営のポイントともなるSX経営について、実践へのポイントや、すでに取り組んでいる企業の事例について見ていきましょう。

目次

  1. 持続可能な企業への変革!SXとは?

  2. SXの観点からみる!日本企業の現状とは

  3. SX実践に向けたポイントとは?

  4. SXを実践している企業の事例

  5. 【まとめ】SXの実践が企業の未来を左右する!

1. 持続可能な企業への変革!SXとは?

まず、SXの内容と、なぜ今必要なのかという点について解説していきます。

SXとは

SXとは、サステナビリティ・トランスフォーメーションの略称です。「企業のサステナビリティ」と「社会のサスティナビリティ」の両立を踏まえた経営の在り方や、投資家との対話の在り方を指します。SXは、将来的な社会の姿を反映させつつ、企業の持続的な経営力の強化を図るための、重要な戦略指針となっています。

出典:経済産業省『サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実施化検討会中間取りまとめ』(2020.8.28)(p11)

DXとの違いは?

同じような言葉に「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」があります。こちらは「AIやIoT、クラウドなどのデジタル技術を活用し、新しいサービスやビジネスモデルの創造を進めること」を意味し、他社より早く競争優位性を確立することで、短期的な成果に結びつける取り組みとなります。

これに比べ、SXは長期の時間軸でみた持続可能性を重視している取り組みとなります。

この2つは対立するものではありません。DX推進により競争優位性や利益を確保し、そして、SXでさらに「企業のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」に投資していくことで、企業の稼ぐ力を維持しつつ持続可能な経営を目指す姿勢が必要となるでしょう。

2. SXの観点からみる!日本企業の現状とは

日本企業のSXに対する意識はどのように変化しているのでしょうか。経済産業省の報告では、「企業の資本効率と投資家との対話に対する意識の変化」について検証されているので見てみましょう。

資本効率に対する意識変化

日本企業のROE(自己資本比率)やROA(総資産利益率)は2014年から比較して上昇傾向にあります。しかし欧米企業と比べるとまだ低いことが明らかとなっています。日本企業の資本効率に対する意識改革は不十分であると言えます。

資本効率とは企業が調達した資本をどれだけ効率的に使用し、稼ぐことができているかを評価する指数で、資本効率が高い企業ほど少額の資本でより多くの利益を生み出していることになります。これは投資家にとって企業の収益性を測る指標として重要な要素となります。

日米欧上場企業のROEの推移(加重平均)日米欧上場企業のROAの推移(加重平均)

出典:経済産業省『サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実施化検討会中間取りまとめ』(2020.8.28)(p16)

投資家は、中長期的な企業価値向上の実現に必要な条件として、「企業の稼ぐ力」と「持続可能性」を挙げ、企業の研究開発、人的能力開発、ITなどの「無形資産への投資」に注目しています。米国企業の研究開発費の伸びは営業利益の伸びを上回っているのに対して日本では大きく下回っています。これは将来の利益に対しての消極的な姿勢とみられ、中長期的な収益性を重要視する投資家にとって厳しい評価につながっていると言えます。

研究開発費・営業利益の推移の日米比較 従業員1人当たり能力開発費の動向

出典:経済産業省『サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実施化検討会中間取りまとめ』(2020.8.28)(p20)

投資家との対話に対する意識変化

伊藤レポートでは企業と投資家との対話による価値協創を提言しており、これを受け経済産業省は、「環境」、「バイオメディカル産業」、「産業保安」、「製品安全」などの分野で様々なガイダンスを策定し、企業と投資家の対話を通じた中長期的な企業価値向上に向けた後押しを行っています。

このような取り組みにより、企業と投資家との対話は1企業あたり年間平均約200回に及びました。また経営陣自らによる対話も約60回となっており、有用な対話の事例も共有されています。

対話の平均実施回数(企業)

出典:経済産業省『サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実施化検討会中間取りまとめ』(2020.8.28)(p24)

一方で、企業の中には自社が行っている対話が他社と比べて本当に正しいか分からないという意見や、対話内容に企業間でバラツキがあり、「経営のトップが対話に関与していない」、「対話の内容が経営層に響いていない」といった投資家からの意見も示されています。

この状況をみると、質の高い対話が行えている企業もあるが、投資家との対話に消極的な企業、または意欲はあるが有効な手法が見つかっていない企業も存在していると言え、今後のさらなる取り組みが必要となるでしょう。

出典:経済産業省『サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実施化検討会中間取りまとめ』(2020.8.28)(p22)

3. SX実践に向けたポイントとは?

では、実際にSXに取り組むときのポイントとなるところはどのようなものでしょう。ここでは実践に向けたポイントについて解説します。

社会のサステナビリティを経営に反映させる

社会の不確実性に備え、社会のサステナビリティをバックキャストし、稼ぐ力の持続性、成長性に対する「リスク」、「オポチュニティ(機会)」を把握し、具体的な経営に反映させることが重要となります。

企業経営のレジリエンスを高める

不確実性が高まる中、企業のサステナビリティを高めていくために、将来に対してシナリオの変更を念頭におき、企業と投資家が対話やエンゲージメント(契約)を繰り返すことで企業の中長期的な価値創造のストーリーを磨き、企業経営のレジリエンスを高めていくことです。

つまり、利益を重視しつつも気候変動による資源の枯渇などの事業継続への問題に対して社会や環境への対策や、対応を経営戦略に盛り込んでいく必要があるということです。

4. SXを実践している企業の事例

では、すでにSXに取り組んでいる企業の実践事例とはどのようなものなのでしょうか。SXの取り組みについていくつかの企業の事例を見ていきましょう。

MEGURU BOX

MEGURU BOXは、サーキュラーエコノミーを推進することを目的とした使用済みプラスチックの回収事業です。K-CEPという多数の企業からなる団体によって実施されています。

具体的な取り組みとして活動拠点となる福岡県北九州市の小売店や公共施設に使用済みプラスチックの回収箱「MEGURU BOX」を設置し、回収を行っています。回収されたプラスチックはより良いリサイクル方法の検証や、環境負荷の低い商品開発に役立てられ、地域の社会支援団体に1個につき5円の寄付が行われています。

出典:MEGURUBOXプロジェクト

日立エナジー

日立製作所は2050年までにバリューチェーンに関してカーボンニュートラルの達成を目標としています。その目標達成のためにアメリカのABB社を事業融合し、日立エナジーを発足させました。

ABB社は太陽光エネルギーの開発などの技術開発を行う会社で、アメリカのマクマード基地での風力発電など世界的なカーボンニュートラルの実現に貢献している会社です。ABB社との事業融合で日立製作所は、2030年までに自社工場でのカーボンニュートラル、2050年にはバリューチェーンでのカーボンニュートラルの達成を目指しています。

出典:HITACHI ENERGY『当社の沿革』

Nature Innovation Group

Nature Innovation Groupでは「アイカサ」という傘のシェアリングサービスを展開しています。これはLINE@の公式アカウントのフォローで駅やコンビニなど約900箇所で1日70円、月額280円で傘がレンタルできるというものです。

「急な雨で傘を購入し、気が付けば家に5本も6本もある」という人も多いと思います。日本ではビニール傘の消費本数は年間8,000万本にもなるそうです。アイカサを利用することで無駄な資源の消費を削減することができ、ごみの排出削減にもつながる事業となっています。

出典:株式会社Nature Innovation Group『アイカサ』

NOMPOPOK

こちらは大豆や砂糖などのカンボジアで取れた食材を使ったお菓子を幼稚園、小学校などに届ける活動をしています。

カンボジアでは子供の栄養不良が社会問題となっており、5歳未満児、学齢期のいずれにおいても30%以上が慢性的栄養不足を示す低身長となっています。この問題の解決のため、もっと健康的なお菓子をツールとして、健康的で栄養ある食生活の大切さを伝える取り組みを行っています。

出典:NOMPOPOK『お菓子と栄養教育で栄養改善@カンボジア』

5. 【まとめ】SXの実践が企業の未来を左右する!

これからの企業は、地球環境の持続性を意識したサステナブルへの取り組みが必要になります。それが企業の中長期的な持続可能性や経営の成長、発展につながることになるのです。これからさらに注目が集まる分野への取り組みでビジネスの競争力と持続力を強化して100年先の未来を見据えておきましょう。

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